第二章 一四歳になった少年 3
ドラゴンの氷像の前で自己
シュルツは最初、見慣れぬ女に
それを見ていてこの人は本当に
「先ほどから私の行動は少し変でしょう。まるで光があるかのように見えませんか?」
「たしかに目が不自由とはとても思えない」
「子供の
「技?」
こくりとうなずくルナマリア。
「視力以外の感覚が
うん、分かった、と素直に左手を挙げると、ルナマリアは後ろを向きながら言う。
「今、左手を挙げていますね。しかも、
「な、どうして分かったの!?」
「簡単です。空気の動きです。手を広げたまま挙げると指の間に空気が通って独特の音がします」
「右か左か当てるだけでもすごいのに、そんなことも分かるなんて、すごい」
「すごいかは分かりませんが、幼き頃よりこうして生きているので、生活には不自由しません」
「大変だったね、という同情の言葉は失礼に当たるかもしれないね」
「そうですね。望んで目を神に
「でも、その盲目の巫女がどうしてこんな場所に?」
「それは最初に言いましたが、私はこの世界を救う勇者を探しているのです。それはあなた様だと思っています」
「僕が? でも、印が……」
「印など不要です。仮にあっても私には見えません」
彼女は微笑むと続ける。
「私は神の
「たしかにこの地には人間は僕しかいないけど」
「ならばもはや確実ですね。ささ、勇者様、どうかこのルナマリアと共に世界を救う旅に出てください」
「いきなり言われても」
「そうでした。たしか、神々に育てられたのですよね」
「そうだよ」
「ならばその神々に
「お許しかあ……」
父さんたちの顔を思い浮かべるが、
快く送り出してくれるのは万能の神レウス父さんくらいだろうな、と説明すると、ルナマリアは、
「……そうなのですか。残念です」
と
が、それも数秒、すぐににこりと言う。
「逆に言えばひとりは賛成してくださるのですよね。ならばその方を
「……うん、見てみたい」
シュルツにだけ語った決意を彼女にも
僕は山の外を見てみたかった。
無論、この山は大好きである。大好きな父さんも母さんもいる。修行や勉強も楽しい。仲間と遊ぶのも大好きだ。
でも、勉強で習う外の世界。動物たちから外の世界の話を聞くと、どうしても現実の世界を見たくなるのだ。
魔術の神ヴァンダルは、それは僕が人の子であるから、と言う。人間というやつは探究心を押し込めるのが難しいのだ。
いつか好奇心と探究心を
そのことをルナマリアに伝えると、彼女は花が
同じ
しばしその笑顔に見とれると、僕は彼女の手を引き、山頂へ向かった。
テーブル・マウンテンはその名の通り台形の形をしている。
台形の平面部分には広大な森が広がっているが、その中心に神々の
宮殿と言っても人間の王族が住まうようなものではなく、森の
ただ、それぞれの
僕はルナマリアを応接室へ連れて行くと、そこに父さんたちを集めた。
レウスは大空から
「……変わった父さんたちでごめんね」
代わりに僕が謝るが、ルナマリアは首を横に
「神々なのですから当然です。私こそいきなりお
「この山には呼び
「うちのウィルはあなたのような
いきなり失礼な発言であるが、ルナマリアは
少しだけ口元を
「本当のお母様のようですね。
冗談めかして言うが、その冗談はあながち外れてはいなかった。
僕は大きくため息をつくと、
「彼女の名はルナマリア。地母神に仕える盲目の巫女。──僕の初めての友達なんだ。人間の」
と紹介をした。
その言葉を聞いた神々はそれぞれの視線で僕とルナマリアを
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