異世界でも救いは妹だけなんだよ! 〜無能で変な仲間達と共にオレは魔王を……〜
まい猫/白石 月
プロローグ
プロローグ 召喚!
「おはようございます!」
普段聞き慣れているような女の子の声がする。
「お兄ちゃん、遅刻するよ?」
妹のサエだな……。今日も懲りずに起こしに来たのか。
鈴木平賀(すずきひらが)は布団の中でゴソゴソと体を動かすが、布団から出てくる様子はない。
なにせ出ようとも思っていないのだから。
「──明日は学校行くからさ……今は、もうちょっとだけ……」
「もう、その
オレ、鈴木平賀は現在、本当なら高校生である。
だがオレは今、学校生活で植え付けられた色々なトラウマにより引きこもり生活真っ只中なのだ。
「本当に、本当に明日は行くからさ……」
そう言ってオレは妹の鈴木サエを見つめる。それを見たサエは
「その台詞は今日で八回目ですよ! お兄ちゃんは簡単に嘘をつくような人間じゃなかったはずですよ」
オレはここ一年、高校の宿に通っていたので妹のサエと会う機会がなかった。
オレは一年ぶりに我が家に帰ってきたのだ。
だがオレの妹は、日々オレの引きこもり生活を邪魔する。
だがオレの妹はオレに対して非常に甘い。
もうこのやり取りが八回も繰り返されるくらいにも。
「オレだって色々とあったんだよ。それにサエと会うのは一年ぶりなんだ。少しは変わってるさ」
「変わりすぎですよ! 今だって、なんでパンツ姿で寝ちゃってるんですか! 一年前はもっと──」
サエは顔を赤くしてオレの完全に堕落(だらく)した姿を指摘する。
だが仕方ないだろ? これがオレの引きこもり生活の理想形なんだから。
ただし変態という意味ではないぞ。
「わかった。わかったよ。履けばいいんだろう?」
そう言ってオレはベッドから起き上がり、着替えをタンスから取り出してジャージを履く。
「──ほら履いたぞ、これでもう文句はないだろ?」
そう言うと、オレはサエに右手でグッドサインをする。
「いや、上も着てくださいよ!」
──次の日。
絶対に学校行きたくない。
でもこれ以上サエにまた明日と嘘をつくのは気が引ける。
オレはどうすればいいんだよ……。
ん、まてよ、我ながらいい事を思いついたぞ。
……よし、今日は学校行くふうに外に出て、どこかで時間を潰そう!
「──お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
サエの声が聞こえるな。よし、そろそろ起きるか。
「──おはよう、サエ。今日は学校行くことにするよ!」
と言ってオレはベッドから飛び起きた。
──って、あれ? ここ何処?
そのときオレは知らない空間にいた。
周りを見渡すと、黒い世界。白い柱が十二本立っているだけの謎の建物(?)の中。
そしてオレの
「お兄ぢゃん、学校どころじゃないでずよぉ!」
「サ、サエ? いったいどうしたんだ? てかここ
聞いた瞬間、オレの視界は光に包まれる。
「──なんだなんだ、どうなってんだ」
そして何もなかった場所に突然と椅子に座った美少女が現れる。
長すぎる後ろ髪は地べたに着くかどうかのギリギリだ。
オレはその女性の美しさに一瞬見とれてしまっていた。
だが一瞬というのは本当に一瞬だった。
なぜなら……。
「私は女神コスプーレ。あなた達は死んだのです」
と、言い出す変人が、両手を合わせて握り、目を瞑りながら出てきたのだ。
「コスプレ? 何のコスプレなんだそれ? てかお前誰だ? どっから湧いてきた?」
オレは目の前に現れた自称女神の少女に一気に質問をぶつける。
「コスプーレ! 今、自己紹介したでしょ! それに私は女神よ! もうちょっと敬いなさいよね!」
こいつは本当に何を言ってるんだろう。
「あなた達は数少ない転生者に選ばれたの、だからここにいるのよ。日本人なら分かるわよね? 異世界召喚よ!」
えっ? 異世界召喚? オレが?
確かに異世界に逃げたいとかは夢見ていたことだが、オレが異世界に……。
……あれ? 学校行かなくていいんじゃね?
「──ありがとうございます。女神様!」
「うわっ。何この人、異世界召喚って言っただけで態度が変わったわ」
「どこに召喚するんですか? できれば学校がない所にしてほしいですー」
オレは手をコネコネしてゴマをするように女神様に自分の意見を述べる。
「お兄ちゃん、私は嫌ですよ……。学校行きたいですよ……」
「残念だけど、あなた達がショック死した瞬間から召喚先は決まっているのよ」
……ん?
「えっ? ショック死?」
「そうよ、あなたは焼け焦げた家の中、怖い夢を見て死んだのよ。そしてサエさんは焼け焦げたあなたの身体を見てショック死したのよ」
オレ死んだの? 確かにアニメなどで異世界に行く方法にそんなのはよくあるが……。
てか死因が夢ってどういうことだよ、なんの冗談だよ。
今のが本当なら、オレはサエにとんでもないトラウマを植え付けたんじゃないだろうか。
「ごめんなサエ……オレのせいで……」
「いいえ、火を消し忘れた私のせいですから……」
……ん?
火を消し忘れた? 今考えてみるとオレはショック死しなくても、焼け死んでた事になるんじゃないだろうか。
だったら……。
「──だったら、責任を取ってもらおうか!?」
「「え!?」」
オレの態度の変わりようにサエは驚く。そして女神様までもが驚く。
「そうだな……一つだけオレの願いをどんなことでも叶える、これでどうだ?」
「どんなことでも、ですか……?」
この提案を聞いたサエは、オレから一歩後ずさりして胸を抑えて白い目でオレの目を見る。
「おい待て! オレをなんだと思ってる! そんなことはしないぞ!」
「ならどんなことを──」
と言い合いしている時、女神コスプーレはその言葉を遮り、時間だと言う。
その瞬間オレの上に魔法陣が現れる。
そしてオレとサエは魔法陣に引き込まれていく。
そして意識が薄れていく。
「──ッ!? 待って! オレまだ異世界行く時のチート特典貰ってな──」
この時スズキヒラガとサエの意識はなくなった。
その時のオレは無能でアホすぎる仲間達と冒険することになることは、まだ知る由もない。
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