第10話 ガブエル

 両親の冒険者仲間である息子ガブエルと遊ぶ事になったのだが、ちょっとした言い合いが始まっていた……


「私が最強になるの!」


「いや、俺が最強になるんだ!」


 子供のうちに言い合ってもしょうがない内容だったが、私が昔は最強の魔導師だった事を教えてからというものオリビアは最強の冒険者を目指すことにしているみたいだ。


「なら勝負するか? だけど俺は親父から魔法を教わってるから勝てないぞ?」


 ガブエルくんは既に魔法を習得しているの……


「私も負けないよ。」


 しかし、ガブエルくんには悪いが同世代の子供がオリビアに敵うとは思えなかった。


「じゃあ勝負しよう。 母親が回復魔法を使えるから怪我位なら大丈夫だぜ!」


「うん! 良いよ!」


『ちょ、オリビア、ガブエルくんに本気をだしちゃダメだよ?』


『えっ? なんで?』


『いや……』


 そう言えばオリビアに身体能力が劇的に向上していて、同年代の男の子とは比べ物にならない位に強くなっているって事を説明していなかったな。


 まさかこんなに早く誰かと戦う展開になるとは思ってなかったから、そのうちにでも「オリビアは実は凄く強いんだよ!」って話すつもりだったのが失敗だったな……


『とりあえず、全部のスキルは使用禁止で私のアンチ魔法をかけた状態で戦って。』


『よく分からないけど、そうする。』


『頼むよ……。』


 オリビアの全力がどれくらいの強さかは私にも分からないけど、仮にガブエルくんを瞬殺してしまう事になったら取り返しがつかないからね。


 さて……


 腕と脚だけアンチ魔法の筋肉低下を発動……


 うっすらとだがオリビアの身体がデバブにより光りだす。


 このアンチ魔法は強力なのだが、相手に抵抗の意思があったりするとレジストされてしまい、思ったほど効果が出なくて使いづらい上に身体がうっすらとだが光ってしまうのでこっそりとアンチ魔法をかけるという事が出来ないので前世では使う人が皆無な魔法だった。


「えっ? オリビアちゃんは付与魔法が出来るの?」


「マジか、オリビアも魔法が使えるのか。 なら手加減出来ないな!」


「……?」


 アンチ魔法を付与魔法と勘違いしたのか?


 アンチ魔法と付与魔法は両方とも光るけど、雰囲気が違うから間違えないと思うのだけど、ガブエルのお母さんは回復魔法は使えても、そんなに魔法には詳しくないのかもしれないな。


「さあ、始めようぜ。」


「うん。 いつでも良いよ。」


「最初は攻撃させてあげようかなと思っていたけど、魔法が使えるならこっちも最初から魔法を使わせてもらうぜ!」


『オリビア、ガブエルくんの魔法が見てみたいから最初は攻撃を回避してみて。』


『分かった!』


「精霊サラマンダーよ……、我、ガブエルに力を貸し……」


『精霊サラマンダー!?』


 もしかしてガブエルくんは天使が得意とする精霊魔法を使えるのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る