第一章 神々の子 2
僕がウィルという名前を知覚できるようになった
教育方針に
拾い親である万能の神、あらゆるものに化身し、
「ウィルは優しい子供だ。自由
その教育方針には残りの神々も賛成したが、まずは剣神であるローニンが言う。
彼は剣を司る
ローニンは刀を
「自由奔放に育てるのはいいが、男には
と、手作りの木刀を僕に握らせる。幼い僕は喜びながら木刀を
それを見ていたミリアが木刀を取り上げ、僕を抱きしめる。
「なにを
「なんだと!」
「なによ!」
ローニンはミリアを
それにミリアは女性ながらとても気が強いのだ。
治癒の女神、別名、
そんなふたりのやりとりを見つめるのはとんがり
彼は魔術の真理を究めるため、このテーブル・マウンテンに引き
彼いわく、前にひげを
「この子は利発で
その声は
つまり神々の教育方針が分かれた、ということである。
剣術を極めさせたい剣神ローニン。
治癒師にしたい女神ミリア。
魔術の道を追究させたい魔術の神ヴァンダル。
三人が三人、一歩も引かない。
神々の間に火花が飛び散る。
万能の神レウスである。
彼はこのテーブル・マウンテンの神々をとりまとめる主神なのだ。
無限の
「子供の前で争うな! それ以上、喧嘩をするならば、ウィルを連れて、別の世界に旅立つぞ」
主神に
──
ミリアは僕の近くに薬草を置き、ヴァンダルは魔術書を置く。
また、
「ええい、お前ら、いい加減にしろ。なぜ、そんなにも自分の意見を通そうとするのだ」
ローニンは答える。
「それはこの子が可愛いからだよ、レウス。可愛い我が子には自分の
ミリアも答える。
「前半までは
ヴァンダルもうなずく。
「その通り。しかし、この子を救うのは知識だ。万物の知識こそこの子を幸せにするはず」
それぞれが僕を愛してくれているのは分かるが、このままだと
そう思ったレウスは宣言する。
「分かった。そこまで言うのならばそうするがよい。ただし、喧嘩は禁止だ。もしも喧嘩をしたならばウィルは取り上げるぞ」
レウスは
「ウィルの教育は
と宣言した。
「それはどういう意味?」
女神ミリアは
「そのままの意味だ。我らが子ウィルにはそれぞれが教育を
その言葉を聞いた神々は、
「その手があったか!」
という顔をした。
その表情を見たレウスは、
「これで決まりだな。この子は最強の神々によって、最高の教育を受ける。やがて大人になるだろうが、そのとき、どのような大人になっているかな」
と、
あるいは、剣術はローニンにおよばず、治癒はミリアに
しかし、そのようなことはどうでもいいことだった。
レウスとしては
どのような強敵にも
それらさえ備えてくれれば、たとえ最弱の男になっても構うことはなかった。
そのようにウィルを育てる決意をしたが、レウスの
赤子から幼児へと成長する過程で、ウィルはとんでもない強さの
ある日、剣神ローニンがウィルに訓練を
朝から晩まで剣術の手ほどきをしていたのだが、ローニンは
「ウィルよ、目の前にある
「本当?」
ウィルは喜ぶと、さっそく巨木を切り裂く。
ローニンのように剣の先から
──出るものではなかったのだが、ウィルは三回、ローニンの真似をしながら木刀を振るうと、木刀の先から剣閃を出す。
木刀から放たれた黄金色の剣閃は巨木に当たる。
それを見ていたローニンは、「──よくやった。約束通り、ダガーはやるよ」とウィルにそれを
ウィルは喜びながら、山の仲間たち──、動物たちにダガーを見せびらかしに行く。
そこに現れたのは治癒の女神。彼女はローニンの横に並び立つと、ウィルをべた
「すごい才能ね。治癒師としてだけではなく、剣士としても一流だわ」
もちろん、あの子は治癒師にするのだけど、と続けるが、ローニンはそんなこと聞いていなかった。正確には耳に入らない。
ウィルのすさまじい才能に
ローニンは木があった場所まで歩むと独り言のように言った。
「……俺は木を切れと言ったんだぜ? それなのにウィルのやつは木を砕きやがった」
砕けた木片となった
ミリアは治癒師に、ヴァンダルは
ウィルのとんでもない才能を見て、決意を新たにするのだった。
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