第2話 次に会える日は……
もっと彼女と話したい……そう思った俺は彼女を公園に誘う。
喫茶店だと断られるかも、夕方の公園なら人目もあるし……等と考えながら俺は断られる恐怖に怯えながら彼女を誘ったが、意外にもあっさりと承諾してくれた。
とりあえず、すぐ目の前にあった広い公園へ行き、芝生の脇に置いてあったベンチに二人並んで座った。
やばい……誰も居ない……夕方とはいえまだ辺りは明るいのに、誰も遊んでいない……なんだろう? 気温のせいだろうか? こんな人気の無い所に誘って……嫌がられないだろうか?
そう思っていると突然腕にひやりとした感触が!
見ると、彼女の腕が俺にくっつき汗で冷やされた肌が俺の腕に当たっていた。
ぴったりと貼り付く様に俺の隣に座る彼女……え、ち、近い……なんだ? うーーわ、ドキドキする……聞こえるんじゃないだろうかって位に心臓が早鐘の様に打ち始める。
こんな時何を話していいのだろうか? いや……別に女の子と話す事に苦手意識は無い、幼馴染もいるし、妹もいるし……。
でも、それが運命の人となると別だ、嫌われたく無い……彼女に好かれたい。
そんな考えではろくに会話もできない……。
そうだ! さっき言っていた……彼女も俺を見て運命だと……俺はとりあえずそれはどういう事なのか確認するかの様に聞いてみる事にした。
「……あ、あの……運命って?」
「ああ、そうなのです……グランマが言ってたのです! 必ず運命の人が現れるからそれを逃すんじゃないよ」って……。
「うちの婆ちゃんと同じだ」
「そうなのですか?」
「うん……そんなのずっと中二病っぽくて嘘だと思ってたけど……」
「中二なのですか……」
「うん……でも詩さんもそう思ってくれたなんて……」
「……詩でいいのです。私はもうたっくんと呼んでいるのです、ね、たっくん」
そう言ってニッコリと笑う詩……ちゃん……可愛い、綺麗……でもなんとなく喋り方が子供っぽいかも……でも……それがまたいい。
「……て、転校してきたんだ」
俺は何処から転校してきて何処の学校に通うのか聞こうとした。
しかし彼女は俺がそう言うとさっきまでの笑顔から一転、泣きそうな顔に変わった。
「私……新学期ちょっと怖いのです……」
「え? ……なんで」
「虐められるのが……です」
「虐め? された事あるの?」
「はい……あ、でも直接何かされた事は無いのです。でも私こんな髪だし背も高いし……陰でデカいとか白髪とか色々言われてたみたいです」
そう言って彼女は悲しそうに自らの髪を触った。銀色の髪が太陽に照らされてキラキラと光る。
「そんな……そんなに……綺麗なのに……」
「うふふ、ありがとうです……グランマと同じ髪の色なのです……だから私は好きなのです……」
「……お、俺も……その髪……好き……」
「……あ、ありがとう……です」
詩ちゃんはそう言って真っ赤な顔で俯いた……。
「あ、あのさ……ラインかメール、出来れば番号……交換してくれませんか?」
「あ……ごめんなさいなのです……私スマホとか持ってないのです」
「そ、そうなんだ……」
今どき……高校生でスマホを…………あ、ひょとして……まだ俺の事を信用していないのか? まあ、そうだよね今日あっばかりの男に教えるなんて……でもやっぱりそうだ……彼女は清廉なのだ、純粋なのだ……思ってた通りの人なんだ。
「あの……私そろそろ帰らないと……あの……たっくん……また会ってお話してくれますか?」
「え! も、勿論だよ!!」
「良かったです」
彼女はそう言うと満面の笑みで笑った。大きな目が無くなる位に細めて……それはそれは可愛く、俺は思わず抱き締めてしまいたくなった。
勿論自重した、付き合ってもいないのにそんな事出来ない……。
「えっと……でも……」
とはいえ、スマホが無いとなると、どうやって……。
「あの……私……明日から1週間グランマの所に行くのです……だから1週間後にまたここで会ってくれますか?」
「あ、うん! 勿論、じゃ、じゃあ来週ここで、同じ時間に……俺待ってるから」
「はいなのです!」
そう言って彼女は立ち上がりると俺に向かって笑顔で手を振った。その細い腕が取れそうになるくらいブンブンと大きく手を振った。歩きながら時々振り返り手を振る。公園から出て姿が見えなくなるまで、何度も何度も俺を見て手を振る詩ちゃん。
可愛い、凄く可愛いけど……なんだか死亡フラグみたいな状況に見える。
俺はそんな思いを振り払うかの様に、来週必ず会えると信じてずっと手を振り返し続けた。詩ちゃんが見えなくなるまで……ずっとずっと……。
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