第75話 銀髪の男


「お遊びはその辺で止めていただこうか。異世界人!!」

銀髪のオールバックの男が冷たい口調で言い放った。


「何者だ!」

俺の部下たちが部屋の入り口方向へ一斉に向いて銃を構える。


「お前がダイワを廃墟にした張本人だな。

住民を虐殺、婦女子を暴行して何が楽しい!」


「ダイワは不要な町なので徹底的に破壊した。それだけだ」


「豚らしい言い草だな」


外にいる部隊はどうした?この男をみすみす入れたのか?それとも他に入り口があるのか?


「お前、どこから入ってきた!! 秘密の入り口でもあるのか!?」


「ダンジョンの入り口といったら一つしか無いだろう」


「上に俺の部隊がいたはずだが、どうやって入ってきた!」


「皆殺しにしてきたよ」


「ふざけるな!!銃を持った兵士200人いた筈だ!」


「豚が幾ら銃を持っても私に敵うはずは無いだろう」


「嘘をつくな!」


「嘘も何も事実だよ」

この男の言葉はどこまでも冷たい。

ロボットのような冷たさとは異なる異質な冷たさがある。


「我々は近代兵器を持っているんだぞ!」


「そこにあるマシンガンより遥かに性能が劣る物だ。そんな物が私に当たると思っているのか?」


「なら試してみよう! 全員一斉射撃!!」


ズダダダダーン

ダダダダダダーン

ズダンズダン


部屋の中に各種色々な銃声が響く。

銃口は銀髪の男に向けられ何百発、何千発と撃ち続けられた。

一斉に同じポイントに向かって討ち込まれた銃弾は白い煙となって目標物を隠した。


「打ち方、止め!」


徐々に煙が拡散していき目標物が見えてくる。

なんと、男は平然と立っており男の足元には銃弾の山があった。


「なんだと!!」

銃弾は男に届いていないのか。

魔法障壁か。


「手榴弾、グレネードを投げ込め!」

俺は兵士の後ろに下がった。


ポン ポン

ゴン

ゴゴン


壁みたいな物に当たる音がした。


ドカーン

チュドーン

ドーン


と、さっきより遥かに大きなの爆発音が部屋に響く。

さっきより白い煙、火薬の臭いが部屋を支配する。

そして、煙が晴れると男は平然と立っていた。


「貴様、何者だ!!」


「お前ごとき雑魚に名乗る名前は持ち合わせていない。

 死んでイズモニア国民に詫びろ!」


銀髪の男は虚空から銀色に輝くサーベルを取り出した。

かと思うと一瞬で最前列にいたコリレシア兵5人を次々に突き刺し命を奪った。

その様はまうように華麗に美しく。

次に左前方にいる兵士たちに斬りかかった。

サーベルを刀のように水平に振ると兵士たちの首がポロポロッと落ちた。


なんなんだ、コイツは。

これは危ない。逃げなくては。

俺はこんなところで死んで良い人間では無い。


「山中さま、速やかに撤退しましょう」


「分かった騎士殿、アイツは何者なんだ?」


「あの強さと魔力、魔王かと思います」


魔、魔、魔王!

あれが魔王なのか。

俺の俺のコリレシア兵が役に立たなかった。



「脱出する、撤退だ! 活路を開け!」


コリレシア兵が銀髪の男に一斉射撃を試みる。

その隙に俺は部屋の入り口を目指し走った。


「フッ!豚の親分は子豚を残して逃亡ですか。情けない異世界人だ」

肩をすくめ嘲笑うように言い放った。


許さん、許さんぞ。この俺様を嘲笑いやがって。

全軍連れてくるべきだった。

戦車部隊があれば、あの男などイチコロにしてやれたのに。クソー!


そうこうしているうちにコリレシア兵は一人一人確実に減ってゆく。


2階、1階と死に物狂いで走った。

後ろからはコリレシア兵士の最後の叫びが聞こえる。

太っている俺には厳しい。が、ここで諦めては確実にあの男に殺される。

魔王とはこれほどまでに強いのか!

まさか現代兵器が通用しないとは思ってもいなかった。

マシンガンどころか手榴弾、グレネードが通用しないとは思ってもいなかった。

ダメージを与えるどころか無傷とは・・・・・化け物だ。


命からがら地上に出ると目の前に広がるのはコリレシア兵の死体の山だ。

動くものは何一つなかった。



ぜ、全滅! あの男は慈悲が無いのか!



「逃げるぞ。騎士殿!」

俺は装甲車に飛び乗り自ら運転した。

運転させる兵士がいないのだ。

自ら運転せざるを得ない。

運転の練習をしておいて良かったと心の底から思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る