27.露店の手伝い

 さあ、ようやく商品の陳列が完了したので、開店する事にする。


 時間は、太陽の位置からしてちょうどお昼ぐらいだろう。


 今回、僕にできる事は、万引きがいれば捕まえる事と、営業スマイルをしながらお客さんを呼び込むぐらいだ。


 なんせこの村は、貨幣で支払うならまだしも、貨幣支払いじゃないお客が多い。


 つまり物々交換。


 なので、相手が出してくる物の価値が分からないので、お会計を手伝う事は出来ないのだ。


 だから、お客を呼び込みながら勉強勉強だ。



 テントの外を見ると、既に広場には村人が集まってきていた。


 正直、呼び込みは必要ないかもしれない。


 「よし! じゃあ、準備も出来たことだし、時間もちょうどいい! 開店としようか!」


 そうして、ハシュードさんが大声で開店を知らせる。


 「皆さんお待たせしました!! 只今より開店いたします! いらっしゃいませ~!! 自慢の品が並んでいますので、是非手に取ってご確認ください!!」


 僕たちもお客を呼び込む。


 「いらっしゃいませ~!! どうぞお立ち寄りください!!」


 「いらっしゃいませ~!!」


 威勢のいい声につられ、村人たちが徐々にお店に集まってくる。


 「いらっしゃい、値段は書いてありますので参考になさってください。 貨幣をお持ちでなければ、金額相当の物と交換でも構いませんよ。」


 「ああ、助かるよ。 まだまだ貨幣には慣れんでね。 そんなだからか、あまり商人さんが来ることが無くてねぇ。 毎回楽しみにさせてもらっとる。 来てくれてありがとなぁ。」


 「いえいえ。 ごゆっくりご覧になっていってください。」


 「ああ、そうさせてもらうよ。」



 どうやら、殆どの商人はこの村で宿泊しても、こういう店を出すことはしないのだとか。


 お金が使われていなければ、まあ普通はそうなるだろう。


 でも、ハシュードさん曰く、みんな分かっていないという。



 どのくらい先になるか分からないけれど、いつかはこの村でも貨幣が普通に使われるような日が来る。


 そんな時には他の商人も店を構えだすことだろう。


 でもやっぱり、見ず知らずの商人と、こうやって昔から毎回お店を出してくれる商人が居たんじゃ、毎回出してくれていた方を選びたくなるだろう。


 そういう事さ!


 それに、ここの村で採れる野菜、何故だか知らないけど美味しいんだよね!



 つまり、俗にいう先行投資なるものだろう。


 その話を思い出していると、早速商品が売れていったようだ。


 「これとこれね! 全部で3,000Yですね!」


 「このぐらいで足りるだろうか?」


 「あ、ホクホクイモですね。 若干少ないかもしれませんが、いつもお買い上げ頂いているのでサービスです! 大丈夫ですよ!」


 「ちょっと少なかったのか、すまんね。 今度はもう少し持ってくる様にするよ。」


 「ありがとうございました~!!」


 ホクホクイモといえば、昨晩食べたシチューのあれだ。


 この村で採れるんだなーあれ、メッチャ美味かったんだよなー!!


 実際、この村の野菜は他のところのものよりも美味しいのだそうだから、他の街に持って行けば売れること間違いなしだ!


 それに、どれだけあっても僕たちにはハシュードさんが付いている!


 アイテムボックスの中に入れていれば、時間経過の概念が無いので腐ることも無いし、持ち運びも問題ないのだ!



 結局夕方までに、胡椒や砂糖なんかの高いものを除けば、店に並べたものは大体売れた。


 あ、あと、冒険者用の武具も幾つかは売れていた。


 ちなみに、今日の収入は大体が野菜中心。


 中にはお金で支払う者もいたが、9割近くは物々交換だった。


 そんなこんなで野菜の山、ホントに山だ。


 そんな山が出来ていたのだが・・・、ハシュードさんのアイテムボックスで一瞬で片付け完了!!


 最初村を見た時はどうかと思っていたが、他の商人が中々来ない事もあり、大盛況のうちに閉店となった。



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