第71話 報奨
セキジョー・ダンジョンへの旅支度を整えるために市場へ赴き食材を中心に購入しておいた。
久しぶりにナミラーの町を歩いた。
「おい、BLカレーは販売しないのか?」
「最近、店、出しててないね。どうしたんだ?」
「今日はBLカレーの販売あるの?」
「お兄ちゃん、BLカレーあるの?」
駐屯地へ赴いているのを知らない人たちだ。
俺も普通にお店出したいのよ。
その方が作る量、少なくて済むからね。
「お、カレー屋、大変だな~ お前、人が良すぎるよ。ハハハハハ」
「お疲れ! BLパーティのおかげでナミラーの町が助かったよ。ありがとう」
「大活躍だそうだな。支部長も感謝していたぞ」
「お前のとこの魔道師すごいな~ 噂、聞いたぞ」
「カレー屋、お前一日1500食分、作ってるんだって。半端ないな」
主に冒険者ギルド関係の人たちは俺たちの働きっぷりを知っている。
色々と声を掛けられるのは嬉しいが『BLカレー』『BLパーティー』は勘弁して欲しい。
町の北側が急にざわめきだした。
「援軍が来たぞ~」
「これで安心だ」
「ガルメニアをやっつけろ!」
オリタリアの援軍が到着したという知らせが届き町は歓声で溢れかえった。
予定より1日早く到着してくれた。
町は歓喜に沸く。
これで俺も地獄のような1500食リレーから解放される。
しばらくするとネーナさんがやって来てパーティー全員でで冒険者ギルドに来て欲しいという事だ。
買い物も終わったところなのでこの足で行く事にした。
冒険者ギルドには行くと会議室に案内された。
会議室にはドリスタンさん、ヘルムートさん、ネーナさんが揃っていた。
席の中央に今まで見た事のない鎧を着た白髪の60は過ぎていそうな老人がいた。
俺たちは一人ずつ席へ着いた。
「こちらが我がオリタリア軍の最高司令官・アイゼー大将閣下です」
思わず椅子から立ち上がりビシッと敬礼をしてしまった。
俺に釣られてみんなも立ち上がり敬礼をする。
「いや、いや、諸君は軍人では無いから普通でいいよ。硬くならず椅子に座りたまえ」
アイゼー将軍は優しく穏やかな声で椅子に座るよう手くばせをした。
「諸君らのおかげで、ナミラーは救われた。
感謝する。大統領閣下もお喜びだ。
諸君らの働きに感謝の意味をこめて報奨を持ってきた。
何も言わずに受け取って欲しい」
ここからはヘルムートさんに交代した。
「オリタリア共和国からは少なくて申し訳ないが協力費として1000万円を進呈する。
そして、オリタリア軍からは七海殿に白金戦功勲章を、みなさんには金戦功勲章を授与する事になった。
受け取ってもらいたい」
「えええええ」
「エーーーーーーーーーーー!」
「うそ~~」
「1000万円!!」
俺たちは思わず声を出してしまった。
「ヘルムートさん、そんなに頂いて良いのですか?」
「少なくて申し訳ない」
「1000万円ですよ。1000万円!!」
「諸君らのおかげで騎士団の犠牲者は二桁にも満たない。しかも、ルホストは戦略拠点として機能を失っている。
1000万円では安すぎるくらいだ。
本来ならもっと上乗せしたのだが、これから本格的な戦争状態に入るので本国のほうも大盤振る舞いが出来ないのだ」
「俺たち1000万なんて見たこともないので」
「何も言わずにお受け取りください。
白金戦功勲章の受賞者はオリタリア200年の歴史の中で10人もいない大変名誉ある勲章です。
近年ではアイゼー閣下のお父上がが50年前に受賞されたのです」
「えっ、そんな凄い勲章、恐れ多いですよ。
私が受賞したらまずいのでは無いですか?
私、リッチだから悪しき前例みたいになったりしませんか?」
「本国の方にも七海殿の件は伝えてあります。
七海殿のおかげで我が騎士団は救われました。
快くお受け取りください」
とヘルムートさんは頭を下げた。
「そ、そんな、頭を上げてください」
焦り動揺する七海がこれまた可愛い。
「魔道師殿。ワシからもお願いする。魔道師殿のおかげで救われたのだ。
リッチであろうと関係ない。受け取って頂きたい」
「ありがたく受け取っておこう」
智弘が言った。
「他の諸君らの武勲も聞いておる。
魔法少女殿は今回の作戦の立案をされた名参謀と聞いておる。
姫騎士殿は巨大な剣でガルメニアをなぎ倒し、聖女さまは負傷兵の看病に多大な貢献をしてくださったと。
そして、カレー屋殿は騎士団の食事を一手に引き受けてくれたそうではないか。
一人での調理はさぞ大変なご苦労だと思う。
ワシとしては何故一人で調理しないとダメなのが謎なのだが・・・・・・
ドリスタンはカレー屋殿と約束があるということなので一切話してくれなかったのだが」
ドリスタンさん義理堅い。
俺の事を大将閣下にも話さないなんて何て良い人なんだ。
「次は冒険者ギルドからだ。
BLパーティー、ありがとう。油断は出来ないがお前たちのおかげでガルメニアのナミラー占領作戦は頓挫したと思われる。
冒険者ギルドとしても感謝している。お前たち、まだGランクだろ。
俺の権限で一気にCランクへ上げる事にした。
それだけの実力があれば問題ないだろう。
ランクを上げることしか出来ないのが申し訳ない」
いきなりCランクか凄い出世だ。
まぁ、商業ギルドに所属している俺にはあまり関係ないが仲間のランクが上がる事は喜ばしい。
「碧さんは今からゴールドランクの商業ギルド会員にさせて頂きます」
とネーナさんから申し出があった。
俺もランクアップさせてもらえて一安心だ。
「商業ギルドはランクがあまり無いので、いきなりプラチナと言うわけにはいかなくて・・・・・申し訳ありません」
「いえいえ、ゴールドになるだけでも有り難いですよ。ありがとうございます」
俺たちは勲章と報奨金を手にし冒険者ギルドを後にした。
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