第7話 お金を稼ぐ冴えた方法


 ラディナさんの村の女の子たちにも手伝ってもらい、集め終えた物を一カ所にまとめた。


 オークが率いたゴブリンたちの集団は村を襲って色々と物資を奪っていた。


 なので、それらもありがたく頂戴し、彼女たちの定住してもらうための資金とさせてもらうことにした。


「結構、貯め込んどったなー。所詮オークやろって、たかをくくってたけど、まぁまぁなもんもあるやんけー。こっちのはアカンなー。売り物にならへんわ」


 ラビィさんが集めた物資の中からそのまま売れる物を選別している。


 冒険者としての生活が長いため、売れる物の見極めは得意だと豪語していた。


 そして、俺たちが解体するのは売り物にならないとラビィさんが判定した物だ。


 それらを解体再構成して、新品同然にすることにした。


「じゃあ、それは俺たちが新しく作り直しますよ。ラディナさんよろしく」


 俺はラビィさんが売れないと判断した品物から、まずは武器を選び出してラディナさんに手渡す。


「任せて」


 ラディナさんが次々に武器を廃品に解体していく。


 そして、俺はそれを普通品質の武器に再構成していった。


 しばらく解体をしていると、突然、頭の中に声が響いた。


 ────────────────────

 >【リサイクル】スキルがLVアップしました。

 >LV1→2

 >解放:☆の成功率1%上昇

────────────────────


 スキルステータス


 パッシブスキル:☆成功率上昇1%上昇


 アクティブスキル:なし


 ――――――――――――――――――――


 リサイクルスキルにLV表示はあったけど、もしかして再構成回数でLVアップとかするのかな。


 新たに廃品を手にすると、スキルを発動させる。


―――――――――――

 リサイクルスキル

  LV:2 

  経験値:0/18

  対象物:☆鉄の剣(廃品)


 >鉄の剣(普通):91%

 >鉄の剣(中品質):71%

 >鉄の剣(高品質):51%

 >鉄の剣(最高品質):21%

 >鉄の剣(伝説品質):11%

―――――――――――


 よく見ると、LV2に変化し、成功率が1%上昇していた。


 やはり、再構成数によってLVが上がったようだ。


 これなら、再構成しまくってLVをあげれば中品質や高品質の物も安定的に作り出せるようになる。


「ラディナさん、ラビィさん、どうやら俺のスキルのLVが上がったみたい……おかげで成功率が少し上がった」


「ス、スキルって成長するの? そんなの初めて聞いたよ、フィナンシェ君」


「お前、マジかー。成功率上がるってーことは、LVアップするほどいいもんが再構成できるようになるって話しやんけー! これは儲けの匂いがプンプンするでー! ほら、バンバン『リサイクル』せんかいっ!」


「そっか、じゃあもっといっぱいあたしが解体して、フィナンシェ君のスキルを成長させないとね。あたしのスキルが開墾以外に役に立つ日が来るなんて……夢みたい」


 ラビィさんにスキルの成長を勧められたことで、ラディナさんもどんどんと商品価値のない物を解体するスピードを上げた。


 俺は次々に売り物にならない武器や防具を再構成していった。


 そして、売り物にならない武器防具を再構成し終えると、俺のリサイクルスキルはLV4まで上昇していた。


 ただ、失敗時は経験値上昇とならないことも判明している。


 あと、再構成中に気付いたのだが、☆のマークはレア度らしく、珍しいものほど☆の数が増え、普通品質での成功率も下がる傾向にあるようだ。


 現状だとレア度☆☆の普通品質の成功率は五〇%しかない。


 もっと解体してLV上げをしていかないといけなかった。


 そして、最後の廃品を再構成し終えると同時にラビィさんが口を開いた。


「フィナンシェのスキルで査定された資産価値でざっと計算したところ、今預かったもん売って、ワイの取り分引くと二〇万ガルドくらいやな。売る方は大冒険者のワイがキッチリと売り捌いたるで、任せとけ」


