第195話 4人旅ぱ~と2
ご隠居様たち4人はしばらくアルファンブラ商会が見えるオープンカフェで時間を潰した。
4人の中の若い男二人のうち一人、スケさんが町並みを見渡しながら言った。
「街の区画は規則正しく並び、清潔でリーパスは栄えてるな~
オリタリアは人間界で一番栄えている国なんだろうな」
「スケ!お前の部屋とは違って綺麗だな」
「あ~、うるせーぞ! カク!お前の部屋も変わらないだろ」
「あ~~あんたたちはすぐにケンカする!
やっぱり館は出入り禁止ね」
「いや・・・俺たちが悪かった」
「つまらんことでケンカした。すまん」
スケさん、カクさんが素直に詫びを入れた。
おメアにサキュバスの館の事を出されると、どうも分が悪い。
「リーパスの街並みは清潔で整っているのですけど、整備されすぎていて無機質に感じますわ。
やっぱり、私は自然と調和している本国の方が好きですわ」
と、おメアは目を瞑り彼女たちの本国の風光明媚な風景を想像した。
「お譲たちが持ち込んだテクノロジーってヤツ?
アレは凄いよな~
この世界では俺たちの国は格別に発展しているな~」
とスケさんも目を瞑り祖国を想像しているようだ。
そこへウェイトレスが少し泡立った黒色の飲み物を人数分、運んできた。
「そうそう、これこれ。
お譲がいなかったら、これにありつけなかったな」
飲み物ごときで『テクノロジー』というのは大袈裟なのだが魔族にとっては一大エポックメイキングな事件だった。
カクさんは泡の立つ黒い飲み物にストローを入れ、丸く太った大きな体を縮め、少しずつ少しずつチューチューとみみっちく音を立て啜った。
「お!これは本物の『ペカーラ』だ。さすがアルファンブラの地元だな」
「やーね、カクさん! 男らしくガバッと飲みなさいよ!
こういう風に!」
と言うとおメアはストローも挿さずにグラスを掴み一気飲みをして見せた。
「本物は違うわね~ ワイハルトなんか偽物しか置いてなかったから。
オリタリアはこれだけで文明国というのが分かるわ」
「カカカカ、おメアは豪快じゃの。妙齢な女子がそういう飲み方も考えものじゃがな」
「この飲み物は博士が発明したんだろ。たいしたものだ」
「違うわよカクさん。博士のいる世界では有名な飲み物らしいわよ
ただ博士の世界の方がもっと炭酸が強くて美味しいそうよ」
この黒い泡の立つ飲み物は、『ペカーラ』と呼ばれ、この世界では博士といわれる男が400年ほど前に作った『魔法の飲み物』といわれている。
魔族界で広まり、200年ほど前に人間界でも一気に広がった。
どの世界でも人気商品に付き物の偽物商品も数多く出回ってもいた。
人間界ではオリジナルの物はリピン王国で作られ、リピン王国の一大産業になっていると言われている。
が、実際はクリムゾン魔国との国境沿いに作られた精製所で作られた物をリピン王国が輸出しているに過ぎなかった。
「ハチベーが今度、オリジナルを持ってくると言っていたぞ! 楽しみだな、カクさん!」
「マジか! ハチベーも可愛いところあるな」
「あ~ら、ズルイ! 私にはそんなこと一言も言ってなかったわよ!」
「そりゃ、俺とカクさんで稽古つけてやってるし男同士、色々とあるからな」
とスケさんはニンマリと笑った。
「いやらしい顔して! 色々じゃなくエロエロと!でしょ!」
とおメアはスケさんに冷たい視線を浴びせた。
「最近、ハチベーはどうなのじゃ?強くなったのか?」
「はい、ご隠居。人間の中では上から数えた方が圧倒的に早いでしょう。
その辺の魔物の一山、二山、簡単に片付けるでしょうね」
「ほほーそうか、そうか。さすがスケさん、カクさんが鍛えただけの事はあるな。
出会った当初は丸っきり使い物にならんかったからの~」
とご隠居様は嬉しそうに頷いた。
「が、魔王レベルになると無理でしょうな~」
