第19話 元会長は一体……。

 

 翌日俺は登校するといつもの通り俺の教室の前でうろつく元会長を発見する。

 元会長は基本朝と昼休みほぼ毎日俺の教室の前をうろうろしている。


 いつもは挨拶だけして教室に入るが、今日は元会長に話したい事があった俺は自ら元会長に話しかけた。


「会長おはようございます」

 一応年は同じだけど、学年は一つ上なので俺は基本上級生には敬語で話す。


「あ、あら奇遇ねえ」


「いや、毎日会ってますけど」


「……そ、そう毎日偶然ですねえ……あ、あと私はもう会長ではありませんから」

 俺の中では彼女は会長のイメージしか無い……なのでついつい会長と言ってしまう。


「まあ、そうですね……あの……じゃあ、神宮寺……さん……この間俺に言ってくれた事……覚えてますか?」


「この間? なんて言ったかしら? おはよう?」


「いや、それはただの挨拶……」


「んーーじゃあ何かしら」

 唇に指を当てて上を見て考える振りをしている元会長……とぼけているのか? この人は本当によくわかえらない。


 神宮寺元会長……会長時代はいつも堂々としていて皆の意見にハキハキと応えている印象なんだけど、俺の前では常にオドオドしていて、何か喋れば返事が曖昧……嫌われているかと思えば毎日会いに来る。

 謎の存在……一時期は俺に気があるなんて思った事もあったが、特にそんなアプローチ等は無く、例えばバレンタインにチョコレートを貰ったりなんてした事も無い……とにかく毎日毎日俺に顔を見せにくる……ただ、それだけだった。


「何か困った事があったら言ってくれ……と」


「──な、何かあるのですか!!」

 曖昧な返事から一転神宮寺元会長は目を輝かせながらそう言った。


「あ、まあ……一応は……はい……」


「な、何でも言ってください!」


「あ、はい……えっと……じゃあ放課後に」

 さすがにここで相談は出来ない、ただでさえ元会長は目立つ。


「放課後ですね! では生徒会室でお待ちしてます!!」


「え? 生徒会室って……現生徒会のお邪魔じゃ」


「大丈夫です! 現生徒会は私の傀儡……いえ、えっと本日はお休みです!」


 傀儡? 今傀儡って言ったよね!? と、とりあえず聞かなかった事にしておく……。


「あ、じゃあ……放課後に」


「はい!! お待ちしております!!」

 神宮寺さんはそう言うとスキップでもしそうなくらいの足取りで3年の教室に戻って行く……ちなみに3年の教室はこことは別棟の校舎で偶然ここを通る事はあり得ない……。

 一体なぜ彼女は俺につきまとい、そして俺の事を気にするのか?


 俺には全く心当たりがなかった。



 ◈ ◈ ◈ ◈



 そして放課後、俺は神宮寺さんに言われた通り生徒会室に来た。

 俺には全く縁の無い生徒会……現会長が誰だかも記憶に無い。


 俺は一呼吸間を開けてから生徒会室と書かれた扉をノックした。


『どうぞ』


 中から神宮寺さんの声が聞こえた……やっぱり生徒会は彼女の……。


 そう思いながら扉を開けたが……神宮寺さんの姿が見えない……部屋にはいくつかの机が並んでおり、奥に恐らく会長の机だろうか? 他よりも少し豪華な造りのつくがあったがどの席にも彼女は座っていなかった……声はすれども姿は見えず……部屋の隅にでも居るのかと俺は生徒会室に一歩踏み出そうとすると何かコツンと足元に物が当たった。


 俺は何かと足元を見ると……そこには……



「うわああああああああ!」


 いた……元会長が……足元にいた……。


 俺は慌てて3歩下がって再び下を見ると……。


 そこには神宮寺元会長が……入口の床に身体を丸める様に……長い髪床につくのを嫌がる様子も無く……俺に向かって土下座をしていた。


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