第24話 魔結晶の使い道
受付嬢のセレンスさんの案内に従って、冒険者ギルドの奥にある倉庫に入る。
倉庫には冒険者たちが持ち込んだ魔物の素材や希少な植物、ギルドで販売している道具や薬などの在庫品が積み上げられていた。
「フィナンシェさん、こちらが冒険者ギルドの倉庫となっております。フラン様からお伝えされているのは、倉庫の奥にある大量のクズ魔結晶を引き取って欲しいそうです。クズの魔結晶は金銭的価値も利用価値もなくて処分に困っているんですよね。下手に野外に放置すると動物が摂取して魔物に変化しますし」
「クズ魔結晶ですか。冒険者ギルドが買い取ってくれてるから、お金になるのかと思ってました」
「ある程度以上の大きさがあれば、錬金術師たちが魔力供給用に買い取ってくれるんですが……ゴブリンやスライムクラスの本当に小さな魔結晶だと買い手が付かないんですよ。内緒の話ですけどクズ魔結晶の買い取りは、街からの資金援助があるからやってるだけで……冒険者ギルドとしても倉庫を圧迫するこれの処分に頭を痛めているんです」
へぇ、知らなかった……。
クズ魔結晶の買い取りは、街が周辺の安全確保のため、治安対策費とかで行われているのかな。
でも、俺にとってはクズ魔結晶でも使い道はあるんで、引き取れるならいくらでも引き取りたい。
「では、俺たちがこのクズの魔結晶を全て引き取らさせてもらいます。もちろん、野外に放置することはせず、きちんと処理しますので安心してください」
「はぁ、きちんと処理ですか……。魔結晶の処理だと魔法の媒体にして中の魔力を使い果たすと、魔結晶ごと消えますけど……クズなんで本当に低レベルな生活魔法とかくらいしか発動しませんよ。それに膨大な数がありますし……本当に大丈夫です?」
そうなんだ……魔結晶って魔法の発動媒体になるんだ。
街の外に出る機会も少なかったし、魔法の素質もなかったから知らなかったなぁ。
でも、俺にとってはこのクズ魔結晶はスキル経験値の山なんだよよね。
「大丈夫です。魔結晶が危険物であることはこちらも重々に承知しておりますので、引き取り後は適正な処理をさせてもらいます」
と言っても、大半が俺のスキル経験値としてこの場で消えるとおもうけど。
「承知しました。ギルドマスターのフラン様からこの件は、フィナンシェさんたちに処理を一任すると言われてますが、くれぐれも取り扱いは厳重にお願いします。では、私は受付におりますので作業が終わりましたらお声かけください」
受付嬢は俺たちに一礼すると、来た道を戻っていった。
「さって、フィナンシェ君。クズ魔結晶が大量に手に入ったわね。全部吸収してスキルのLVアップさせちゃう?」
さっそく、ラディナさんが小さな魔結晶を解体していた。
───────────────────
>魔結晶の解体を検知しました。
>魔結晶を合成しますか?
>【リサイクル】スキルの経験値にしますか?
───────────────────
えっと、選択肢が増えてるな。
廃品合成のスキルが解放されたからってことか。
ちょっと気になるんで合成してみようっと。
>右手:魔結晶(超極小) 左手:魔結晶(超極小)
>廃品合成可能品がセットされました。
>この二つを廃品合成しますか?
