ドスケベ狼と落ちこぼれ魔術見習い
桐生連
第1話 迷惑千万!エローマ登場!
人気の無い体育館の裏で必死に魔法の練習をしている相模孝(さがみこう)。
この世界は魔法が全てで当たり前。
そんな世界にも例外は必ずある、それが彼…
相模孝だ。
彼は生まれつき魔法の才能が一欠片もないと医者からも太鼓判を押された正真正銘の落ちこぼれである。
その為学校では彼を落ちこぼれ以下と称して「落ちこぼれ以下(ワーストバウト)」と異名をつけられている。
「や、やった…」
孝は汗を流しながらやっとの思いで手のひらから小さな火の玉を創り出した。
しかしこんなの子供なら誰でも出来る初歩だ。15年生きて練習してやっと出来た。
「あ…あれ…」
孝は目の前が歪みフラつき座り込んだ。
魔力を無駄に使いすぎて疲れてしまった。
「くそ…ロクに魔法使えないのに…無駄に魔力だけ食うからな…いつになったらちゃんと使える様になるのかな…魔法…」
孝は中3だ。
まもなく高校受験も始まる。でもこんな能無しはロクな学校に入れない。
ていうか何処も入れない…。孝はもう正直どうでも良かったので気にはしてない。
魔法の練習も他ならぬ自分の為にやってるんだから。
たとえ一生能無しでも何か出来るって証明がしたい。
孝は息が落ち着くと荷物をまとめ学ランを着ると体育館裏を後にした。
「ん?」
女子更衣室に誰かいる?
女子水泳部の更衣室に見慣れない人物が手で望遠鏡を作り壁をじっと覗いている。
「うほほほ〜選り取り見取りだな〜パンツまで可愛らしい〜」
ん!?まさか変質者!?
孝は嫌な予感がし女子更衣室で覗きをしている男の元へ走る。
「こら!そこのお前何をしているんだ。ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!」
「あん?」
声に気づいた男は振り向く。
見回りしていた警備員が気づいて走ってきたのだ。
「五月蝿いな…」
男は地面に手を当てた瞬間。
「そこを動くな…」
走って来た警備員が一瞬で氷漬けになった。
「え!?」
「覗きがばれんだろうが!」
な、何だ今のは!?つか誰だこの変質者??
孝は恐る恐る警備員に近づいてみる。
完全にカチカチに固まって氷漬けにされてる。
「完全に氷漬けかよ…一体何で??じゃなくて、ちょっとアンタ警備員に何したんだよ。つかお前何者だ!」
男に指を指す孝。
「よくぞ聞いたな小僧!我こそは…」
「いやーーーーーーエローマよっ!!」
「え、エローマ??」
「ヤバイ!お宝持ってたのバレたか!!」
お宝??
「エローマが出たわよ!」
「また下着が盗まれたわよ!」
「いやーーーーーー!!」
なんか周りが大変な事になって来たなオイ!
「アンタまさか下着泥棒か!!この変態」
「ば、馬鹿たれ!俺は下着泥棒じゃない。ちょっと楽しむ為に借りただけだ!」
「それを泥棒って言うんだよこのスケベ!!」
女子更衣室からモップ片手に怒り狂った女子たちが出てきた。
さらには学校中から女子たちが武器を構えたり魔法を構えてやがる。
「おっと流石にヤバイかな〜」
エローマと言われた変質者の男はそう言うがなんか余裕ある言い回しをする。
「かかれ!」
女子たちが一斉にに攻撃魔法をぶっ放す。
ん?ぶっ放す!?
当然その場に居る孝も巻き添いを食らう。
「待って!俺は関係なーい!!」
もう遅かった。
魔法の雨あられとモップやら何やらでボコボコに殴られた孝。
「アレ?エローマがいないわよ!?」
あの変質者が…いない…??
