転生した英雄を狩る者

立花戦

異世界転生チートキラー

第壱話―異世界チートを屠る鬼―

異世界アークブルー。

他種族が覇権を争うこの異世界に

異世界転生した少年は、焦土しょうどと化した焼け野原を見渡す。


「あー、また俺のほのおで終わらせてしまったよ」


焼け野原とさせたのは微笑を浮かべるこの少年。名は有馬颯牙ありまそうが

整えた黒髪と特徴のない黒目。日本にいれば平々凡々の少年だろう。

されど半年前に神に授かれた究極の力アンノーンオーブ。

または異世界チート能力。


「キャーー!スゴイですわぁ。

ソウガ」


颯牙の右腕を抱きつくのは腰まで長く伸ばした金髪のストレートはつややか。肌は白磁の肌、海のような青の瞳。アウローラ家の長女である

マリヤ・レイ・アウローラ。

二人は同い年の16歳そして許嫁いいなずけ

である。


「マ、マリヤ!?」


「私の許嫁ですからもう慣れてくれないと困りますわ」


「・・・・・善処します」


「えい!」


空いている左腕にハグするは尖った長い耳と長命の種族エルフ。


年は130才。人間の年齢で言えば13才。金髪をサイドアップにし

身長は146ぐらい。どうしても

颯牙は、ロリコンというワードが頭に浮かんでしまう。

ちなみに颯牙は、ロリコンでもある。


「エ、エレナまで!?」


幼いエルフは、エレナ・フォースと呼ばれる魔法使い。

ローブのサイズが大きく颯牙は

どうしても自分のシャツを着た女の子を見えてしまう。いえ見ている。


「ムッ、ソウガ。幼女を可愛がるのはいいことですわ。

ですけど、女性として見ているように思えますわ」


反対に抱きつくマリヤは疑いの目を向ける。彼女のジョブは狩人かりうど。お姫様である立場であるマリヤはアウローラ家の代々、受け継がれるころもアウローラの衣。青のドレスのため狩人にはとても見えない。

唯一、理解できるのは後ろにある弓。


「ソ、ソンナコトナイヨ」


「聞き捨てなりません!

