第10話 妹の友達
いない……どこにもいない……いくら探しても俺の天使は見つからなかった。
繁華街も歩いた、駅でボーッと立ったりもした。
近所の高校にも行った……。
でも……詩ちゃんとは会えなかった。
あれだけ目立つのに……ちょっとでも見かければすぐにわかるのに……。
たまたまあそこに居たんだろうか? 最寄り駅は別の所かも知れない……。
まさか……避けられているのか? それほどまでに嫌われたのか?
あああ、諦めきれない……もう一度会いたい……詩ちゃんに……会いたい、逢いたいよおお……。
俺は部屋で落ち込んでいた……すると……。
「お兄ちゃん! 最近何してるのよ!」
部屋の扉がいきなり開き妹が部屋に乱入してきた……。
いつもならここで妹をベットに放り投げてノックをしないで入ったと、お仕置きタイムでこちょこちょするんだけど……今はそんな気にならない……。
「…………うーーーーわ、ベタに落ち込んでる、何があったの一体」
「──べ、べつに……」
「インキャの兄がキモい件」
「なんだだそりゃ、売れなさそうなラノベのタイトルだな……」
「あのさあ……部屋の隅っこで体育座りとか同情買って欲しいのか?ってくらいベタな落ち込み方してるし……一体何があったのか、お姉さまに話してごらん」
「誰がお姉さまだ……言いたくない……」
「──全く……この兄は」
そう言うと菜は座っている俺の後ろに回って膝をつく、そしてそのまま俺の首に自分の腕を回すとグリグリっと締め付けて来た。
「な、何を……ぐ、ぐええええ」
妹は俺にチョークスリーパーをかけて来る……日本名で言うと裸絞め……なんて卑猥な名前の技だ。
「ホレお兄ちゃん、プロレス技でどさくさに紛れて妹のおっぱいの感触を味わえ」
「じ、自分で言うな……それと妹の胸の感触なんていらねえ、そもそもおっぱいなんてねえだろがあああ、後頭部が痛い、く、苦しい……だけだああ」
「し、失礼な!! あるだろ、ホレ、柔らかいだろ!!最近ブラ買ったし」
「AAカップであるとか言うな、気持ち悪い、ほ、ほどけえ」
俺が空手をやってた為か、妹は格闘技に興味を持った。
空手には寝技で対抗すると言ってよくプロレスや柔道を見ては小さい頃から、俺に覚えた技をかけて来ていた。
小さな子供が掛けてくる技なんて全く効かないが、あまりに可愛いので効いてる振りをしていたら妹は調子に乗ってどんどん掛けてきた。
やはり練習すれば誰でも上手くなる……しかも最近身体も大きくなって、今では油断すると落とされかねない位上手くなっていた。
「な、何で知ってる!! どっちがキモい、この変態いいいいいいい」
「ぐ、ぐはあ、お、落ちる……」
年頃なので護身術にちょうどいいと、掛け方を教えていたのが裏目に出た。
俺は見事に決まっている妹の腕をタップしてギブアップを宣言し、ようやく妹の腕が緩む……あ、危なかった……。
「お兄ちゃんさーー妹のブラのサイズ知ってるとかどんだけ変態なの?」
「う、うるせえ、たまたま洗濯物が見えただけだ」
「たまたまサイズが見えるわけ無いでしょ!?」
「ああ、もう良いから部屋に帰れ」
「言われなくても帰ります~~」
妹は立ち上がると扉に向かった。
そして扉の前で振り返ると俺に向かって言った
「あ、そうだお兄ちゃん明日友達連れて来るから」
「あ? 別に連れて来れば良いだろ?」
いつも勝手に連れて来ては恋愛相談とか言って部屋でペチャクチャ喋ってるじゃねえか、何でわざわざ断るんだ?
「でもさあ、今度連れて来る娘はねえ、スッゴク美人だからお兄ちゃん好きになっちゃわないか心配なんだよねえ~~」
「……は? 何言ってる、俺が小学生に興味持つかあ!」
俺はロリじゃねえ!
「それなら良いけどねえ、ちなみにその娘好きな人がいるから、お兄ちゃんなんて相手にされないよ~~」
「聞いてねえよ……そもそも俺、明日遅いから」
「また?……最近毎日遅く帰って来るし……まあちょうど良いけど……じゃあ、おやすみ~~」
妹はそう言ってようやく部屋を出ていった……。
「……また気を使う……」
俺が落ち込んでたり元気がなかったりするとああやって構いに来る……。
それが少しウザくもあり、可愛くもあり……。
「少し……大きくなったな……」
後頭部に残る妹の胸の感触が前と変わって来た……日々成長しているなと実感させられた。
う、うるせえ、誰が変態兄だ~~!
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