第拾肆話―迷いの復讐其の弐―
眠りし魂の声が聞こえなくなった。
ガロンは亜人領を南下して
「本当に襲撃とか事件が起きずに戻るとは拍子抜けだな」
武装したイーブルは大物と戦闘を予期していたが、徒労となった。
「ふん、危険だったら、もっと人数を集めて移動する。
必要最低限じゃなくに入念になぁ」
「そうかい。んじゃあこれで終わりなんだな」
「ああ。また厄介事があれば頼む」
イーブルと別れガロンはヴォーンの工場に足を運び広場で白の着物を見に包み長い黒髪を舞い子供らと
「・・・ハァー」
重たいため息をこぼす。ガロンは心のどこかに内ケ島椛葉が村を出ていくのを願っていたかもしれない。
(俺はこの世界からアンノーンオーブを根絶やしすると誓った。
だから奴も例外じゃない)
そう言い聞かせ揺るぎそうになる信念を保つ。ガロンはそのまま鍛冶屋に入ろうと向かう。
「ガロンさん帰ってきたんですね。怪我とかしていませんか?」
しかし内ケ島は鬼ごっこの途中に歩くガロンを視界に入って走り寄ってきた。数日前の発言など
忘れたかのように。
「・・・ああ」
「えーと、ガロンさんに武器が出来たってヴォーンさんが
言っていましたよ」
「そうか・・・」
「その・・・ガロンさんと、また旅とかしたいかなと思っているですけど」
「何か誤解はしていないか」
「えっ?」
ガロンは片時も忘れてたことない惨劇。強い怨嗟の眼光を内ケ島に向ける。隠さない
「俺は鬼人だ。アンノーンオーブを持つおまえは俺の敵だ」
「敵・・・・・」
ガロンは内ケ島に背を向けて鍛冶屋に入るのだった。内ケ島は拒絶された事に涙を流していた。
「どうせ、わたしなんかが誰かを親しくなってくれるわけがなかったんだ」
外が黄昏で照らす時間にヴォーンの鍛冶屋に帰る内ケ島。
ひどく落ち込みにヴォーンやヴァレストもいつもより気を遣うが空返事で効果はなかった。
談笑を交えた晩御飯を済ませた内ケ島はライトとエレの手を繋ぎ2階へと登ろうと足を上げるとガロンがリビングルームから出る。
「
「最後ですか・・・はい、分かりました」
最後の言葉にはシンプルに村を出る事ではないだろう。明日がわたしの人生最後となると分かって返事した。
(すぐに復讐を果たさないのはガロンさんの優しいさ。
どうして、そこまでこだわるの)
ガロンは
彼女はその
「おねえちゃんげんきないよ?」
エレが顔を傾け幼いなりに励まそうと明るい笑顔を向ける。
「げんきがないとしあわせが、
こないってヴォーンおじさんがいっていたんだぞ」
エレの兄ライトも励まそうとする。猫耳がシュンと落ちて枯れているようになっていながら何とか明るく言う。
「ほら、おねえちゃん。いつもみたいにわらってよ」
鬼人のヴァレストも二人の猫人に続いて励ます。
「ありがとう。皆に会えてよかったよ。どうか、わたしの事は忘れないでねぇ。わたし・・・すごい遠くに行かないとだから」
日本にいた内ケ島の生前は幸福に満ち溢れていたかは答えはノーだ。居場所がなく、どうにかして見つけようと足掻いた。いじめにもあって苦しかったが前を向いた。
そして不幸の最後を迎え、異世界に転生した。神々に会い
歓迎されたのは最初だけで使えないアンノーンオーブと解ると手のひら返し。
(見下されて冷たくされたけど
そんなわたしに認めてくれたガロンさんに拒絶されると・・・もう)
希望を失った内ケ島。同時刻、一階にいたガロンは
夜風に当たろうと外に出る。
「しばらくは会えないと言っておきながら、すぐに戻ったときは驚いたぜ」
背後に声を掛けるのは、刀職人ヴォーン。ガロンは後ろを振り変えず
自責の念にあるガロンは無心になる。
「そうだな。オーガと鉢合わせなんかせずに戻れてよかったと思っている」
「そんなことより、嬢ちゃんをどうしたんだ。ひどい顔だったぞ」
「何もない。そう、最初から仲間だったことはなかった」
「よく分からねぇが、仲良くしろよ。遅くならないうちに寝ろよ」
ヴォーンは反転してリビングルームに向かい、そこで就寝する。
静寂が訪れ嘆息して月を見上げる。
(どうして、迷っているんだ俺は)
ガロンは月に手を伸ばす。もちろん掴めるはずかなく、苦悩にあると無意識にやってしまうのだろうかと
結論は手に入れたと無意識な動作と詩的な解釈するが、きっと明日には
忘れるだろうと思った。
そして陽が登り内ケ島はニ階から一階に階段を降りるとガロンが出入り口から中へ入る。まるでタイミングを見計らったみたいに。
もちろんガロンも内ケ島もそんな悪趣味は持っていない。
「おはようございますガロンさん」
「ああ、おはよう」
声のトーンが低く生命力に欠けてしまっているような挨拶。
それからテーブルを囲んで朝食を食べるが言葉を交えることはなかった。すぐに旅支度をして二人は村を出る朝。工場を出ると村長やイーブルなど村人が大勢いた。
「「おねえちゃん!」」
総出だろうかと考える二人。内ケ島に飛びつく影が2つ。抱擁するのは猫人であるライトとエレ。
「ライト、エレ・・・わたしが居なくても仲良くしてね。会えてすごく嬉しかったよ」
「おねえちゃん・・・」
ヴァレストは拳をギュッと握り顔を顰める。小さい背中を
「ほら、最後になるかもしれないんだろ。ちゃんとお別れ済ませて来い!」
「うん!」
父に背中を押してもらいヴァレストは内ケ島の胸に飛び込む。
「おねえちゃん」
「うわあぁぁ!?さすがに3人も来られると倒れそうになるよ」
「おねえちゃん。いつかつよくなって、おねえちゃんをたすけられるようになるよ」
「・・・うん。ありがとう、そしてごめんねぇ」
「おねえちゃん?」
内ケ島椛葉は号泣するヴァレストの頭を優しくなでる。返答は帰ってこなかったのは、これが答えかな?とヴァレストはそう解釈した。
「・・・後悔はしないのかガロン」
問うのはイーブル。ガロンは一瞬の迷いはあったが、すぐに返答しようと口を開く。
「これが俺の選択だ」
「そうか。ならもう俺が言う
ことは無い」
深く聞かず語らずガロンとイーブル。
「そろそろ行くぞ」
「は、はい!皆ありがとう。
短い間だったけど温かくて
この村が大好きでした。
・・・さようなら!」
ガロンが深い森へ足を向け歩くと内ケ島もその背を追い振り返り村人にさようならと別れを告げた。
彼女は昨日が最後の
内ケ島はガロンについて歩く。
少しして後ろへ振り返ると、ヴァレスト達が手を振っている。
後悔はある。そう思うと勝手に涙が頬に流れて地面にポトと落ちる。内ケ島は早朝である森の中が2度と戻ってこない地獄のように見えた。
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