星神の使い

雪野 ゆずり

第1話

「アステール様、ありがとうございました。」

「いえ、とんでもないです。また何かあったらいらしてくださいね。」

 そう言って、何度も何度も頭を下げながら女性は帰って行った。これでやっと今日の仕事も終わり。

「はあ…。」

「帰ったか?」

 そう思ってため息をつくと、ぶっりらぼうな優しい声が聞こえた。

「はい、いいお顔をしてお帰りになりました。…少しはお役に立てたのでしょうか…?」

「さあな。でも、いい顔してたなら役に立ったんじゃないか?」

 そう言ってもらえて嬉しくなる。同時に少しクラっとしたけど、この方、アルクトスさんには内緒。心配させてしまうから。それに、今日は…。

「それじゃ、約束通り街に行くか。」

「はい!あ、支度してきますね。」

 そう言って部屋に戻る。一週間に一度アルクトスさんが街に連れて行ってくれる。私の息抜きのため。気分を晴らして、また一週間頑張るために。

「お待たせしました。」

「じゃあ、行くか。」

「はい!」

 そう言って私たちは街に出た。まさか、ここから運命が動き出すとは思わなかった。

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