第2話 私は元魔導王だった。

 オリビアをマスターとする事により、私は前世の記憶を多少ではあるが思い出していた。


 何故、魔導書に転生しているかは分からないが、前世の私は周りから『深淵の魔導を極めし王』という意味で『魔導王』と呼ばれていた。


 私としては魔導王と呼ばれるのは、魔族の王である魔王と響きが似ているので嫌だったのだが、気がついたらみんなから魔導王と呼ばれるようになっていて手遅れだった。


 そして私は魔導王と呼ばれる前は、ダンジョン攻略を専門にする冒険者をしていた。


 ダンジョンは昔から存在しているが、発生原因などは分かっていない謎だらけのもので、中からは大量のモンスターが発生してくるので、定期的にダンジョン攻略専門の冒険者がモンスターを討伐していた。


 ダンジョン攻略はかなり危険な仕事ではあるが、モンスターから取れる魔石や素材、ダンジョン内で発生するレア素材を換金所に持っていくと、レアなものほど高く買ってくれていた。


 ダンジョンは難易度により分けられていて、下層に行くほどモンスターが強くなり、素材などもレアものになっていった。


 しかし、多少の記憶を取り戻したけど、私が死んだ理由や魔導書に転生している理由は分からなかった。


 魔導書に転生したのも多分だけど、偶然ではないとおもう。




 そして私はまた本棚に並べられていた。


 しかし、本屋の時とは確実に違うのは話し相手がいる事だ。


 私の使える念波はマスターであるオリビアと会話する事が出来た。


 オリビアも最初は誰もいないのに声が聞こえてきて怖がっていたが、子供の順応性は凄い早くて数時間後には友達と話すような感じになっていた。


 ちなみに念波はオリビアの両親には通じなかった。


 本屋の店主に思いが通じたと思ったのは勘違いだったのかもしれない。


『オリビア、私と会話が出来る事は内緒にしてもらっても良いかな?』


『パパとママに?』


『うん。 私とオリビアだけの秘密にしたいんだ。』


『分かった!』


『ありがと。 その代わりに多少だけど魔導の基礎を教えてあげるよ。』


『まどう?』


『そう。 怪我を治したり、部屋を冷やしたり、温かくすることも出来る便利なものだよ。』


『すごーい!』


『だけどオリビアの歳で魔導が使えるのは普通ではないから、これも両親には秘密にしてね。』


『はーい。』


 こうして私はオリビアに魔導の英才教育をする事にした。


 今の時代にもモンスターや魔族との戦いが一般的なのかは分からないが、魔導は戦いだけでなく生活にも使える便利なものだから覚えていて損は無いだろう。


 ちなみに私がオリビアに魔導を教えようと思ったのには、もうひとつ理由があった。 


 人は生まれた時から属性が決まっており、特殊なケース以外では属性が変わることはない。


 属性とは全部で11種類あるのだけど、ごく稀に遥か昔の先祖返りにより全属性を使える者が生まれ、そんな全属性を使える人を魔導師と呼ばれていた。


 そして私も前世では魔導師であった。


 そんなわけでオリビアには同じ魔導師として、魔導を教えようと思ったのだ。




『オリビア、体内にある魔力は分かる?』


『わからない。』


『えっと、お腹の辺りに手を当ててみて、そこに魔力の元になるものがあるから、意識していると温かく感じるはずなんだけど。』


『……むずかしい。』


『気長にやってみようね。』


 そう言えば、私はいつ魔力を意識出来るようになったか覚えていていないな。


 忘れているだけなのか、無意識で分かっていたのか。


 しかし、3歳で魔力を意識するのはむずかしいかもしれないな。

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