ドクター・スリープ

ドクター・スリープ  前編 大御所二人に挟まれて

 『シャイニング』の続編が作られると聞いた瞬間に浮かんだ懸念は、「どっち準拠の続編だ?」

 どっち? と言われて映画ファンであれば察してくれようが、このエッセイは未見者向けでもありますので、「映画界で殿堂入りの傑作でありながら、原作者に最も嫌われている映画」として語り継がれている現状から説明。


 ホラー小説界の伝説スティーブン・キングの小説と、それを映画化した巨匠スタンリー・キューブリック監督の作品とでは、凄まじい相違が発生しておりまして。

 小説が「超能力シャイニングを持つダニー少年が幽霊ホテルに狙われ、幽霊ホテルに取り込まれたアル中の父がラスボスに。でも最後は家族の絆でハッピーエンド」にも関わらず、映画版は「父が徐々に狂っていき、幽霊ホテルの手先に。ダニー少年と母は何とか難を逃れるが、アル中の父が幽霊ホテルの一部に。超能力シャイニング? 知るかそんなもん」

 出来が歴史的傑作でなかったら、大炎上する改変ですよ(笑)。

 この件に関しては、両大御所は一切意見を軟化させていませんからね。

 二人の大御所を心から尊敬しているマイク・フラナガン監督は、どちらにも嫌われずに続編を作れるのか?

 幸い(失敬)、片方は既に天国へ。

 スティーブン・キングさえ満足させれば、マイクの勝ち。

 彼、勝ちました。

 両作品をリスペクトしたハイブリッド続編『ドクター・スリープ』を完成させるや、真っ先にスティーブン・キングの自宅に訪問して作品をお披露目。大絶賛されたので、気絶してしまったと自慢するレベルの出来栄えです。

 ついでにキューブリック監督の遺族からも絶賛のお墨付きを貰っておりますので、もう何も心配しなくていいです。

 『シャイニング』を愛する全ての人々よ。

 安心していいのです。


 後編に続く(ネタバレあるから、作品を見てから進んでね)。

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