葉月 涼

誰かが私のそばで泣いている

周りをみても誰もいない

だけど誰かが泣いている

ふと部屋にある姿見に視線を移すと

私が涙を流していた


どうして私は泣いているんだろう

苦しくないのに、悲しくないはずなのに

どうしてだろう

涙は止まることなくぽろぽろと零れ落ちる


ソファーに座ってタオルに顔を填めて泣いていると

「彩歌、どうかしたん?」

と兄貴から聞かれた

私は涙を流しながら首を横に振った

だけど兄はその様子をみて私に

「その表情しながら泣いてる様やと大丈夫じゃ無さそうやな」

と言い私の横に座り

私が不思議に思っていると

「だって、彩歌 泣いてんのに訳分からんって感じの表情しながら泣いとるもんな」

と私の背を優しく撫でながら言った

そうしたら何故か涙はさっきまでよりも多く流れ落ちた

兄貴はそれで何かに気づいた様で

どこか悲しげに私を自分の方に寄せ

「彩歌、寂しいんやったらいつでも言いな、俺も時間あったら気が済むまで付き合ったるから」

と優しく私に言い聞かせる様に言った

私は頷き、兄に寄りかかって泣いた

兄は微笑みながら私の背を優しく撫でていた


ふと、気が付くと私も兄も寝ていた

きっと泣き疲れた私が寝てそれを見て安心した兄貴も寝たんだろうなと思った

「んっ…おはよ、彩歌 」

と私が起きたのに気づき起きた兄が言った

「おはよ、お兄ちゃん」

と言い返したら兄が

「ちょっとは気ぃ晴れたみたいやね」

と言ってきた

確かに涙は止まっていた


私たち2人が寝ている間に夜になっていた様で

外をみると満月が前までよりも美しく輝いていた

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葉月 涼 @kiminokoe

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