第177話 ファントム・ゴースト



2匹の悪魔が言い争っている前方では。


茜とライキンがデッドナイトと戦っていた。


「しつこいわね~ さっさと往生しないさいよ!!

 そんなことじゃ女子に嫌われるわよ!!」

とタナの剣をブンブンと振り回しデッドナイトを斬り伏せるのであった。


デッドナイトたちは茜によって真っ二つにされて上半身だけの者が多かった。

それでも体を左右に振り反動で近づき上半身だけで剣を振り攻撃を仕掛けてくるのだが当るわけも無くライキンは情け容赦なく上から拳で殴りつける。

茜は躊躇したのか無視して正常な状態のデッドナイトを神剣・タナの剣で斬りつける。

ライキンは拳を上から叩き落し頭を潰し力ずくで下半身の無いデッドナイトたちを無力化させていったが。

流れ作業というには少々残酷な絵であった。


「チッ!面倒臭せーなー!!」


元アダマンタイト部隊の騎士だったと思われるデッドナイトを見つけると足を掴み振り回し近寄ってくるデットナイトを次々にブッ飛ばしていった。


「おお、こりゃいい。俺専用の武器だぜ!!」


「やーね。ライキンさん、ちょっとそれは野蛮すぎない?

 私でも引いちゃうわよ」



とライキンに茜がツッコムとアクアが言う。


「フ! ケダモノらしい下品な戦い方だな! ライキン!」


「ハン! 何言ってやがる! 戦いに上品も下品もあるか!

 これで終わりだアクア! 観念しろ!!」


とライキンはさっきまで振り回していたデッドナイトをアクアに投げつけた。

デットナイトとして生き返ったウオレルの騎士たちであったがほとんどの者が無力化されていた。



「ふふふふ、まだよ、まだよ。これで終わりではないわよ」

とアクアが笑うとまた両手を広げ天を仰ぎ呪文を唱えて。


「地に伏せし我が騎士たちよ!

 今一度、アクアが命令する!

 蘇れ我が騎士たちよ!!

 ファントム・ゴースト!!」


息絶えたデッドナイトたちから白い靄がフワと抜けるように浮かび上がった。

真っ二つになったいたはずのウオレル騎士たちも亡霊になると上半身と下半身が一つとなった。

どの元デッドナイトたちは歩くことなく浮いている。


「キャー――オバケ!! オバケ嫌い!!」


「あ、あ、茜! お前、何、こんなモノでビビってるんだ!」


「だって!だって! お化けだもん!! 怖いよ~~~~」


「お前、勇者だろ!!」


「ち、ち、違うよ、普通の女子高生だもん!!」


「なんだよ、女子高生って!!」


さっきまでの威勢はどこへ行ったのかタナの剣を目の前で両手で持ちながら内股でぶるぶると震えている。


霊の類にはライキンの剛力は一切効かず、殴っても素通りするだけだった。


「チッ! ゴーストには分が悪りいな!! ここは撤退するしか無いか。

 逃げるぞ! 茜!!」


腰砕けになっている茜を小脇に抱えフェネクシーたちの居る後方へ撤退を開始した。






その頃、さっきまで一方的な虐殺ショウを披露していた2匹のデビルロードたちも霊が相手だと攻撃も魔法も一切通じなかった。


「チキショー! ゴーストには致命的なダメージを与えられんな!」


「ケッ! 光魔法か浄化魔法じゃないとダメだな。こりゃ。

 引くぞカクタス!」


「おう」


デビルロードたちは息を合わせて撤退を開始した。

仲が良いのか悪いのかよく分からない2匹であったが戦いにおける機微はしっかりと理解していた。




一足先に後退してきた千代、織田らが加奈たちと合流した。


後方のフェネクシーたちもファントム・ゴーストの呪文をアクアが使ったのを察知していた。


「これは手ごわいぞ。小僧どもの剣ではダメージが通りにくくなるぞ。

 魔法使いよ、そちは『光魔法』は何かあるか?」


「私は使えません。ごめんなさい・・・・・・」

自分の無力を感じてしまう加奈であった。


「光魔法は特別な魔法じゃからな。

 勇者の小僧、お前なら使えるんじゃないのか?」


「お、俺ですか?」


といきなり振られすっとんきょに答えた。


「な、な、無いです。光魔法」


「つかえんのーーー そちは勇者じゃろうに」

フェネクシの表情は明らかにガッカリした表情になる。


「勇者にしか使えない『封印』は聖魔法の一種ですからデッドナイトにも有効だと思いますよ。

 私と詩織さんでみなさんの武器に聖魔法を掛けます。

 そうすればゴーストにも攻撃が通ります。

 詩織さん、行けますか?」


「はい。アリア様」


完全とはいえないが詩織もだいぶ体力は回復していた



「聖女よ、ワシのこれにも聖魔法を掛けてくれんかの~」


と木の杖をどこからとも無く取り出した。

その杖の形状は仙人が持っているような少し捩れ上方は大きなこぶ状になっていた。


「大魔王さん、そんな杖より前に使ったハンマーの方がいいんじゃない?」

加奈がフェネクシーに聞くと。


「何を失礼な!! 大魔王といえば木で作った杖に決まっているじゃろ!!」


「え?そうなんですか?」


「あんな重いハンマー、無駄に疲れるだけじゃ!」



・・・・・このおじいちゃん、どこまで怠慢な悪魔なのだろうか?

これじゃ悪魔が世界征服するのは夢のまた夢なのだろう。

と思う加奈であった。

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