了承を意識する。
―――――――――――
リサイクルスキル
LV:10
経験値:31/72
対象物:☆魔結晶(極小)
>魔結晶(極小):100%
―――――――――――
魔結晶は品質が表示されない仕様みたいだな……。
再構成っと。
廃品だった二つの魔結晶が一つにまとまり、先ほどよりも一回り大きくなった。
>魔結晶(極小)に再構成に成功しました。
>魔結晶(極小)
魔力蓄積量:10
資産価値:一〇〇〇ガルド
「あ、魔結晶も合成できるんだ。ちょっと大きくなったよね。もしかして、いっぱい合成すると大きくなるのかな」
「そうみたい。どれだけ大きくなるか試してみたいので、もっと解体してもらっていいですか?」
「うん、いっぱい解体するね」
ラディナさんが山となっている超極小の魔結晶を解体していってくれた。
もう一つ極小の魔結晶を作りだし、合成させると、ラディナさんにその極小の魔結晶を再度解体してもらった。
>右手:魔結晶(極小) 左手:魔結晶(極小)
>廃品合成可能品がセットされました。
>この二つを廃品合成しますか?
―――――――――――
リサイクルスキル
LV:10
経験値:32/72
対象物:☆魔結晶(小)
>魔結晶(小):100%
―――――――――――
やっぱ、大きさが変わるらしい。
まだ成功率も100%のままだしな。
再構成っと。
>魔結晶(小)に再構成に成功しました。
>魔結晶(小)
魔力蓄積量:100
資産価値:一万ガルド
「また、一回り大きくなった。これでクズ魔結晶四個分ってことよね?」
「ええ、これで一万ガルドくらいの価値みたいです。もう一個、おなじ魔結晶作って更に大きくできるか確かめてみよう」
「うん、そうね。どれだけ大きくできるか楽しみになってきた」
同じ工程で、魔結晶(小)を作り出すと、二つを解体してもらう。
>右手:魔結晶(小) 左手:魔結晶(小)
>廃品合成可能品がセットされました。
>この二つを廃品合成しますか?
了承っと。
―――――――――――
リサイクルスキル
LV:10
経験値:35/72
対象物:☆魔結晶(中)
>魔結晶(中):100%
―――――――――――
まだ大きくなるようだ。
再構成っと。
>魔結晶(中)に再構成に成功しました。
>魔結晶(中)
魔力蓄積量:1000
資産価値:一〇〇万ガルド
資産価値が一気に跳ね上がった……たかだかクズの魔結晶八個分だよ。
それが一〇〇万ガルドって……最近、お金の感覚がおかしくなってきてるかも。
「大きくなった! 握りこぶし大の魔結晶って結構珍しいものなんじゃない?」
「た、たぶん。これで一〇〇万ガルドの価値だって……」
「へぇー。やっぱ、フィナンシェ君の力はすごいわ……。ざっとみただけで数千個くらいの魔結晶は転がっているし、いっぱい作れそうね」
「ええ、次の大きさを試してみましょう」
同じ工程を続け、魔結晶(中)を再構成した。
けれど、次の大きさは魔結晶(大)であったが、☆☆ランクだったため再構成は断念するしかなかった。
「今の俺だと失敗なく再構成できるのは、魔結晶(中)までのようだね」
「だったら、その魔結晶(中)を吸収してみたら? いっぱい作れるし、フィナンシェ君のスキルLVを上げるのにも使ってみた方がいいかも」
「そうだね、やってみるよ」
ラディナさんができ上がった魔結晶(中)を解体してくれる。
───────────────────
>魔結晶の解体を検知しました。
>魔結晶を合成しますか?
>【リサイクル】スキルの経験値にしますか?
