第65話 前門の中華鍋 後門の落とし穴


今日も朝から食事の用意。

1日3回500食分合計1500食。

これは結構ハードだ。

セキジョー・ダンジョンに行くべきだったと思わないでもないが男は口に出した以上逃げるわけにはいかない。

朝から米を炊くなんて根性は無い。

パスタだ!パスタ!

寸胴で湯を沸かし麺を入れるだけで主食となる物ができる。

朝と昼はパスタにさせてもらおう。

ざっとミートソースを一丁上がり。


おかずは酢豚と焼肉・・・・朝から重いよな。

が、それは一般人の考え方。軍人さんはそんなにヤワでは無い。

みなさん「旨い、旨い」と言って食べてくる。


どうもステータスが上がる時間は8時間くらいのようだ。

そして、量も一口で良いと言う訳ではなく、ある程度の量が必要なみたいだ。

智弘、将太たちは一度食べると12時間以上はステータスのアップしているらしい。

これは信頼関係が左右しているのか幾度と無く食べているからか。

それともその両方が関係しているのかもしれない。


朝食を作り終わり女神様にお供えをすると。

『回鍋肉』『魚の美味しい焼き方』『魚の美味しい煮方』のレシピを手に入れた。

そして、魚を仕入れることができるようになった。

これは凄いチートかもしれない。

どこでも魚を手に入れることが出来たら転売するだけでウハウハではないか!

魔法幼女のアクドイ顔が目に浮かぶ。


これでHPを上げることが可能になった。

+20だがこの世界では大きい。

ドリスタンさんやヘルムートさんクラスの人でHP200そこそこなのだ。

1割ほど下駄を履かせることができれば帰還率も高まるのではなかろうか。

これからは常に肉と魚を用意する事にした。


昼ぐらいにガルメニア軍が侵攻してきた。

今回は以前と異なりオリタリアの準備は万端だ。

七海がアースウォールを使って巨大な土壁を作ったのだ。

駐屯地と言うよりちょっとした要塞になっている。

四方500mを10mの高さで囲む、壁の上には2mサイズの通路が作られており移動して攻撃できるようになっている。

この作業を一瞬で作ってしまう魔力・MPの凄さ。

考えただけで恐ろしい。




その土壁に阻まれてガルメニア軍も駐屯地内に攻め込むことが出来ずに右往左往している。

ガルメニアのみなさん、壁があることぐらい遠くから見れば分かるでしょ。

何も考えなしで突撃してくるってどうなの?

少しは考えようよ。


壁の上から騎士団が矢を放ち撃退する。

俺たちも迎撃に参加する。

弓術を覚えた則之は騎士団から借りた大弓を引く


ギギギ

と弓がしなる音が聞こえる


バシュ!!

弓を放っときの音が空気を振動させる。


ガン!


弓は騎士の鎧を貫き貫通すると遠めで見ても血が吹き出たのが分かる。

その後、何人もが則之の弓の犠牲になった。



智弘は遠慮することなくガンガン魔法を打ち込む。

最初はファイヤーボールを使っていたのだが鎧を着ている騎士にはあまり効果がないと思うとアイスーボールを遥か上空に高打ち上げ引力の落下に任せ騎士たちの上に落とす

直撃した者は二度と動かなくなった。

多分、首の骨が折れたのだろう。


俺も最新の武器・中華君のお披露目をしますか。

眼下にいる敵に投げつける。


「往生せいや!」


見事に地面に命中!! ハズレですな。


地面に当たって本来ならあさっての方向へバウンドするのだが・・・・・・

どう考えても軌道的にもおかしいのだが手元に戻ってくる。

素晴らしいアイテムだ。

手元に戻ってきたらもう一度


「往生せいや!!」


ブンブン


と音を立てて中華君は飛んでいく。


ゴヅン!


命中! 騎士が倒れる。以後動く事はなかった。

スキルや技量は無いが力だけは無駄にあるからだ。


手元に戻る中華君。

今度は集団を狙ってみる。


「往生せいや!!!」


また、飛んでいく中華君。

3人に命中!!

力が分散したのか命中!。

命中した兵士は戦意を失い撤退していく。


そうこうしているうちにガルメニアの歩兵部隊がハシゴを持って突進してきた。

一番弱いところ。

すなわち俺のところにハシゴをかけて壁の攻略を試みる。

ガルメニアの兵士も俺が一番へボイと言うことはお見通しか。

舐めた武装をしている俺を見て腹を立てたのかもしれない。

くそーーー!

弱者をなめんなよ。

弱い者は知恵を使ってっ戦うんだ。


魔法のコンロを取り出しありったけの鍋に油をたっぷり入れる。

油の温度すぐに上がる。

やる事はひとつしか無いよね。



ハシゴで登ってくるガルメニア兵士に掛ける。


ウギャーーー

一番上の兵士が絶叫しながら下へ落ちていく。


危ないと思って駆けつけてくれたドリスタンさんが、


「カ、カレー屋、お前、エグイな」


と、確かに我ながらエグイと思う。

でもこれ、戦争なんでしょ。躊躇していたら俺が殺されるから。


油をかけたハシゴは滑って使うのは困難になるので一石二鳥でしょ。

次々に高温になった鍋を壁の下に投下。

そこに情け容赦なく七海と智弘がファイヤーボールを打ち込む。

壁の下は地獄絵図さながらの阿鼻叫喚。

木製で出来たハシゴは焼け落ちどれも使い物にならない状態になった。

ガルメニア軍もこれ以上の侵攻は無理と判断して撤退を開始した。


土壁の上からもガルメニア軍の撤退が見てとれる。

智仁、則之、七海が俺も元へ集まってきた。




逃げ出すガルメニア軍に悲劇が襲った。


街道がいきなり長さ100mほどに渡って陥没した。

その大きな穴に50人ほど巻き込まれたろう。

いきなりのことで俺たちは唖然とした。

何事かと顔を見合わせると隣で七海が手を広げていた。

犯人は七海だ。


「七海、お前が一番エグイかも・・・・・・」

と思わず声に出した。


「テヘ」


いやいや、テヘじゃないだろう。

少しガルメニアの兵士に同情した戦いであった。


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