「おお〜今日は花柄か〜」
エローマはいつのまにか女子生徒のスカートを堂々とめくっていた。
「いやーーーーーー!」
恥ずかしさのあまり声を上げる女子生徒。
「おいおいそんな声を上げるなよ。しかしもっと大人っぽい柄をだな〜」
「エッチ!」
女子生徒はエローマを平手打ちするがすらりとすり抜けて交わすと電信柱の上に逃げた。
「さてと名残惜しいがそろそろ失礼するぜ!」
エローマはそう言うと旋風をおこす。
旋風は女子生徒達のスカートを捲り上げ下着を露わにした。
女子生徒達は声を上げながら隠すがエローマはそれを直で堪能しながらいやらしい顔で何処へ飛んで行った。
「また会おう!」
二度と来るなーーーーーー!!
女子生徒達は声を上げた。
「いってて…あの野郎何なんだよ…でも無茶苦茶強い魔術師だよなアイツ!」
何百人といた女子生徒達を跳ね除けて逃亡するなんて。
孝は傷だらけで下校中。
巻き添いを食らう上に生徒指導にまで捕まるなんて最悪だよクソ…おかげ真っ暗じゃないかよ!!
でも帰る家なんか無い…家に帰っても誰もいないし…そう孝の家族は父親だけだがその父親は魔術師本部と言う国家に使える魔術師達の長官をやってるからまず家に居ないし。
居たとしても無言だし。
息子が落ちこぼれ以下だからそれを恥とし追い出したんだ。
孝は生活費は父親が全て出してくれている為にアパートで一人暮らしをしている。
エリートの魔術師長官やってるから金はあるけどお偉いさんの目に落ちこぼれは見せたくないから追い出す形で一人暮らしをさせたのだ。
孝は住まいのアパートに帰って来た。
そこは大家さんと娘が切り盛りしているそこそこいいアパートだ。中も綺麗だし。
「ただいま…」
「おかえり孝!」
「り、凛…」
松原凛(まつばらりん)
中学の同級生でこのアパートの管理人もしている。そして何故かやたらと世話を焼いてくれる。
「遅かったね。どうしたの?」
「ちょっと色々あってね。ていうか何でまた居るわけ?」
「またって何だよ。ご飯作りに来てあげたんだよ」
「そう言うのは幼馴染にしてやれよ…」
「幼馴染じゃん」
「中学1からの知り合いじゃ違うからね」
孝はそう言うと家に上がる。
「お風呂にする?ご飯にする?それとも〜」
「からかうなら止めなよ凛。そう言うのは…」
「からかってないよ〜孝が返事くれないから!」
「返事…って」
「こ く は く❤️」
「だ…だから釣り合わないから…断ったろ…」
孝は実は凛に告白されたのだ。
つい昨日突然。
「どうして〜こんな可愛い女の子が君と付き合いたいって大告白したんだよ!!」
「俺は…落ちこぼれ以下だし…凛は成績優秀で気立て良くて人気で…俺じゃ合わないよ」
「ふ〜んつまり告白は嫌じゃないと?受け入れる準備がまだってだけなんだね〜」
「だから違うっての!お腹空いたからご飯頂きます」
孝はそう言うと部屋に行き着替えに行く。
「本気なんだけどな…」
話をはぐらかし孝は凛が作ったご飯をひたすら食べている。
「なあ凛」
「何?告白受け入れてくれる?」
「違う。エローマって知ってる?」
「え、エローマ!?あの神出鬼没の「完璧スケベ(パーフェクトスケベ)」の事!!」
ぱ、パーフェクトスケベ…ってどんだけ嫌われてるんだあのおっさん…
「孝。どうしてあの変質者の事を聞くの?」
「そいつが今日現れてその巻き添いを食った」
「えーまた出たわけ…何故かウチの学校に度々現れては覗きに下着泥棒に痴漢とやりたい放題なんだよ。その男は!」
「何で警察が来ないんだよ??」
そんだけ事件起こしまくれば警察が動くはずなのに。
「さあ?何でだろう?」
実はみんな知らないのだ。
「知らないのかよ…」
くそあのおっさん次会ったら絶対通報してやるからな!
