認知バイアスと傍観者(無職)

zero

序章

第1話 認知バイアスゲーム

「暑い」


一体ここはどこなのか?私は誰なのか?多分時間は夕方から夜になる頃なのだろう。あたりには誰もいなかった。住宅街のはずなのに誰もいないのは気持ちが悪いものである。日本だろうが、東京ではないのだろう。


「暑い」


二言目には私は愚痴を言う。私は住宅街を歩きながら自分の姿を確認したかった。


認知バイアスゲーム。私の記憶にあるのは認知バイアスゲームの内容とルール、そして一般的な教養の知識だけだった。ゲームを始めてからまだ10分弱、自分の体を少し触ってみた。触った感じ胸も出ていないし、股間にあるものはある。私、改め俺は男の分類に入るのだろう。


そして、あとは年齢である。肌の感触から10代から20代の感じはあるのだが。こればかりは鏡を見ないとわからない。



不思議なのは住宅街なのにガラスが全て曇っている点である。これでは自分の年齢や身長や体重も全くわからない。それにしてもほんとに暑い。



どーーーーん。



一瞬の出来事だった。いきなり住宅街の家の一つが爆発したのである。



「た、た、助けて」丸焦げに近いぐらいの女性が俺の方に救いの手を求めた。


俺は彼女の方に行こうとしたが、その時点で彼女は倒れ、そして死んでいった。



誰が殺したのかもわからない。そして、彼女が知り合いだったのか?友人だったのか?それとも敵だったのか?全くわからない。だが、これでプレイヤーは一人死んだことになる。


残り自分も含めて5名。


感情に揺らぎはない。もし仮にこれが俺の友人か、それとも家族だったとしても、まずはゲームを最優先していかないと。

「とりあえず寝る場所とご飯を探さないと」

俺はもしもまた爆発があると思い、家の中には入らなかった。とにかく住宅街を離れることにした。


住宅街の外に行くと、でかいデパート、そして駅があった。俺はお腹が減っていたのでデパートに行こうとしたが、デパートの中にも爆弾があるのかもしれない、と考えてしまった。どうやら俺はかなりの慎重派らしい。かもしれない、かもしれないばかり考えてしまう。


しかし、そんなことを考えいる間に完全に夜になりあたりは真っ暗になった。


そして、3時間後、俺は空腹と疲れが身体的にも精神的にもきた。俺は色々考えたが、デパートの中に入った。


デパートの中は真っ暗だったが、電気をつけようと試してみたら電気がついた。

俺はとりあえずデパートの食料品売り場にいった。売り場には果物や野菜、惣菜など一通りあった。俺は食べれそうなものを適当に選んでイートインスペースで食べることにした。


「いただきます」持ってきたものはバナナとシャケおにぎり、ツナマヨおにぎり、刺身(サーモン)、卵サラダ。

味は美味しかった。記憶がないのは変なもので自分が何が一番好きだったのか覚えていないのはどこか悲しいが、これはこれで全く新しいものを食べている感じがして面白かった。


「ご馳走様でした」俺はご飯を食べて、落ち着いてきたのか、爆発のことなど忘れて、眠たくなってきた。俺は3階にあるホームセンターなどがあるところでベットを見つけ、寝ようと思った。


ベットに寝転がってウトウトしていたのだろうか、それとも寝ていたのかもしれない。



「大丈夫ですか?」私の目の前にいつの間にか二人の少女がいた。


「うわ!」少女の顔は全くといっていいほど似ていた。


「お目覚めですか?」片方の少女が言った。



「お目覚めも何も!あんたたちは?」


「ゲームの参加者です」


「ゲームの参加者です」二人がそれぞれ答えた。


「ゲームの参加者はわかるよ。だけど、なんで一緒に?」


「私たち全くと言っていいほど同じ顔じゃないですか。だからきっと家族と信じていて」


「そう、じゃあいいけど、なんで俺に何もしないの?」


「私たち、二人で最初あなたをみたときに思っていたのですが、あなたも私たちの家族なのかなと思って」そう言って、片方の少女は俺に手鏡を見せてくれた。


「これが、俺?」ゲームを始めてから何時間7時間ぶりにみた俺の顔は新鮮だった。



黒い瞳に黒い髪、身長は大体176くらいだろうか。痩せ型で髪の長さは短髪と長髪の間だろうか。顔はまあ、良い方と思った方が良いのかもしれない。服はなぜかスーツを着ていた。


