第11話 ガブエル 精霊魔法?

 オリビアとガブエルくんがどちらが強いかを競う戦いが始まったのだが、ガブエルくんがいきなり詠唱した内容に私は凄くびっくりしていた。


 通常、魔法には詠唱が必要なく魔力操作とイメージだけで発動するのだが、一部の特殊魔法には詠唱が必要なものがあり精霊魔法もそのひとつである。


 精霊魔法は天使が得意とする魔法で、天使が契約している精霊から魔力により魔法を引き出すもので、詠唱により精霊に何をして欲しいかを伝えることで魔法として発動する。


『オリビア! あの魔法は絶対に回避して!』


 本当ならアンチ魔法を解除した方が良いのだけど、解除してから数秒だけ身体が思い通りに動けない可能性があるので、安易に解除出来なかった。


『危ないの?』


『どれくらいの威力かは分からないけど、精霊のサラマンダーって言えばかなり凶暴で危険だったはずなんだよ。』


『じゃあ頑張って回避する!』


「……貸したまえ。 ファイアボール!」


 えっ?


 私はガブエルくんの発した魔法を見てびっくりして、一瞬呆然としてしまったのだが……


 あれがファイアボール?


 本来のファイアボールはもっと大きくて術者の強さによりスピードも変化するのだけど、私には超小さい火の玉に見える。


 スピードも遅いのでオリビアも筋肉低下していても簡単に回避していた。


「くっ、かわされたか!」


「今のが本気?」


「ああ! 凄いだろ、親父は5歳でファイアボールを覚えていたら天才だって言ってたぜ。」


『ゾディア、まだ様子見る?』


『いや、もう大丈夫かな。 前に教えた投げ技を軽く試せば良いよ。』


『分かった!』


 オリビアは筋肉低下しながらもまあまあの速さでガブエルくんに接近し、服を掴んで投げ飛ばした。


「うわあああ! ぐふっ……」


 あっ……


 ガブエルくんは受け身もとれずに地面に叩きつけられて気絶してしまった。


 身体能力が向上しているオリビアには打撃よりも投げ技の方が安全かと思ったけど、受け身がとれない子供には手加減しているとはいえ投げ技は危なかったみたいだ。


 ソフィアが気絶してしまったガブエルくんに駆け寄り魔法を使おうとしていた。


「光精霊よ……、我、ソフィアに……」


 ソフィアさんも回復魔法?を使うのに精霊魔法?っぽい詠唱を始めていた。


 詠唱が終わると確かに回復魔法の光がガブエルくんを包みだした。


 さっきのガブエルくんといい、ソフィアさんの使った回復魔法も詠唱は精霊魔法っぽい感じだったが、本来は詠唱を必要としない普通の魔法だった。


 ちなみに私はこの現代に転生してからいくつかの魔法を試してみたけど、全て詠唱など必要とせずに魔法が発動していた。


 この現代には無駄な詠唱というものが普及しているのか、単純にソフィアさんやガブエルくんの家族だけが詠唱を好きで使っているのかは分からないが、仮に世界的に無駄な詠唱を使ってるとしたならば何故普及したのかを知りたいと思っていた。

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