第18話~OL(不自然)
定職に就き、給料も安定し、私は行動範囲が広がった。
その広がった行動範囲で見えたのは「恋人」。出会う人、皆パートナーがいた。皆が皆揃って、当たり前のように。私にとってその光景は不自然でしかなかった。でも不自然なのは私だった。私だけ、恋人がいない。
人と会いワイワイ騒いだ後、私はひとりで帰る。誰もいないアパートへ。帰る途中「このまま楽しいまま死にたい」と、いつも思っていた。横断歩道に立ち止まった時は「誰か轢いてくれないかな」と、信号が青になっても立ち続けたこともあった。
私は感じていた孤独。しかしそれもコントロールしていた。「私は寂しくなんかない」と。また無意識だった。また気持ちに蓋をした。現実を見て見ぬふり。「何も感じていない」と、私は思い込んだ。そのコントロールに気付いたのは、その何年も後だった。
この頃、初めて腕を切った。切るといっても、血が出てるか出てないか、そんな細い短い線。
何かをしたい、何かをどうにかしたい。でも発散もせず、発散方法も探せず生きてきた。物に当たるのは嫌だ、人になんて以ての外。だったら自分に当たればいい。そうやって私は、腕を切ることを覚えた。
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