実況:ロイン 解説:マッソー
「今回の実況はロイン、解説はマッソーでお送りします」
「よろしくお願いしマッスル!」
「今回の勇者さんは男性のようですね。どうやら、冒険者ギルドのパーティ募集スペースで、仲間を探すようです」
「選考基準は、肉体美と体脂肪率だ!無論、体脂肪率は一ケタでな!!」
「体脂肪率を計る機械なんて、この世界にはありませんよ?」
「自らの筋肉を鍛え、愛した者なら、見ただけで他人の体脂肪率を測定することなど朝飯のささみ肉前だ!」
「そんな超人はいません。スキルでもあれば別ですが」
「む?あの勇者、筋肉が足りていない!!特に耳たぶの辺りが!!」
「そんなところに筋肉はありません。鍛える事もできないでしょう」
「いいや!熟練者ともなれば、耳たぶ伏せをすることだって可能!」
「腕立て伏せみたいに言うのやめてもらえます?さらりと人類を超越しないでくださいな」
「筋肉は、世界を救う!!」
「誰か僕の代わりに、この人の頭に救いの手を差し伸べてあげてください。それはさておき、どうやら仲間になりたいという方が殺到しているようですね。さすがは勇者の肩書を持つだけあって、人気の御様子」
「よし、全員並べ!!腕相撲でトーナメントを行い、勝ち残った者をメンバーに加える!」
「魔術師や聖職者に著しく不利なルールですね」
「こざかしい術式や回復など不要!鋼の肉体は傷つくことなく、魔術すら跳ね返す!!」
「後衛職の存在意義を失くすのは止めてください。それに、遠距離から援護があったほうがいいでしょう?弓とかどうですか?あれなら腕力もモノを言いますし」
「投石で充分!!」
「原始時代の人間ですか、あなたは」
「石ころでも、音速を超える速度でぶつければ立派な武器となる!」
「あなたの基準で語らないでください。……おや、決めたようですね」
「ぬぅ!?何という事だ!メンバー皆に筋肉が足りていない!何という事だ!」
「取り乱さないでください」
「あの世界は滅びを迎えるであろう」
「不吉な予言もやめてください」
「かくなる上は、この地より筋骨の波動を送り、彼の勇者に筋肉の素晴らしさを刻み込むまで!」
「洗脳するのも止めてください。これ以上脳筋は必要ありません」
「脳筋!?脳味噌まで筋肉!?素晴らしい案だ!しかし問題は、どうやって脳味噌にある筋肉を鍛えるかだな」
「脳には筋肉はありませんが」
「ならば作るまで!」
「物理的な脳筋を作るのもやめてください。えっと、パーティメンバーは……まず魔術師の女性が一人」
「あの杖では、敵を殴ったら折れてしまう!至急、鉄製のメイスに変えるべきだ」
「あれは打撃武器ではありません」
「では、刺突武器か!だが、鋭さが足りない!!」
「先端は確かに尖っていますが、その用途も間違いです」
「しかし……投擲武器としては些か形状が不向きだ。石ころがだめなら、せめて投擲用の槍にすべきでは」
「槍投げの要領で投げるものでもありません。あれは、魔術詠唱時に対象を設定する際の補助具です」
「私としては、魔術で筋力を上げるのは邪道だと思うが」
「そういう用途で魔術を習得したのではないかと思われます」
「では、骨密度の補強か」
「そういうマイナーチェンジの話ではありません。あと、そんなピンポイントな魔術もありません」
「なんじゃ、つまらん。魔術も案外大したことないのう」
「もう一人は……元盗賊のようですね」
「脚の筋肉が非常にしなやかだ!筋肉の量は不満だが、しっかりと筋肉を使う事で、ほぐしておる。筋肉と言うのはつければいいと思ってる輩が多いが、私としてはそれだけでは甘いと言わざるを得ない。筋肉というのは、つけたあとに使ってほぐすことにより、ようやく応えてくれるのだ」
「ご高説ありがとうございます。どうやら、あの盗賊の武器は短剣と短銃のようですね」
「剣を振るには、あの細腕では心もとないな。やはり、ダイヤモンド程度は真っ二つにしてもらいたいところよな」
「千歩譲って仮にできるとしても、短剣の方が持たないのでは?」
「刃をダイヤで作ればよかろう」
「聖剣などを除けば、世界一高価な武器になりそうですね。さて、最後の一人は祈祷師のようですね。あの世界では回復術式の専門家です」
「私は筋肉の専門家だ!格は私の方が上だな!!」
「神と同一視される存在が、人間と張り合うのは止めてください。あと、どうして筋肉の方が格が上なのか解説頂きたい」
「より人体に関わっており、もっとも身近な存在だからだ。まあ、身近というより身内だがな、がっはっはっは!!」
「身内という言葉は、そういう意味で使うものではないかと。それはともかく、いよいよ旅に出るようですね」
「皆がどんな肉体を手に入れて帰ってくるかが楽しみじゃわい!!どうだ?お主も鍛えてみないか?この私がサポートすれば、どんな肉体美も思いのまま!」
「遠慮しておきます。私は今の体が気に入っているのです」
「そんな脂肪だらけの体がか?」
「鍛え上げられた筋肉の美とは違いますが、この体のしなやかさを美しいと評してくれる方は多いのですよ?」
「なんじゃ、女々しい奴め」
「いえ、女々しいも何も、私は女ですので……」
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