第246話 追撃


メアリーは先行するスケさん、カクさんを猛スピードで追従する。

爆心地の上空辺りでスケさん、カクさんは待機していた。

森の木々はへし折れ地面には巨大な穴が空いており木が燃えた臭いが充満し辺りは煙に包まれていた。


「おいおい、すごい破壊力の魔法だな」


「相当強力な魔法を使えるということか。カクタス! お前、トロイから気をつけろよ」


「うるせー! 俺はお前みたいにモヤシじゃねーよ」


と二人が相変わらず仲良くやっているところにメアリーが追いつくと


「すごい威力ね!

 ヘルフレイムと言うよりバースト系の爆発魔法ね。

 こんなの直撃したら、あの子たちじゃひとたまりもないわね。

 グロリアも自分の得意の魔法を使われるとは思ってもいなかったのでしょうね」


メアリーはグロリア自身が放ったフレアバーストによって返り討ちにされた事を。


「おメア、どうする?手分けして探すか?」


「そうね。スケさんは南側を探して、カクさんは北を!

 私はこのまま真っ直ぐ東へ向かいます。

 ソアラをよろしくお願いします」


と言うとメアリーは猛スピードで木々のすぐ上を飛んでいった。


その様を見たカクさんは


「おメアのヤツ、慌てているな~」


「そりゃ、そうだろう。おメアにとってみれば自分より年したのサキュバスはみんな妹か子供みたいな者だからな。

 しかも相手が魔族の血を使っているヤツとなれば・・・・

 ブラッド・ライトニングの再現になるかもしれないからな!」

とスケさんは数百年前の事件を思い出しながら言った。


「あれは酷い事件だったからな。魔王勇者のせいでサキュバスは一気に減ったからな。

 おメアとしても、昔の記憶が蘇ってくることだろう」


「ソアラちゃんの発見、奪還が最優先課題だが、奴らも始末しておきたいな。心して掛かれよ、カクタス!」


「あぁ! また、お譲の手を煩わせる訳にはいかねーからな!! いくぞ! スケルシャール!」


「おお!!」


と言うと二人は南北に分かれていった。







メアリーは全速で東へ飛ぶと木々の間から砂煙が上がるのを発見した。

注意深く見ると、この世界では見たことの無い鉄製の馬車を見つけた。

その馬車は馬が引くことなく自力で走っていた。


「これは!?」


メアリーは、かつて博士がハルフェルナに持ってきた図鑑の中に、あのような形をした馬車があったのを思い出した。


「あれだな! ファイヤーボール!!」


装甲車を見つけると魔法を唱えた。


火の玉が装甲車に命中するが何事も無かったように走り続ける。

命中したのが分かると装甲車は速度を上げた。


「ファイヤーボール! ファイアーボール!!」


矢継ぎ早に魔法を唱えるが装甲車に当たる事はなかった。

なおもムキになりメアリーは装甲車へ向け魔法を放つが命中する事はなかった。


「邪魔な木ね!」


実を言うとメアリーは魔法があまり得意ではなかった。

本来サキュバスは魔法と直接攻撃、両方を使える種族であった。

よく言えば『器用』

悪く言えば『どっちつかず』

早い話、器用貧乏なのだ。

その中でメアリーは肉弾戦を超得意としている極めて稀なサキュバスだったのだ。

『魔王』と呼ばれるだけあってヘルフレイムのような極大魔法を唱える事は出来るのだが、細かいコントロールや精度を必要とするものは誰かさんと同じく苦手だった。

基本、雑な性格なのだ。


「こういうのはグロリアの得意分野なのよね~

 あの子は几帳面な性格だから狙いもキチッとしているのよね~」」

とぼやきながら、どうした物かと思案する。

グロリアも肉弾戦もある程度こなせるがメアリーとは正反対に魔法に特化したサキュバスであった。

雑ななメアリーを几帳面なグロリアが補佐しているのでサキュバス族は離反や反乱など無く一枚岩でまとまっている。


メアリーは高度を下げ装甲車の真上を飛び近距離からファイヤーボールを当てる。

一瞬だけ燃え上がるが装甲車は止まることなく走り続けた。

そして装甲車は魔法障壁を張った。


「チッ! 生意気ね!」

と舌打ちをし考える。


(そういえば博士が言っていたわね。

 博士達の世界の物は精密機械が多く電気に弱いって!!)

