第7話 転校生は天使だった
私は生まれて初めて衝撃を受けていた。
この間誕生日が過ぎたので私は12歳になった。
その12年間でこんな衝撃を受けた事はなかった。
だって、目の前に天使がいるのだから。
夏休みが終わり学校に行くと、先生が銀色の髪をした娘を連れて教室に入って来た。
俯きながら先生に隠れる様に教室に入って来た女の子……顔は髪に隠れて見えないけど、身長が高く手足が長く、まるで外国のお人形さんの様に思えた。
先生がその娘に自己紹介してと促すと、その天使はゆっくりと顔を上げる。
その瞬間私の心に衝撃が走った……綺麗……可愛い……。
私は思っていた。自分は人よりも多少は可愛いと……。だから私より可愛い娘を見ると少し嫌な気持ちになる……嫉妬してしまう。
でも、彼女を見て……私はそんな事も思わない、思えない程の圧倒的な可愛さだった。
「朝比奈 詩です……よろしく……です」
か細い声でそう言うとそのまま黙ってしまった。先生が空いている席を指差すと彼女は顔を伏せたまま教卓の脇からそそくさと歩き、私の横を通り過ぎる……うわーー、うわーー、可愛いいい!! 綺麗!! いい匂いもするううう!! 私はそのまま振り返り彼女を目で追い続けた。
彼女は一番後ろの空いている席に座ると怯える様にまた顔を伏せてしまった。
なんであんなに怯えてるんだろう……? あんなに可愛いのに、お人形さんみたいなのに……私はそれが不思議だった。
私はなんとか彼女に話しかけようとタイミングを伺っていたが、塞ぎ混んでいる彼女に話しかけられずに1週間が過ぎてしまった。
私は毎日彼女に注目していた。
彼女は学校に来ると誰とも喋らずに席に着く……誰かが話しかけても首を縦に降るか横に降るだけで、誰とも話そうとしなかった。
そして授業が終わると一目散に教室を出ていく……何か焦っる様に、泣きそうな顔をしながら……。
私は彼女が何かしら問題を抱えていると思った。
「……助けなくちゃ……」
そう思った。だから彼女の後を追った。これは興味本位やストーカー行為では無い……人助けだ。
彼女はランドセルを背負いながら駅に向かって歩いていた。キョロキョロしながら、誰かを探しているように……それにしても……。
「ランドセル似合ってないなあ……」
どうみてもコスプレ……ランドセルが小さく見える。
青のワンピース姿でランドセルを背負う天使……何か見てはいけない物を、お兄ちゃんのエッチな本を見ている様で私はドキドキしていた。
彼女は電車に乗ると二駅先で降りた、お兄ちゃんが夏休みに夏期講座で通っていた駅だ。
彼女はそのまま歩いて行くと学校の校門の前で立ち止まる。
そして電柱の影に隠れた……いや、それかえって目立つから。
そんなベタな張り込みをする彼女の目線の先を追うと……。
「中学校?」
彼女は制服姿の生徒が下校しているのをじっと見つめていた。
「人探しか……誰を探しているんだろう?」
そのまま張り込みをする彼女をずっと張り込む私……。
彼女は下校する生徒が少なくなるまでじっと、ただじっと見つめていた。
私は見ていて、ずっと見ていて思った。
彼女を助けたいって……そう思った瞬間身体が勝手に動いてしまった。
「あ、朝比奈さん!」
「ひ!」
こっそり見ていた彼女は突然後ろから話し掛けられ恐怖に怯えた表情で私を見る……。
「あ、ごめん……えっと偶然見かけたから……、な、何してるの?」
「あ、あ、ひ……」
「あ、そうか……私同じクラスの
「さ、さいちゃん……」
「うん、そう……よろしくね……で、ここで何してるの? 誰か待ってるの?」
私は構わずにそう言って彼女に近づいた……身体が勝手に動いちゃうんだからしょうがない。
「……人を……探してる……です」
「そうなんだ、この学校の人?」
「いえ……中二って言ってたから」
「この学校かわからないの?」
「……です」
「そっか……名前とかは?」
「…………たっくんです」
「たっくん? 名字とかもわからないの」
「突然名前を言われたから……えっとえっと……みずせ? たくま?」
みずせたくま……なんかどこかで聞いた様な……。
「そか、中学2年のみずせたくま君を探してるのね? どんな関係なの」
私はここぞとばかりにずけずけと彼女に聞きまくった。
「…………運命の……人なのです」
「運命の人?」
「一目惚れの人……です」
うーーーわーーーー、何か凄く……面白い事になった。
よし! 決めた!! 彼女の恋……応援するぞ!!
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