「目標額の一割以下か……何か簡単に見つけられて高く売れる物ないかな……」


 オークの率いていた集団から奪った物資を売り捌いても目標額の一割に達しないことで、俺は他に再構成できる物がないか考えていた。


 すると、解体を終えたあと姿が見えなくなっていたラディナさんが背中を突いてきた。


「フィナンシェ君、薬草とか毒消し草とかどう?」


「あぁ、草か! なるほど、それなら……」


「これならそこら中に生えてるし、失敗しても元手はほぼかからないしね」


「確かに、薬草とか毒消し草はこの辺りにいっぱい自生していたはずだ」


「村の子たちも自分たちが協力できることはしたいと言ってくれて、薬草や毒消し草を採取してくれたし」


 ラディナさんは村の女の子たちと、この辺りに自生している薬草や毒消し草などの薬効成分のある植物を採取していたようだ。


「狂暴女! たまには頭を使ったようなやな!」


「うるさいわよ、口悪兎!」


「薬効植物は高く売れるでー! 品質の良さで数倍から数十倍に値段が跳ね上がるからな! ええとこ、目付けた!」


 ラビィさんがラディナの集めてきた薬草類を品定めしていた。


 冒険者ギルドの出す薬草採取クエストでも扱われるから、そんなに高い値段が付くわけじゃないけどな……。


 ギルドの買い取りは、一つ五〇ガルドだった気がする。


 街の清掃活動とともに、薬草類の採取も生活困窮者救済クエストに入っていた。


「でも、これそんなに稼げないんじゃ……」 


「馬鹿たっれ! これだけぎょうさんあるなら、失敗してもええから伝説品質を狙ったれ! ワイが他の街の薬屋で見た伝説級の薬草とかだと一つ二〇万ガルドはしとったぞ。品薄な時なら五〇万ガルドまで値上がりしとったこともある! 一〇〇個に一個でもお釣りがくるでー!」


 ああ、なるほど品質を上げて儲けるのか。


 手ごろに手に入るから挑戦数を増やして、伝説品質の13%を引き当てた方が効率がいいってことか。


 ラディナさんと村の女の子たちが集めてくれた薬草と毒消し草は数百個ある。


 一つ五〇ガルドを狙うより、一つ二〇万ガルドを狙った方が目標額を稼ぐのには時間がかからないな。


「わ、分かりました! じゃあ、薬草と毒消し草は伝説品質にガンガン挑みます!」


「よーし、村の子たちには休憩後にまた採取に行ってもらうわ。そして、あたしはフィナンシェ君のためにいっぱい解体するからねっ!」


「あ、ありがとうございます! 頑張りましょう、ラディナさん!」


 俺はラディナさんが解体した薬草を手にしてスキルを発動させる。


ー――――――――――

 リサイクルスキル

  LV:4

  経験値:2/30

  対象物:☆薬草(分解品)