カクさんは顎に手をやり首を少し傾げながら言った。
「剣姫ちゃんはどう? あの子も一緒に修行しているでしょ」
おメアがスケさん、カクさんに尋ねる
「剣の腕は剣姫の方が圧倒的に上だな。元々のスペックが違うからな」
スケさんの言葉にカクさんは黙って頷く
「が、強さ・・・というより生存能力はハチベーの方が上だな。
回復魔法が使え、聖魔法も使えるからな・・・・・
そして何より」
「「狡賢い!」」
スケさんとカクさんが同じ事を同時に言う。
「あぁ~なるほど」
おメアはそれを聞いて妙に納得したようだった。
「カカカカ!ハチベーもやるようになったのう~
スケさん、カクさんにそう言わせるのだから、カカカカカカ!」
豪快に笑うご隠居様におメアは聞いた。
「あんなヘタレがよく毎回、こちらの世界にやってきますね~
ご隠居様は何か知っています?」
「なんでも『勇者』の職を調子にのって女子より先に獲ってしまったから強制的に連れてこられるらしいぞ」
「あ~~ら、姫ちゃんも情け容赦ないわね~ ハハハハハハ」
おメアは笑いながら答えた。
カクさんが空になったグラスの淵を指でチンチンと弾きながら
「博士もよく毎回こっちに来るよな~」
「そうそう、戦闘職でも無いのに・・・・いくら桜城が安全だといっても周りは亜人や魔族ばかりだぜ」
スケさんが答えると
「何でも博士は『ハルフェルナの発展に役立ちたい!』と言っていたぞ」
ご隠居様が答える。
「なるほど、そういう理由か」
「ふむふむ。歓心、歓心」
とスケさん、カクさんは頷きながら言うのであった。
「あ~~ら、3人とも鈍いですわね~
そんなの方便に決まっているじゃないですか~
博士は姫ちゃんが好きなのですよ!姫ちゃんが!」
「「「なに!!」」」
男たち3人が驚きの声を上げた。
「ほ、ほ、本当か! おメア!!」
ご隠居様は思わず大声を上げた。
スケさんとカクさんは二人して右手で頭を抱え首を振った。
二人とも内心『お譲だけは無い!』と一致していた。
「なぜ、そんな事が分かるのじゃ! おメアよ」
「だってそれは、みなさんよりヤングですしナウイですから」
「おメア、お前も3000歳に・・・・」
「何言っているのよスケさん、ピチピチ!」
「が、3000・・・・・」
カクさんも言おうとするとおメアは遮るように
「ピチピチ! ピチピチ!!」
と連呼した。
「恐ろしい!お譲を好きだとは・・・・・命が幾つあっても足りないぞ!」
「お譲だけは無いわ!」
「あ~ら、あなたたち生粋の『ドM』なんでしょ~ 姫ちゃんなら死ぬほど甚振ってくれるでしょ」
「あ~そうなんだよ。で、本当に死んでしまうくらいな!」
「俺とスケはご隠居に召喚されてすぐにお譲のアイアンクローを喰らって・・・・・
それ以降、お譲のアイアンクローのポーズがトラウマになっているんだよ」
とスケさん、カクさんの二人は一瞬顔を見合わせ頭を押さえた。
「俺は左の側頭部に指の跡が四つ右側頭部に一つ。
カクは逆に右に四つ、左に一つ指の跡が残っているんだよ!!」
「おメア!お前にはアイアンクローの恐怖が分からないから、そんな軽口を叩けるんだよ!」
とカクさんは両拳をテーブルに置き力説した。
「何を言っておる!スケさん!カクさん! たった五つくらいでガタガタ言うな!
ワシなんかくぼみが幾つあるか分からんぞ!!」
おメアはその話を聞いた瞬間、反射的に自分の巨大な双璧を抑えた。
「わ、わ、わ、私は胸にアイアンクローを喰らいましたよ!
それ以降、何だか胸が垂れたような気が・・・・・・」
「おメア! それは年齢からじゃねぇか?」
「カクさん!! サキュバスの館、出入り禁止!!」
「嘘です! お譲のアイアンクローのせいです」
とカクさんは姿勢を正した。
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