わたしはもう大人なんですよ。

この中で一番、年上なんですからソウガは大人のみりょくにメロメロなんだから!」


「そうですわね。私らよりも大人のおばあさんは100才ほど離れたソウガに色目を使うなんて見苦しいですわよ」


マリヤとエレナの睨み合いが勃発ぼっぱつ

颯牙は毎回の争いに辟易していた。

助けを求めようと仲間の一人である

ガイア・ガストロフィン。

整った金髪と青い瞳は優雅で

眉目秀麗びもくしゅんれいな騎士と誰もが

そう思うことだろう。


男女二人の四人パーティは悪魔族の領地のゴブリンが住む村を壊滅したことに油断していた。

矢がエルフのエレナの脳天を貫かんと進むのを視界に入り気づいた颯牙は右足を上げてあおの焔により焼失させる。


「・・・・・ソ、ソウガこれって?」


目を開き驚くエレナ。


「気をつけろ!敵が狙っている」


ソウガがそう言うと臨戦態勢は速い。各々、得物を出す。

有馬颯牙は、神々しい剣と盾を。

マリヤは、細長い弓を。

エレナは、神聖な木を使った杖を。

ガイアは、騎士の剣を。


エレナを守るように前方左右に

颯牙とガイア。背後にマリヤの陣形で組む。 禍々しい木々からゆっくり現れるは人だった。

黒い軽装と青いマントしていた。弓矢を向けていつでも射抜くできる。すきを待っている。


「何者だ!」


ガイアの問いに――


「・・・俺は異世界転生者を殺す。ただ、それだけの鬼人きじんだ!」


無造作で長く伸びた黒髪と獣のような目つき。言葉からも目も常軌を逸脱いつだつした印象を与える鬼人。


「ひっ!?」


「大丈夫ですわよエレナ。

私と颯牙もいるのですから」


「出来れば、その中に私も入れてほしいのですが」


「こんな所でも締めないなぁ。

でも、嫌いじゃない」


謎の鬼人にも気を負わず焦らずに颯牙達は今回も落ち着いてた。


「まぁ、そんなやり取りもした。けど俺の異世界チート能力で

跡形あとかたもなくしてやるけど。

煉獄れんごくの焔よ!」


てのひらを向け罪人を裁く蒼き焔が焼失という消滅せんと放ち進んでいく。

最上級魔法クラスの威力と規模。

詠唱は一声、魔力消費もなく

自由にいつでも放っている。

物理法則を無視して、世界のことわりさえも関係なく。

それが煉獄の焔。


ったか!」


ガイアはそう言うと颯牙は嘆息。


「ハァー、ガイア。それフラグだぞ」


「フラグ?なんだいそれは」


「あぁー、劇場とかで終わったと思いきや生きていたとか流れのこと」


「ほう。子女しじょにだらしない颯牙が高尚こうしょうな趣味があるとなぁ」


「たくっ、口数が多んだよなぁ」


颯牙とガイアがもう終わったと歓談を始める。煙が少しずつ晴れていく。


「フラグって言ったけど、俺の

焔が焼かれないものはない・・・」


矢が脳天を貫かんと目の前に――


「はぁっ!!」


颯牙は、まっすぐ飛んできた矢を素早く袈裟斬けさぎりで迎撃する。


「がっ!?」


「あっ――」


ガイアとエレナのボソッとした小さい声。不安を覚えた颯牙は横にいるガイアを向く。首を喉仏のどぼとけに矢が刺されていた。もう一人の後ろにいるエレナは・・・・・胸に矢が刺されていた。

バタッ、バタッ。二人は倒れた。


「あっ・・・・・あががぁぁっアアアアアアっァァァァァァァァァァァァァァーーーーー!!!」


死んだと思った颯牙は、涙を流し現実逃避と無意識に天に向け叫び出す。神経がプチッと憤怒が起き、呆気ない仲間と死別。


「ソ、ソウガァァァ!!」


叫ぶマリヤはソウガの後ろに回り貫く禍々しい音が耳に入る。

ソウガは怖くなり振り返りたくなかった。しかし、後悔すると思い振り返ると、案の定マリヤは胸に矢が刺されていた。


「・・・ウソだろ。マ、マリヤァァ!!」


崩れるマリヤを颯牙は地面に膝をつけ支える。倒れる寸前に引き止めた形。マリヤの焦点しょうてんが合っていない。


「マリヤ!マリヤ!!

返事をしてくれ」


「ソウガ?」


「マリヤ」


「私、目が見えないの。きっと最後になるから伝えるねぇ。

・・・ぉ・・・・お慕いしていま・・・し・・た・・・・・・・・・・」


「・・・マリヤ?う、ウソだろ。

マリヤァァァーーーー!!」


ゆっくり目を閉じて告白を告げるとマリヤは、微笑みながら死を迎えた。無粋ぶすいの矢が飛んでくる。颯牙はそれを一瞥いちべつしたことに憤った。

相手に対して自分にも。手を軽く下から上に動かす、砂を掛ける動作。動作の意味は焔の壁ができる。邪魔をさせないように。


「マリヤ・・・俺も好きだった。

こんな事になるなら俺が告白するんだった。美少女とか金髪碧眼とか許嫁とかあるけどマリヤだったから好きだったんだよ」


流れる涙は止まらい。

もう目を覚まさないマリヤに颯牙は優しい笑みを浮かべて愛を伝えていく。


嗚咽おえつは止まらないけど慟哭どうこくは後だ。俺がやるべきことは。

颯牙は、マリヤをゆっくり下ろしてから立ち上がる。


「お前だけは・・・テメェだけは許すわけにはいけねぇ!!」


余裕綽々よゆうしゃくしゃく何処どこかにしていた。もう油断はしない。全力で煉獄の焔で完全に消してやる。


この焔で存在さえもいた証さえもすべて燃やして消す。怪しい奴の認識は

不倶戴天ふぐたいてんの消す認識になった。


「一撃だ。一撃で消してやるよ。

煉獄の焔よ!煉獄の焔よぉぉ!!」


両手首を合わせてた開いた構え。

そして蒼き焔が膨大な熱量を持って放つ。魔法は強力なると詠唱と魔力も大量に必要になる。


それをクリアしても発動まで時間が掛かる。颯牙の異世界チートまたはアンノーンオーブは一瞬で初級魔法よりも速く放つ。


二度目を唱えると火力は倍となる。鬼人きじんは焔を避けようと右に走る。右に手を向けると放射した焔も移動。


「もっとだ!煉獄の焔よすべてを解き放ってえぇぇぇぇ!!」


次は倍レベルではなく数十倍の火力を増していく。奔流ほんりゅうは嵐となり荒ぶる。鬼人も途中から加速する。しかし手を向けば焔も向きに合わせて放射できる。とうとう鬼人は無慈悲の蒼き焔に包まれる。爆発がなんども起きる。それは地獄絵図だ。


「ハッハハ、ハッァァハハハ!!くたばれよ。この人殺しがぁぁ」


焔を止めずにずっと放ち続ける。

もう満足した颯牙は放った焔を止める。


「ハァ、ハァ・・・ハァ」


ここまでの火力と持続したのは初めてだった。そのせいでひどく疲労してしまったが。爆発の煙に人影が見えてくる。鬼人は走って背中にあった二つの槍を持って走ってくる。気のせいか青いマントはしていない。


「生きていたのか。

なら、食らえよ煉獄の焔!」


掌から放つ蒼い焔。

しかし前のように威力はなかった。されど街一つを焼失させる

規模はある。


「っ!?疾風迅雷しっぷうじんらい!」


鬼人は突然と四字熟語よ疾風迅雷を口にする。なにを言っているだと思いきや動きが速くなったことに颯牙は目を見開いた。

煉獄の焔を左に避けて再び駆ける。


「まさか異世界チート能力!?」


転生してから半年の颯牙は異世界アークブルーの知識はそんなに無いがこれが神に与えられた能力だと分かってしまう。


「違う。これは、俺の力だ!

