第179話 乱戦


フェネクシーが正座している二人の悪魔に近づき言う。


「この女子に変に逆らわん方がいいぞ。

 アイアンクローなら笑っていられるがタナの剣で斬られたら洒落にならんぞ。

 あと、こっちの女子にも口答えしない方が身の為だぞ」


と加奈を指す。


「え?こっちの女もですか?」

太った悪魔が聞く。


「色々うるさいのでな」


「ハゲ!! それはどういう意味だ!!」

と加奈が半分怒りながらフェネクシーに聞く。


「分かったじゃろ」


痩せた悪魔がブラドーとライキンを見ながら。


「成るほど。強欲の魔王と傲慢の魔王も従っているのか!」


と一人得心がいったようだ。




ゴーストとなった元ウオレル騎士たちが茜たちが一時撤退した後方まで迫ってくる。


「スケさん! カクさん!! ヤッておしまいなさい!!」


その言葉を聞いた織田はガクッとなり


「次はハチベーとヤシチか?」

と呟いた。


「ハチベーは織田! お前だからな!」

とツッコミを入れる千代だった。




フェネクシーが命令を出すと二匹の悪魔は翼を広げ空に舞い上がりゴーストに斬りかかると爪が当ったゴーストたちは霧散していった。

が、数があまりにも多い。

空はゴーストたちで埋め尽くされている。

ゴーストたちは空から魔法を撃ってくる。


魔法障壁を張りながら加奈が


「分が悪いわね。

 空からだと一方的に攻撃されるわね」



「加奈さん、私が浄化魔法を掛けます。

 レベルの高いゴーストがこれだけいると浄化して殲滅する事はで来ませんが飛べなくさせる事は出来ると思います。

 茜さま!私を上空に連れて行ってください」


「それは勿体ないです。

 アリア様の魔力は出来る限り無駄遣いしないほうがいいです。

 茜! 浄化魔法も持っているでしょ!?

 茜に空から浄化魔法を掛ける様にさせます。

 そういう大雑把な事は茜にやらせればいいんですよ。

 無駄に魔力だけはありますから。

 アリア様は回復と援護で魔法を使ってください」


「ねぇ~!加奈、それはけして誉めてないよね。

 私のこと『ガサツな女』って言っていることと同義語だよね」


「いいからさっさと行け!」


「はいはい」


と言って茜は近寄ってくるゴーストを嫌々ながらタナの剣で薙ぎ払い上空に上がる。

魔法を掛けるとき無防備になる茜をブラドーが甲斐甲斐しく護衛をする。

そして、辺り一面に浄化魔法を掛けた。


ゴーストは蚊や蝿が落下していくようにヒュルヒュルと回転しながら地上に落ちていった。

それでも100匹ほどは空中に浮いている。

元がウオレル騎士の中の精鋭の精鋭なのか浄化魔法で消滅する者はいなかった。


「おいカクさん!

 蚊トンボどもを皆殺しにするぞ!」


「誰がカクサンだ!誰が!!

 行くぞ! スケさん!!」


まだゴーストを滅したりないらしく2匹の悪魔はアリアに掛けてもらった聖魔法の威力を試したくてウズウズしているようだった。

近寄ってくるゴーストを片っ端から斬り裂くと霧散していった。


「手応えがねぇーな! カクさん!」


「だから誰がカクさんだ! スケさん!!

 あの聖女さんの聖魔法のほうが威力あったな~

 俺の女王様になってほしかったぜ」


2匹はよりテンションを上げ奇声を発しながらゴーストに斬りかかっていった。


「スケさん、カクさん。アリア様に魔法を掛けてもらってから変にテンションが上がっていない?」


と隣にいるブラドーの尋ねると


「聖女様の聖魔法が脳にでも回ったのでしょう。

 元々、あの二人は馬鹿ですからこれで少しはまともになってくれるとフェネクシーも楽になるのでしょうけどね」


「伯爵、酷い言い方ね~」


ブラドーは肩を竦めた。




その頃、地上ではアルファが先陣を切ってゴーストの中に飛び込んでいく。

千代と藤吉もそれに続きゴーストたちに斬りかかる。

3人は面白いようにゴーストを切り裂いていく。

が織田一人だけ戦いに参加しないでいた。


「織田、お前も行け!! 勇者だろ!」

加奈が織田に問うと。


「俺もお化けあんあまり好きじゃないんだよな~」


「いいから行け!!」


と加奈は織田の尻を蹴飛ばし前に行かせた。


織田は右手で剣を振りながら左手で封印を駆使してゴーストを消滅させる。


「織田君、凄~~い!

 あんな戦い方出切るなんて。

 さすが勇者ね」


その声を聞くと織田は一瞬、ビクンとなった。

顔には満面の微笑が浮かんでいた。


「詩織、もっと煽てなさい。

 何とかハサミは使いようよ!」


「ちょっと加奈ちゃん酷くない?」


「いいから!!」


一瞬躊躇する詩織であったが大きな声で


「織田く~~~ん、頑張って。

 凄いわ、素敵ーーー!!」


織田は一段と張り切り千代や藤吉との遅れを取り戻すように前へ前へと進んだ。


「男ってバカよね~~」


「加奈ちゃん、それはちょっと酷いかも・・・・」

と静かにツッコム詩織であった。




「おい、フェネクシー、何か武器持ってないか?

 ガキどもじゃ突破に時間が掛かりそうだ。

 一個俺によこせ!」


ライキンがフェネクシーに近寄り武器を催促する。

ライキンは今まで武具など使わず拳一つで相手を粉砕してきた。

 

「ならこれなんかどうじゃ?」


と言って虚空庫から悪魔たちの爪のように長い鉤爪を取り出した。


「おお、いいね~ 俺にピッタリじゃねーか!!

 そんないいものがあるなら、もっと早く俺によこせよ!

 聖女に魔法を掛けてもらって俺もゴーストをブッ飛ばしてくるぜ!」


と引っ手繰るようにフェネクシーから取り上げ早速手にセットするとアリアに聖魔法を掛けてもらった。


「じゃ、ちょっくら行ってくる!!」


ライキンは腕をブンブン振り回しゴーストのところへ突撃して行った。

その姿は新しいオモチャを手に入れた子供のそれと同じであった。


「男ってなんで、こんなに馬鹿なのかな~」

と顔を押さえながら思う加奈であった。




上空では2匹の悪魔がゴーストの掃討が終わろうとした頃!

巨大なファイヤーボールが2匹の悪魔へ目掛け飛んできた。


「スケさん、カクさん、危ない!!」


と2匹の悪魔に当る直前でタナの剣でファイヤーボールを斬り裂き消滅させた。


「おお! 女!助かった!」

「いい仕事だ! 女!!」


と2匹の悪魔が礼を述べる。


「女では無い!! 姫様だ!!」


ブラドーはどうも『姫様』を定着させたいようだ。


「「うるせー」」


2匹の悪魔とブラドーが口論しているとき、茜は魔法の飛んできた方向を見た。


リッチとなったアクアが手の平を上にしながら指をゆっくりと2回動かし挑発的に手招きをしている。

骸骨となったため皮膚はないのだが口元は口角を上げ、目は笑っているように茜は感じた。


「にゃにお~~~~!!」


カッとなりアクアの元へ全速力で飛びこみタナの剣を振るう。


「おっと、危ない!

 でも雑な剣技ね。

 そんな腕では私を斬れないわよ。

 お譲ちゃん、出直して来なさい。フフフフ」


挑発的に茜をからかい嘲笑うのであった。

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