第245話 グロリアとメアリー


「みんな無事? シルビア、セリカ! ソアラ!」


シルビア、セリカが頭を左右に振りながら起き上がる。

当のグロリアは着ている扇情的な服は所々破け、腕や足から出血をしていた。

右手で左腕の負傷箇所を押さえ、出血している左足を庇うように立ち上がった


「グロリア様、私は大丈夫です」

「私も大丈夫です!」


「ソアラは? ソアラ! ソアラ!!」


碧たちを襲撃したグロリアは自分の放った魔法で吹きとき飛ばされた。

グロリアは自分の魔法で返り討ちにあった事を屈辱と思っていたがソアラの返事が無いことを知ると、そんな事はどうでもよくなっていた。


「ソアラ! ソアラ!!」


グロリアの絶叫にも似た叫びが辺りに響く。


セリカ、シルビアも同じように声を上げ叫ぶが返事は無かった。


「ソアラ、ソアラ!!」


グロリアは声を張り上げるが返事は返ってこなかった。


「直撃したわけではないからでソアラがやられるとは思わないけど・・・・・」


魔法を吸い込むマジックバッグなど聞いた事はない。

あのようなアイテムを持っている男は、益々怪しい。

メアリー様の言うとおり、アイツは間違いなく『黒』!

と思うが今のグロリアには、そんなことよりソアラが心配でならなかった。


「グロリア様! 酷い出血が!」

ボブカットのセリカが慌ててグロリアに近づき出血箇所にヒールを掛けた。


「グロリア様、大丈夫ですよ。ソアラはすばしっこいから直撃などしませんよ」

セミロングのシルビアが答える。



「私は大丈夫よ。それよりもソアラを一刻も早く探さなくては」


とグロリアは立ち上がろうとしたとき、ガクッと膝をついてしまった。


「グロリア様! まだ、完治していません!」

「グロリア様、無理をせずに! 私が探してきます」



そこへ高速で近づいてくる何者か来る。

その者は殺気を身に纏い只ならぬ気配を漂わせていた。


(さっきの奴らが来たのか!)


3人は気配を察すると各々の武器を手に持ち構えた。

茂みから女が一人飛び出て、3人と顔を合わせる。


!!???


と一瞬にして殺気は霧散した。



「あなたたち大丈夫? 魔法の爆発があったみたいだけど」


「「「メアリー様!!」」」


声の方を振り返るとメアリーがそこには立っていた。


「グロリア! 怪我は!」

メアリーは慌ててグロリアの元に駆け寄りヒールを掛けた。


「メアリー様、セリカに回復魔法を掛けてもらったので」


というと


「いいから」

回復が早くなるわけでもないのにヒールを掛けた。


「大きな爆発があったから駆け寄ったのだけど、いったいどうしたの?

 なぜ、こんなところにいるの?

 リーパスにいるのではなかったの?

 ソアラが見当たらないけど」


とグロリアに問うと。


「も、申し訳ありません。

 私の独断で、あのハーレム・パーティーを探しあてたのですが、返り討ちに合ってしまい・・・・

 ソアラが行方不明に・・・・・

 メアリー様、申し訳ございません」


グロリアはメアリーに深く頭を下げた。


「あなたたちは危険な事はしなくていいの! 

 そういうことは私がすることなの!

 グロリア、あなたのことだから私の事を考えて行動したと思うけど、あなたたちは諜報活動が主だった仕事。

 あんな危険なヤツの相手は私がするから!」


「ですが、メアリー様お一人を危険な目に遭わせる訳にはいきません!」


「いけません! あなたたちはリーパスへ戻りなさい。

 ハーレム・パーティーはご隠居様と私たちで始末します!」


「ですが、ソアラが・・・・・」


「ソアラも私が探しておきます!

 グロリア! あなたはサキュバス族の要なのですよ!

 私に何かあったとき、あなたが一族を率いていくのです!!」


「危険です!女王であるメアリー様こそが後方に控えるべきです!」


「だから、ご隠居様やスケさん、カクさんと一緒に行動しているのですよ。

 あの方たちと一緒なら滅多な事には遭いませんから」


グロリアを始め多くのサキュバス族はメアリーが桜城から外の世界へ出るのを反対していた。

グロリアが折れたのもあの3人が護衛に付いているからであった。

スケさん、カクさんを魔族的に信用しているわけではなかったがボディーガードとしての腕は信頼していた。


「オーーイ! おメア! 待てーー!」


おメアが来た方向から老人の声が聞こえ、その後を痩せた青年と太った青年が追ってやってきた。


「グロリア! シルビア、セリカもいるのか! こっちの方からすごい爆発があったが一体どうした?」

痩せた男が言う。


「グロリア! お前怪我してるじゃねーか!」

今度は太った男が声を掛ける。


グロリアは3人のほうを向き


「あのハーレム・パーティーにやられたの」


「なに!! あいつらに遭遇したのか!」

「お前ら弱えーんだから、力仕事は俺たちがやってやるよ!」



「ソアラが捕らわれたかもしれないの」


「「なに! あのソアラちゃんがか!!」」

スケさん、カクさんが声を合わせる。


「そういう事は早く言え! 行くぞ! カク!!」

「おう!!」


と言うと二人は爆心地の方へ向かって空を飛んでいった。


「グロリア! あなたはとにかくリーパスへ戻りなさい。

 あそこは我々の重要拠点の一つよ。

 リーパスには多くの情報が集まる町。

 あなたがリーパスにいるから私は安心して世界を回ることができるの」


グロリアの言葉にメアリーは頷いた。

それを確認するとメアリーも二人の後を追うように飛んでいった。


「じゃ、ワシも行くとしよう。

 グロリアたちもあまり無理をするでない。

 危険な事はワシらがやっておく」


「ご隠居様、メアリー様をお願いします」


とグロリアは深く頭を下げた。

シルビア、セリカもグロリアの後ろに立ち頭を深く下げるのであった。



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