お前らのような者と一緒にするなぁ」


静かに強い怒りが垣間見かいまみたと颯牙は思った。


「そうかよ!」


剣を両手を握り、颯牙は悪態をつき二槍にそうの鬼人が突こうとする。


「はっ!」


冷笑して右にジャンプして避ける颯牙。しかし鬼人は右に強くそのまま槍の柄を叩く。


「ガハッ!?」


肋骨ろっこつが何本か鈍く折れる音が何故か聞こえる颯牙。

吹き飛ばされ地面をなんども

跳ねていきようやく止まる。

右手に激痛が走る。


「ああぁぁぁぁぁ!!」


短剣だ。刃こぼれがヒドイまるでゴブリンが使っていたような――

まさか拾って使ったのか。


「トドメだ」


黒い髪を揺れながら鋭い眼光で鬼人は槍を少し引く。そして刺すのだろう。しかしまだ手はある。


「焔は手足の以外でも出せるんだよ。こんな風になぁ」


口を開き煉獄の焔を吐き出す。

それは竜のブレスのごとく。

しかし威力や規模は激的に落ちる。口から出た焔の大きさはたかだか知れているが、倒せなくとも

もがき苦しめばチャンスはできる。


「っ――!?」


ニ槍を回転させ弾こうと防御する。回す槍の柄に命中して無傷で済むのだろうと思った。


「ぐっ!」


「効いている!」


火は収まり鬼人の手に火傷があった。


(よく分からねぇが、これは

チャンスだ。今なら――)


左手を向け放とうとするが読んでいたのか短剣が掌に突き刺される。次は左肩を短剣を投擲とうてきして当てる。力尽きた左。もう手は使えない。


「終わりだぁ転生者」


ゆっくり歩を進み槍を一つななめ上に構え突き刺さんと下ろす。目を閉じる颯牙は、ブサっと生々しい音を聞いた。

痛みがないのも疑問に思い目を開くとマリヤが立てかばってくれた。


「なに!?」


「・・・・・マリヤどうして」


「だ・・・って・・私が好きに・・・

なった・・・・人ですか・・・・・ら・・」


鬼人は、槍を抜き崩れ倒れるマリヤ。


「マリヤ・・・ありがとう」


「・・・・・クソっ!」


颯牙は不倶戴天の鬼人に一矢を報いようとブレスしようと顔を上げると鬼人はマリヤに悲痛そうな表情を向けていた。


(どうして苦しそうな顔をしているんだよ。お前は悪人だろ)


マリヤの死に悲しむ鬼人の男に相討ち覚悟しようかと思ったが

諦めた。せめて確認をしてから

決めてみよう。


「お前は、仲間の命を奪わなかったのか?」


「取るに足らないからなぁ。

それだけだ」


「・・・・・そうかよ。なら、せめて頼みを聞いてくれないか」


鬼人は、槍を刺そうと構えながらも動かない。聞くという意味だろうか。そうだとしたら

本当はヒドイ奴じゃないんだなぁ。と思う颯牙。


「墓を作ってほしい・・・俺とマリヤの同じ墓を・・・・・」


涙があふれてくる。こんな無残な最後になったことを。


「いいだろう。約束する」


「・・・ああ」


不倶戴天の敵に懇願した颯牙はきっと叶えてくれるだろうと思った。嘘ではないと。


(あの鬼人には許すつもりはないし恨みはあるけど、残すことになる仲間を助けてくれるはずだ)


颯牙は、マリヤを見る。手は動かず立てもしない。最後まで目を離さず見続ける。


「もし・・・もう一度だけ転生ができるならマリヤとまた会いたい。平和な世界で」


鬼人は槍を首の後ろのうなじを突き刺し絶命させる。颯牙はマリヤを最後まで目を離さず亡くなった。鬼人は膝を地面につけかがむ。颯牙の開いた目をそっと優しく閉じさせる。

鬼人はゆっくりと立ち上がる。


「もし転生するならこんな血腥ちなまぐさい世界じゃなく平和な世界で暮らせよ・・・・・

お前ら」


はなむけの言葉を送るのだった。

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