30.新しい相棒と森への道中
「ありがとな坊や。 実はこいつ、俺の作ってきた中でも自慢の逸品なんだよ!」
「ほんとですか!! なんとなく良い気がして選んだんですが、そんな良いものだとは!!」
「まあ、こんな平凡な見た目だから、人気が無くて隅にいたってわけだ。」
「そうだったんですねぇ。」
「だが、それを坊やが見つけ出してくれた。 だから、ありがとう! また何か欲しかったら寄ってくれよ! じゃあ、頑張ってな!」
「はいっ! 頑張ります!」
そう言って僕たちは店を後にする。
僕の選んだ剣は、一見するとほんとになんて事はない、何の装飾もない、ただの剣そのものだ。
だが、そこにあった剣の中で、明らかに刃の研ぎ澄まされ方が違って見えたのだ。
この剣を見た後も、他にないかと沢山の剣を見て回ったが、やはり一番印象に残り続けていたのは、今腰に携えているこの剣だったのだ。
だから、これはもう自分の直感を信じて、運命だと思ってこの剣にすることに決めたのだった。
そして、僕たちは今、森に向かって村の中を歩いていた。
すると、門が見えてきたところで声が掛かる。
「お? ハシュードじゃねぇか! それに、弟くんにハルトまで。 出発にはまだ早いだろう? ってことは揃ってどこかへお出掛けかい?」
「ん? ロードか。 そうだな、まだ出発はしないぞ。 ちょっと冒険者諸君の狩りの荷物持ちってとこかな。」
「おお、そうだったのか。 まだ出ていかない様だったからよかったよ。 次いつ来るか分からないしなぁ。 というより、今回は仕事で店の方に顔出せなかったし。」
「そうだよなぁ、今回来てなかったもんなぁ。 まあ、次は来てくれよ。」
「あったり前だよ。 それより、森に行くんだろ? 気を付けろよ。 ちょっと最近は、ここに来る冒険者が少なかったから、狩られていない事でモンスターが多いかもしれんから。」
「そうなのか? まあ、いざとなったら逃げて来るさ。 ありがとう、気を付けるよ。」
「ああ。 カイトもハルトも気を付けてな!」
「うん!」
「はい! ありがとうございます!」
こうして、試験の時以来にロードさんと話した僕たちは、門を抜け、再び森に向かって歩き出した。
モンスターが多いみたいだし心配だけど、生きて帰るために、精一杯頑張ろう!
しばらく歩くと、見慣れた森が現れた。
改めてみると、生い茂る木々のせいで結構薄暗くて、かなり不気味な雰囲気が醸し出されている。
ギルドで聞いた話によりと、今回受けた依頼のハクドリは、森に入って直ぐの辺りにも出没する事が少なくないようだ。
ただ、ハクドリと違い、フクロテイガーが少し森に入った所ぐらいからでないと、普通は出くわす事はないようだ。
また、普通の冒険者ならば、狩ったモンスターが荷物になる関係で、狩れるモンスターから狩っていき、数日に分けて狩るのか、奥地のモンスターを先に狩ってから近場にいるモンスターを帰り掛けに狩る形になるそうなんだ。
だけど、僕らにはアイテムボックス持ちの商人 ハシュードさんがいるので、好きに狩っていいんだ!
ゲームだとそんなこと考えないけれど、これが現実になると結構大変なんだなぁ。
だから、ハシュードさんに出会う事が出来て、ホントに良かったよ。
そんな若干ハシュードさんを、荷物持ちの便利屋さんかのような事をぼやきながら、僕たちは森の中に足を踏み入れたのだった。
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