:
次の日
イライラしながら教室に入る孝。
昨日のエロ野郎の巻き添いをまだ引きずっているのだ。
「おい相模、昨日女子更衣室を覗いたんだって?」
「落ちこぼれ以下(ワーストバウト)も最低まで下がったか?」
「五月蝿い…あと俺じゃねぇよ…」
いつもの事だ。魔法が下手で落ちこぼれ以下呼ばわりされ更には嫌がらせこんなの当たり前の日々でもう慣れたよ。
「ちょい待てよ!松原にちょっかい出していい気になってんのかよ?」
「何で凛が出てくるんだよ!」
「お前みたいな落ちこぼれ以下に彼女は似合わないからだよ!」
「そうだ!落ちこぼれ以下のくせに!」
「フン」
馬鹿馬鹿しい。
孝はクラスメイトの手を振り払い廊下へ向かう。
「いい気になってんじゃねーぞ!魔術師擬きが!」
クラスメイトがそう言ったまさにその時だった。
ドッカーンと窓際の壁が大爆発した。
「!?」
大破して空いた壁から武装をした集団がクラスメへ入ってくる。
「な、何だよアンタ達は!?」
「動くんじゃない!この中学は我々が占拠した。大人しくして貰おうか?」
テロリスト!?何で日本に??
テロリスト達は銃をクラスメイト達に向ける。
「全員手を上げろ。」
「お断りだよ!」
「り、凛!?」
「威勢がいいなお嬢ちゃん?」
凛は堂々とテロリストに反抗した。
「こんな事して何の意味があるのかな?」
「意味だと俺たちは世界を変える為に活動してるんだぞ!」
「おかしなカルト教にでも遣ったのかな?それでこんな馬鹿な事したわけ?」
「このじゃりが!」
テロリストの男が凛を銃で殴る。
凛は鼻血を出しながら床に転がる。
「悪い子にはお仕置きだな!」
テロリスト達は凛を抑えつけナイフで服をビリビリに破りブラジャーも壊され凛のふくよかな胸が露わになる。
凛は両手抑えてしゃがみこんだ。パンツ一丁でだ。
「凛!」
孝は思わず飛び出してしまい来ていた学ランを凛に着せた。
「こ、孝!」
「今度は小僧か?」
テロリストは孝の腹に火の魔術を放ち孝を外へ吹っ飛ばした。
ヤバイ!ここは3階!?
しかしそう思うのも遅く孝は地面に真っ逆さまに落ちた。
「うわぁぁぁぁぁ!」
孝は思わず目を瞑る。
あれ?
「落ちてない?」
「たく男なんか助けたくないんだがな〜」
「あ!エローマ!!」
「誰がエローマだっ!」
間一髪のところをあの変質者が飛びながら助け出し教室へ戻る。
「たく、馬鹿なテロリストがこの近辺にいると聞いてみりゃ。やっぱここを狙ったか!」
エローマはそう言うと孝を凛のそばに降ろした。
「何だ貴様は!」
「よくぞ聞いたな悪党共!」
エローマは椅子に足を乗せてポーズを決めながら答えた。
「我こそは国家魔術師機関 特別編成部隊所属。通称四天王が1人、泣く子も黙る色男!」
長えよ…名乗りが…
「岩井狼馬(いわいろうま)様たぁ!あ、俺の事よっ!!」
は?なんだって?
「岩井狼馬っ!?」
「狼馬ってあの最強チームの四天王のっ!?」
「一番問題ばかり起こしてる別名パーフェクトスケベのっ!?」
…は…?
「アレ…?」
みえ決まってないしーーー!!
「何しに来たんだアンタよまじで」
一瞬の沈黙がクラスをしーんとさせてしまった。
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