ラストナイト・イン・ソーホー 後編 今は刻んだ夢を道連れにして

 観た?

 映画本編を最後まで観てから、ここに進みましたか?

 本当?

 はい、ここに舌を出して。

(ピッ)

 ちょっと待ってね、今、低速だから。

(ピコーン)

 うん、末吉。

 あ、これ嘘発見器じゃなくて、おみくじマシンだったわ。

(ポイっ)

 じゃあ、ここから先は、自己責任だから。

 読んでから「何でネタバレを置いとくのよ? うっかり読んじゃったでしょ?!」とかクレームを入れても、無駄だからね?















 やられた〜〜〜〜!!!!

 シックスセンスと逆!

 死んだと思っていたのに、サンディが生きていたとは!

 主人公エロイーズが幻視に対して、「幽霊を見る力」限定だと勘違いしているというヒントに、バーの女店主の「幽霊なんか信じないわよ」「ロンドンには、欲望の記憶が充満」という発言。あれ、めっちゃヒントだよね。何気ないけど、一回観た後だと、相当に上手な伏線だと分かる。

 観客がエロイーズ経由でサンディの生前の記憶を追体験、しているのではなく。サンディの主観で形成された記憶の残滓を、エロイーズが受信してしまっただけ。絶品のミスリードでした。

 てっきりサンディの幽霊が助けを求めているのが、幻視の原因かと。


 犠牲者(幽霊)たちが、勘違いし続けるエロイーズに警告しようと、大挙して姿を見せる訳ですが、アプローチの仕方が…サンディが気付いてエロイーズを始末しようとしているから焦るのは分かるけど、押し掛けられた方の心象を、少しは考えようよ(笑)

 受話器を取って、「助けて」と言えた彼を除き、何もかも間違えている犠牲者(幽霊)たち。

 まあ、事情を知っても、全然同情する気になれない犠牲者(幽霊)たちだけど。



 ハッピーエンドですね。

 意外と。

 エンディングでエロイーズのデザインした衣装でファッションショーが始まった時は、死に際のエロイーズの幻視かと思ったけれど、そんな意地悪な展開もなく。

 嫌味な同級生のジョカスタが、一切、手も口も出さずに、対等に祝福するハッピーエンド。

 いじめっ子って、本当の強さを身に付けた相手には、手を出さないよね。

 そして。

 本当の強さを身に纏うきっかけを作ったサンディが、祝福するように鏡の中に姿を見せて、エロイーズと微笑み合うラスト。

 夢見る少女たちの視線から始まり、男たちの欲望に満ちた獣の視線が蹂躙し、恐ろしい幻視が氾濫する映画の最後が、愛に満ちた視線の交差。

 良いハッピーエンドです。



 

 追悼

 今回、『ラストナイト・イン・ソーホー』を観賞したシネプレックスつくば横のイタリア料理店「カプリチョーザつくば梅園店」が、閉店してしまいました。

 長年、映画観賞後にこの店で美味しいパスタやピザを食すのが楽しみでしたのに、非常に残念です。

 本日、『ラストナイト・イン・ソーホー』を観賞後に店の前に来て閉店を知り、ショックで叫び続けながら車を運転して帰宅しました。

 どうか、俺の近所に転生してください(合掌)


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