 >薬草(普通):93%

 >薬草(中品質):73%

 >薬草(高品質):53%

 >薬草(最高品質):23%

 >薬草(伝説品質):13%

―――――――――――


 伝説品質は13%に過ぎないが、成功すれば通常の薬草の四千倍近い売値になる。


 今は緊急で金が要るので、成功率よりも高く売れる高品質の物に挑戦することにした。


 それから、俺はラディナさんの村の子たちが採取して集めてくれた薬草や毒消し草を使い、伝説品質に挑み続けていく。


 結果、薬草四〇個から伝説品質五個、毒消し草五〇個から七個の伝説品質を入手にするのに成功した。


 薬草と毒消し草の解体再構成を終えると辺りには日暮れが迫っていた。


「お疲れさんやでー。フィナンシェ、お前の力は大したもんや! なんせ、タダ同然の物から高品質な薬効植物を作り出せるやからなぁ! マジ、尊敬するわー」


 俺が再構成した品物を見てニンマリしているラビィさんが軽く肩を叩いてきた。


 Sランク冒険者のラビィさんに褒められて、悪い気はしない。


 それに、これがきちんと売り捌ければ、ラディナさんと村の人たちの生活も成り立たせることができるだろうし。


 肩を叩いてきたラビィさんは、自分の利益が確実に出ることが分かり、よほど嬉しいのか長い耳がせわしなく動いていた。


「ラビィさん、それだけあれば二五〇万ガルドにはなりますよね?」


「おぅ! 任せとけ! ワイの取り分引いて最低でも三〇〇万ガルドの利益は出したるわ!」


「ほ、ほんとですか!」


「おぅ、この大冒険者のエルンハルト・デルモンテ・ラバンダピノ・エクスポート・バンビーノ・フォン・ラビィに二言ない!」


「ラディナさん、どうにかみんなの生活を再建させてあげられそうです」


 隣で俺に腕を絡めていたラディナさんに目標額に達したことを伝えた。


「フィナンシェ君、本当にありがとう。見ず知らずのあたしたちのために頑張ってくれて……本当にありがとうね。この恩はあたしが全部返すから」


 そう言ったラディナさんが俺の手に胸を押し付けてくる。


 キスもされちゃったし、運命の人とかも言われちゃったし、やっぱこれってそういう意味だよね。


 ラ、ラディナさんと恋人同士か……。


 チラリとラディナさんに視線を向けると、彼女がニコリと笑ってくれた。


 か、可愛すぎる……。


 年上の綺麗なお姉さんが恋人とか、最高すぎでしょ!


「そ、そんな気にしなくていいですよ。当然のことをしたまでですし、ラディナさんが居たから俺のスキルも発動したわけですし……」


 そう言った俺の手を、ラディナさんがギュッと握ると目の前に出てくる。


「あ、あのね、あたしの話を笑わないで聞いてくれる?」


「ど、どうしたんですか? 改まって急に……俺はラディナさんの話を笑うなんてことしませんよ」


 俺の言葉にラディナさんはポッと頬を赤く染める。


 綺麗なお姉さんだと思っているが、照れている姿は可愛らしく感じてしまう。


「解体スキル持ちの呪われ子のあたしと、フィナンシェ君が出会ったのは神様が決めた運命だと思うん……だ」


 心なしか漆黒の瞳が潤んでいるようにも見えた。


「え、ええ。俺はラディナさんが居ないと役に立てませんし……」


「あ、あたし! 今までこのスキルせいで人に触れるのが怖かったんだけど、フィナンシェ君なら触れても消えることないし……そ、それに顔も性格も……あたしの……その……」


 ラディナさんの声が小さくなって聞き取れないでいた。


「え? なんです?」


「だ、だからぁっ! 好きになっていいですかって聞きたいのー!」


 突然、告白をしたラディナさんが俺を抱きしめていた。


 そして突如、俺の視界はラディナさんの胸に埋もれることになった。


 顔一面が柔らかい感触に包まれ、彼女の甘い体臭が鼻の奥にまで浸透する。


 あ、これダメなやつだ……俺はラディナさんにメロメロになるやつだろ……コレ。


 街ではみんなから『ゴミ拾い』のフィナンシェと言われて馬鹿にされた俺に、『好きになっていいですか』って聞いてくれる美女がいるなんて……。


 これって白昼夢ってやつかな……。


 心地よい感触とラディナさんの告白で俺は完全に舞い上がってしまった。


「あ、あの。俺で良ければ……ラディナさんの彼氏に立候補していいですか?」


「フィナンシェ君……ほんとにほんと?」


「ええ、是非立候補させてください!」


「んー、もうっ! フィナンシェ君、好きぃいいっ! 可愛すぎるぅ~~!」


 ラディナさんの胸が一段と俺の顔を圧迫してきた。


「あー、二人ともいちゃついてるとこ悪いんやけど、ワイらは日暮れ前に街に行きたいから荷物持ってくれるかぁー」


 背後でラビィさんから冷やかしの声が掛かった。


「ブハッ! べ、別にイチャついてなんてないよ! ラディナさん、行こうか!」


「うん、一生ついて行くからね! フィナンシェ君」


 えっと、それって……。


 つまり、彼氏だけじゃなくって結婚も視野にという意味です?


 マジかぁーーーーーー!!


 俺はボッと熱くなった自分の顔をラディナさんに見られないように荷物を背負う。


 そして、みんなを先導して街へ向かうことにした。

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