第134話 ラスビア渓谷ぱーと2
「加奈ーーーー!!」
茜が叫ぶ。
10mを超える巨大ワニは加奈の足に噛み付いたまま川の中に潜った。
「この野郎!加奈を返せ!」
加奈は多量の水を飲み込んだせいか失神しているようだ。
「お前、ぶっ殺す!!」
茜が狂気の叫びを上げた瞬間、ラスビア渓谷の空気は凍りついた。
川の中に飛び込みワニを追う。
早くしなくては加奈が危ない。
茜は必死で泳ぎワニに追いつき、尻尾に取り付いた。
タナの剣を抜き、尻尾の付け根に剣を刺す。
そしてサブマシンガンを抜き銃口を背中に突きつけ数発撃つと炸裂してワニは暴れる。
あまりの激痛でワニは加奈を離した。
茜は加奈を水中で抱きかかえ急いで水面に上がり川岸にあがり急いでヒールを掛ける。
「ヒール! ヒール!! ヒール!!! ヒール!!」
何度も何度も何度も。
「加奈、加奈、加奈、加奈」
と悲鳴にも似た叫びを上げながらヒールをかけ続けた。
「呼吸していない。どうしよう」
「人工呼吸よ」
詩織も加奈のそばに来た。
茜はマウス ツー マウスで人工呼吸を始めた。
「ヒール、ヒール、ヒール」
詩織がヒールを唱える。
何度もヒールを掛けたからと言って回復するわけではないのを分かってはいるがヒールを掛け続けた。
「ゴボッ、ゴホンゴホン」
加奈が水を吐きだし意識を取り戻した。
川の水面が波打つ。
巨大ワニが獲物を取り戻そうと戻ってきた。
茜はすっと立ち上がり代わりに千代が加奈を支えた。
キレた茜はワニへ渾身のアッパーカットを繰り出した。
ワニは出てきた川の方へ仰向けになってぶっ飛び水面に着水した瞬間、尻尾を掴んだ。
「逃がさないわよ!!」
仰向けのまま陸地に引きずり出すと右へ左へ弧を描くように何度も何度も無言で地面へ叩きつけた。
瞳の中には狂気の炎が宿っている。
ドダン
ドダン
ドダン
と地鳴りと共にラスビア渓谷に音が響き渡る。
なおも、
ドダン グチャ
ドダン グチャ
ドダン グチャ
とワニが潰れていく音が加わる。
肉片は叩き付けられる度に飛び散っていく。
もうとっくにワニは絶命していると思われるが茜は止める事は無かった。
やがて、肉はすべて無くなり骨だけになっても止める事はなかった。
そして、骨も砕け散り尻尾だけになったとき茜はようやく止めた。
その尻尾を渓谷の外へ投げ捨てたとき、ようやく茜は我に返った。
「加奈・・・・・加奈、加奈は」
と言うと加奈の下へ走り出した。
「ゴホンゴホン。大丈夫よ、茜、ありがとう。みんなもありがとう」
加奈は完全に意識を取り戻していた。
「良かった~~」
と加奈に抱きつくと泣きだした。
「良かった。加奈、加奈、良かったよ」
「大丈夫よ、茜と詩織のヒールで傷も消えたから」
と言うと足を茜に見せた。
「どう? 綺麗な足でしょ」
「そうだな、加奈はモデルのような体型だから傷一つ残らなくて良かったな」
と千代がいう。
「良かったよ、加奈、加奈」
と茜はまだ泣きつくのであった。
「もう、大丈夫、 加奈加奈って煩いわよ。セミじゃあるまいし」
と笑う加奈だった。
アルファのお付の騎士とウインレルから派遣された道案内の騎士はあまりの茜の強さ・・・・・
いや、茜と言う人間に恐怖した。
10mを超える巨大な生物が目の前でおもちゃを破壊するかのごとく叩き付ける。
瞳には怒り狂った殺意を発しながらも無言で蹂躙していく。
ウインレルの騎士たちは今までの茜のメチャクチャ振りにも驚いたが今回は
この娘を敵に回してはいけない
けして怒らせてはいけない
と思うのであった。
この事は王やレイランの耳に入れておかなくてはいけない案件になった。
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