走る装甲車の上に止まると虚空庫から剣を取り出した。


ガシュ!

グサ!


装甲車の天井目掛け、剣を突き刺す。

剣は魔法障壁が張ってある天井を難なく貫き、車内に剣先が飛び出る。


「ウワーーー! アオ君! 剣が突き刺さったよ!!」

少女の声が聞こえる。

この声は緑髪の少女のものだろう。


(当たりね! この車が正解ね)


剣を通して車内に電撃の魔法を繰り出そうとした瞬間、車は左に急ハンドルを切った。


「あぅ!」

ゴロゴロ!


車の天井から振り落とされ地面を数回転がった。


しまった!!

このままでは逃げられてしまう!


虚空庫からローズウイップを取り出し剣に目掛け絡ませる。


「サンダーライトニング!」


ローズウイップを通し装甲車へ電気を流した。


「「「うわーーーー」」」


車内から声が聞こえる。

ソアラが車内にいることも考え、あまり強力な電気を流すと危険なので加減はしておいた。

効果が有ったようで車の速度がゆっくり落ちてゆく。


メアリーが警戒しながらゆっくりと装甲車に近づくと上部のハッチが開き少女というには幼い子供が飛び出し空に舞った。



「お返しじゃ! サンダーブレード!」

空に舞った少女はメアリー目掛け魔法を撃つ。


「妾が次期バンパイアの女王ミリア・アルカートと知っていての狼藉か!!」


(ミリア・アルカート!! なぜ、次期バンパイアの女王がここにいる!!

 なぜ、行動を共にしている!!)


「ミリア・アルカート! なぜ、お前のような高貴な者が、そのような下賎な者と行動を共にしている!!」


「血を分けてもらう契約を交わしたのでな!」


(!! バンパイアを配下に!! マズイ! アルカート家といえば真祖のバンパイアではないか!)


装甲車からもう一人小さい男の子が降りてきた。


「お兄ちゃん、本気出して攻撃してもいいよね!」


「あぁ、いいぞ!!」


この声は、ハーレム小僧!!

やはり乗っていたのね!


小さい少年は装甲車から出ると体の回りに青い煙を纏い変化した。


「龍!!」


メアリーは思わず声に出してしまった。

なぜ、龍までも使役しているのだ!!

どこに龍がいたのだ!

すべての龍は龍王の下にいるはず!!

いや、数匹、野良がいると龍王が言っていたが・・・・・

マズイ!バンパイアや龍までも配下にくわえているとなると・・・・・

これ以上放置しておくと、ハーレム小僧の勢力が増す。

メアリーは事の重大さに思い知る。



バシューーン!

龍が雷のブレスを吐く。

ギリギリでかわす。

避けたところをミリアが魔法で狙い撃ちする。

ミリアと龍之介は魔法とブレスで次々メアリーに仕掛ける。

すべてをかわすメアリーだったが、一切の反撃が出来ずに完全に押されている。

反撃できないのではなく、かわす先を狙って魔法とブレスを打ち込んでいるのだった。


(ジリ貧ね)


メアリーは援護を求めるために上空に巨大なファイヤーボールを打ち上げた。

スケさん、カクさん、早く来て。と心の中でつぶやいた。

そのとき、装甲車の上にハーレム小僧が出てきて中から幼女と緑の髪の少女を引き上げた。


「ハーレム小僧!! ソアラはどうした!!

 お前の下僕にしたのじゃないだろうな!

 もし、そんなことをしたらお前を殺す! 絶対に殺す!!」


ハーレム小僧は仲間の緑髪の少女と幼女を装甲車から引き上げ、私の問いに答えた。


「デカ乳お化け! あの小娘はお前の仲間か!

 あの小娘なら将太が丁寧に回復魔法を掛けて逃がしてやったよ!

 感謝しろ!

 怪我が完治したわけじゃないから早く見つけてやれよ!」


「本当でしょうね!」


「俺は嫌がっている女の子を力ずくで、どうこうする趣味はねーよ!」

ハーレム小僧は私目掛け銃を構えた。


(近代兵器まで持っているのか。銃弾などどうにでもできるが・・・・・

 やはり、ソアラを探さなければ!

 後はスケさんカクさんに任しましょう)


メアリーは爆心地の方へ全速力で飛行して行った。

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