───────────────────
リサイクルスキルの経験値にすることを選択する。
すると、魔結晶からまぶしい光が溢れだしていった。
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>魔結晶(中)を経験値化します。
>経験値20ポイント取得します。
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解体された魔結晶が放っていた光が、俺の身体に取り込まれる。
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>経験値:39/72→59/72
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「20ポイント分の経験値が入ったみたい。元手がクズ魔結晶八個と考えたら、元よりももらえるポイントが増えてるみたいだ」
「スキル使用でも経験になるし、魔結晶は大きくした方がお得な感じなのね」
「ああ、そうだね。じゃあ、魔結晶(中)をいっぱい再構成して経験値とお金にしちゃった方がいいかも」
そろそろフィガロにしている借金の清算も考えないといけないしな。
魔結晶(中)を、冒険者ギルドにいくつか買い取ってもらって返済資金にしよっと。
きっとすごい冒険者のラビィさんからもらったと言っておけば、怪しまれないで済むよね。
「よぉーし、じゃあ頑張って解体しちゃうからねー。まずは超極小のやつを全部解体するわ」
「お願いします。俺は魔結晶(極小)をいっぱい作りますね」
腕まくりしたラディナさんが、解体した魔結晶(超極小)を廃品合成で魔結晶(極小)に再構成していった。
極小→小→中と再構成を続け、二四八〇個あった魔結晶(超極小)から魔結晶(中)は三一〇個ほど完成した。
再構成で得られた経験でスキルレベルは一気にLV23まで成長し、新たなスキルが解放されていた。
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>【リサイクル】スキルがLVアップしました。
>LV10→23
>解放:☆の成功率12%上昇
>解放:☆☆の成功率12%上昇
>解放:☆の合成付与が可能になりました
>解放:☆の合成レシピ解読が可能になりました
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スキルステータス
パッシブスキル:☆成功率上昇22% ☆☆成功率上昇12%
アクティブスキル:☆廃品合成 ☆装備強化 ☆合成付与 ☆合成レシピ解読
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LVアップの中で合成付与と合成レシピ解読という新たなスキルが解放されている。
まだ、試してないけど再構成品になんらかの効果を付けられる感じのスキルと、品物を作るためのレシピを解読するスキルかもしれない。
そして、三〇九個の魔結晶(中)は、フィガロへの借金清算と冒険者ギルドへの返礼品として九個だけ残し、一つは非常時用の資金として手元に残し、あと全部俺のスキル成長につぎ込むことにした。
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>【リサイクル】スキルがLVアップしました。
>LV23→31
>解放:☆の成功率8%上昇
>解放:☆☆の成功率8%上昇
>解放:☆の道具系成功率15%上昇
>解放:☆の武具系成功率15%上昇
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スキルステータス
パッシブスキル:☆成功率上昇30% ☆☆成功率上昇20% ☆道具系成功率上昇15% ☆武具系成功率上昇15%
アクティブスキル:☆廃品合成 ☆装備強化 ☆合成付与 ☆合成レシピ解読
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さすがにLV30台に入ってくると、LVの上昇も難しくなってくるなぁ。
解放されたスキルは☆の道具や武具を作る際、成功率が加算されるスキルってところか。
「ふぅ、なんかすごくLVアップしたよ。色々とできるようになったけど」
「すごい数の再構成と、魔結晶の取り込みしたからフィナンシェ君の身体が心配だけど大丈夫?」
俺の頬に両手を当てて、心配そうな顔をしてラディナさんが覗き込んできた。
ラディナさんも俺と同じ数の解体をしているし、むしろラディナさんの方が疲れてないかな。
ずっと集中して魔結晶づくりしていたし、多分時間的にもうお昼も越えてるよね。
「俺は全然大丈夫です。それよりも、お昼も取らずに働かさせてごめんなさい。倉庫も片付いたしご飯にしましょう」
「そういえば、お昼も食べずにやってたわね。冒険者ギルドってご飯とか出してる?」
「軽い食事と飲み物なら出してくれてるはずです」
「もう、お昼って時間でもないし、軽い食事を取って夕食までもたすってのでどうかしら」
ラディナさんがそう提案すると、ラクサ村の子たちが顔を輝かせていた。
「あたし、甘い物食べたーい」
「……わたしも」
「甘い物は疲れを癒す特効薬」
「フィナンシェ君、ごちになります」
「分かりました。じゃあ、整理の完了報告がてら、ギルドの休憩室でおやつの時間にしましょう」
「「「「やったー!」」」
整理を終えた冒険者ギルドの倉庫を後にすると、整理が終わったことを告げに受付の方へ戻ることにした。
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