第73話 旅立ち
ナミラーを旅立つ前にネーナさんにカレーのルーを1000箱用意し渡しておいた。
ネーナさんから多額の報奨金を貰ったお礼としてネーナさん個人に渡したのだが断られてしまった。
商業ギルドへの寄付としてでないと受け取る事は出来ないということだ。
多分、俺が渡したカレーのルーは人気が出るはずだ。
ハルフェルナ出だされるカレーよりスキルで手に入れた日本製のカレーのルーの方が味が良い。
だから、ネーナさんの出世や名声のために役立てて欲しかった。
が、ネーナさんはBLカレーの美味しさを研究してもらうために飲食店に無料で配るそうだ。
でも、ルーと俺の作ったカレーとは違いますよ。
そしてBLカレーじゃないですからね。
旅立ちの当日、驚きのニュースが入ってきた。
が、幾つもの情報が錯綜していて正確な事は分かってはいない。
ワイハルト帝国が西隣にある小国リピン国へ侵攻したと言う情報だ。
そして、クリムゾン魔国がリピン国へ侵略を開始したという話とリピン国を救うためにクリムゾン魔国が派兵したと情報が錯綜している。
クリムゾン魔国がリピンを侵略したのか?
援軍を送ったのか?
意味は大きく違うが冒険者ギルドもアイゼー将軍も正確な情報を掴めていないようだ。
ただ、リピン国で戦火が開かれた事は間違いないらしい。
そして、クリムゾン魔国の部隊がリピン国に居るということも間違いないようだ。
クリムゾン魔国から派遣された部隊は四天王の一人獣王が率いていることも間違いないようだ。
噂では獣王は直情型の指揮官らしく攻撃も力押し、侵攻も直線。
作戦は殲滅あるのみ!
詐術も謀略も好まない指揮官らしい。
そんな脳筋が四天王とは・・・・・・
が、常に最前線に立ち、犠牲も大きいが相手にはその数倍の犠牲を強いるらしい。
実のところ人類が一番苦手な戦い方をするのがこの獣王かもしれない。
リピン国には申し訳ないが、しばらくは俺たちとは関係のないことだ。
ワイハルト帝国はどういった政治目標・戦略目標を持っているのか情報がなさ過ぎて推測さえもできない。
ただ、ガルメニアと同じ侵略国家といわれているのでリピン国を手中に収めようとしているのは間違いないだろう。
アレックスさんが合流し町を出発する事になった。
思いのほか多くの人が見送りに来てくれた。
ネーナさんは勿論、マイソール家の関係者、ドリスタンさん、ヘルムートさん、タマおばちゃん、サリムさんのパーティ、そしてアイゼー大将まで来てくださった。
ネーナさんとアレックスさんは涙を流している・・・・
ネーナさん、俺と将太の事をBLと喜んでいましたけど、お二人こそ百合なんじゃないんですか?
と聞きたかったが二人の雰囲気を壊すようなことは止めておこう。
多くの人たちから俺たちを温かく送り出してくれた。
また、ナミラーに戻って来たいものだ。
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ワセン攻略にフェルナンド王が出陣している今がガルメニア脱出のチャンスだった。
俺たちは兼ねてからの予定通り脱出作戦を実行した。
全員は逃げ出せなくても女子だけは、井原と高沢の二人だけはどうしても脱出させたかった。
それは山中が二人を報奨として貰うという一件があるからだ。
鈴木と星野は爵位と領地を褒章に求めるのは分かるが山中の要求は何だ!ありえない。
褒章にクラスメイト望むなんてゲスとしか言いようがない。
勇者の俺としては、そんなことを認めるわけにはいかなかった。
が、結果は半分成功、半分失敗した。
隠密スキルを持つ篠原が女子たちを町の外へ脱出させたところでガルメニア兵に気づかれてしまった。
城下に残った俺を始め男子は反乱を起こし陽動した。
男子全員、持てる力を奮い抵抗した。
剣聖や賢者など高位の職業を持っている者は奮戦したが俺たちはレベルが低かった。
守備兵と言っても経験が違っていた。
その中でも騎士団の副団長は別格だった。
副団長は正真正銘自分の実力で『剣聖』と言われるまでになった人物なのだ。
貰い物のギフトで得た職業とは比べ物にならなかった。
伝説の武器相手には苦戦をしたが元からの実力、それ以上に経験の差がはっきり現れた。
そして、今、生き残った男子7人は牢獄へ繋がれている。
五体満足な者は誰一人居なかった。
俺は右腕を失ってしまった。
これで勇者としての責務を果たすことは出来ないだろう。
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