だが、一番特徴的なのは片方の瞳が黒ではなく金色だったことである。


そして、少女二人も同じように片方の瞳が金色だった。


「・・・・・・確かに片方の瞳だけが金色なんて滅多にないからな」


「ですよね、だから、私たち二人はあなたを家族と考えたのです」


「とはいえ、家族は一人、どっちかが家族ではないはず」


「そうですね、ですが、現状あなたが敵ではないと私たちは判断しました」



色々考えたいところだった。


「あんたらはいつからゲームをしているんだ?」


そう、この認知バイアスゲームはプレイヤー全員が同時スタートではなく時間差スタートなのである。


「三日前です」


「一週間前です」少女たちは答えた。


「そうか、スタート開始が一番早いのが一週間」


「そうです、私が最初にこのゲームに参加しました」片方の少女が答えた。


「・・・・・・・・なるほど」

「とりあえず、どちらも似ていることだし、お互い偽名でも言いから名前決めない?」


「そうですね」片方の少女が答えた。


「私はKと言います」片方の少女は答えた。


「私はQと言います」もう片方の少女も答えた。

二人とも中学生から高校生の間だろうか。年齢的には自分よりも5歳は離れているほど幼く、小柄だった。

「お互い、ローマ字一文字なんだ」


「ゲームですし、それに何か名前に必要な要素ありますか?」Kが答えた。


「いや、いいよ。じゃあ俺はFにしとくよ」


「Fさんですね、じゃあFさん、今からどうされますか?」Kは答えた。


どちらかといえばよりもずっとずっとKが話している。Qはずっと無口だった。


「特に、今日はもう寝ようかなと思っているかな」


「ゲーム中にですか?無防備ですね」



「そうだね、慎重派なのにね。なのに、なんだか、さっきから眠くて眠くて」



そう言っているうちに俺はいつの間にか目を閉じて、寝てしまっていた。




陽の光がデパートから差し初め、俺は目をショボショボしながらゆっくりと起きた。


「ふわあーーー」と大きな欠伸をして、ゆっくりとベットから起きた。俺はKとQを探したが、近くには見当たらなかった。


仕方なしにトイレで顔を洗い、また、食料品売り場で朝食をとることにした。


時間は昼の12時だった。


「・・・・寝すぎだろ」と思っていた。俺はまたバナナ、おにぎり、刺身(サーモン)を食べた後、二人を本格的に探そうと試みた。しかし、デパートの中を全て見ても二人は見あたらなかった。


俺はKとQはデパートの外に行ったのかもしれないと思い、デパートの外に行こうとした。しかし、デパートの外はいつの間にか深い深い霧に覆われていた。



「全然、見えない」俺はゲーム中なのにまた眠くなってきたのである。まだ起きてから5時間しか経っていないのに眠くて眠くて仕方なかった。


仕方なしに俺はまた昨日と同じベットで夕方の5時に寝ることにした。



次の日、俺はまた昼の12時に起きた。昨日とさほど変化はなかった。



違っていたのはKとQが二人とも首と腹わたを切られて死んでいたくらいだった。



俺はそのままトイレで昨日食べたものを全て吐き出した。



吐くものを全て吐いた俺はあることに気づいた。俺の服がスーツではなく、ジーンズとポロシャツに変わっていたのである。


「なんで?」俺は自分で着替えた覚えはないはずである。誰かが俺を着替えさせたのか?なんで?どうして?



俺は頭がおかしくなりそうだった。



俺はデパートの屋上で呼吸を整えに行った。屋上には何もなく、どことなく昔の学校みたいなフェンスだけが残っている屋上だった。


俺はデパートにあったタバコに火をつけて、ゆっくりゆっくりとタバコを吸った。タバコの味は美味しかった。


俺は喫煙者だったのかもしれない。













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