第48話 ネーナの依頼


俺はナミラーの支部長室へ連行された。

なんか面倒くさい事に巻き込まれそうな予感しかしないのだが・・・・・・


「碧さん、あっ 馴れ馴れしくてごめんなさい。白田さんでしたっけ? 碧という名前のほうが響きが綺麗で好きなんです」


「碧で構いませんよ」


「私のことはネーナとお呼び下さい。アルファンブラの名前を出すのは仰々しいので」


「では、ネーナさんと呼ばせていただきます。ネーナさんはお嬢様だったのですね。だからでしょうか?上品な感じがしたんですよ」


「生まれが良かっただけですよ。先祖が立派なだけで私は何も大それた事はしてませんから」


「それでも最年少の支部長さんではないですか」


「あっ、それは碧さんに商業ギルドに加入していただいたからですよ。この支部長の椅子も碧さん合っての物ですから」


「え? そんなに凄いことなんですか?」


「碧さんの前に商業ギルドに加入した転移者は10年前の話ですからね。

 あの時、力ずくで引き止めて正解でしたよ。

 今はカレー屋さんが大人気とお聞きしましたが」


「幸いな事に料理スキルが力を発揮してくれまして、おかげ様で大盛況です」


「あ、あの~つかぬ事をお聞きしますが・・・・・・・BLと言うのは本当でしょうか?」


ガクッ!!

思わずうな垂れてしまった。

ちょ、ちょ、ちょっとネーナさん恥じらいながらそんな大胆な事を聞きますか?

芸能人がホモ疑惑を掛けられるとなかなか晴れないと言うのが今分かった気がした。


「ち、ち、違いますよ。お、お、俺は女性が大好きです。ネーナさんのような素敵な女性の方が好みですよ!!」


「町でカレー屋のお兄さんと聖女の男の娘の噂が絶え間なく聞こえてくるので・・・・・・」


「ちょ、ちょ、ちょっとネーナさん、ついさっきナミラーに着たばかりじゃないのですか?」


「赴任する前に町の資料に目を通しておくのも仕事ですから」


「カレーの件は分かりますが、俺と将太の件も資料に載っているんですか?」


「ハイ」


「ナミラーは平和なんですね・・・・・・」


「いえ、聖女様が絡んでいると簡単にスルーは出来ませんから」


「聖女と言っても将太は男だし、まだ、聖女の力を手に入れてないですから・・・・というより、冒険者ギルドの人たちが勝手に聖女呼ばわりしているだけですよ」


「ヒールしか使えないと聞いていますが聖女様のヒールは能力が違うという話ですから」


「そうらしいですが、まだMPもそんなに高くないようですしあまり聖女と騒がれるのも本人は嫌がっていますからね。

 第一男で『聖女』呼ばわりは嫌でしょう」


「確かにそうかもしれませんね。ではBLでは無いのですね」


「やけにBLに食いつきますね~」


「趣味ですから」


え?趣味・・・・・ハルフェルナの闇は深い。


「とここまでは世間話ということで、碧さんとの親睦を深めておくということにして碧さんたちのパーティーにお願いがあります。

『仮面の魔道師』の討伐を依頼したいのですが」


「え?それは冒険者ギルドに頼んだほうが良いと思うのですが」


「冒険者ギルドには商業ギルド並びにすべてのギルドから依頼をする事になると思います。

 これは、個人的に碧さんたちのパーティーに依頼を出したいと思います」


「我々のパーティはそんなに実力があるわけではありませんから。俺なんか一角ウサギにケツを刺される始末ですから」


「個別の指名依頼を受けるとパーティに箔も付きますから」


「それは商業ギルド支部長としてですか?それともアルファンブラ家のお嬢様としてですか?」


「両方です。魔道師を倒すことが出来なくても指名依頼を受けることだけでもプラスになりますよ」


うわぁ~ネーナさん、食えない人だ。

俺たちに貸しを作るつもりか~

さすが、最年少でギルド支部長になるだけのことはある。

家柄だけで支部長になったのでは無い。

この人は切れ者だ。心しておこう。


「俺の一存では受けることは出来ません。俺がパーティーのリーダと言うわけでは無いので返事はみんなに相談してからですね」


「パーティーのみなさんと相談してください。良い返事をお待ちしております」


「なぜ、そんなに俺たちに良くしてくれるのですか?」


「それは、みなさんが転移者ですけど・・・・・私の勘が言うんです。

 碧さんとの縁は大切にしておいたほうが良いと」

ネーナはニコリと笑っていた。


食えん、この人は本当に食えん。

知的で美人でバインバインで100%好みなのだが下手に交渉すると火傷を負いそうだ。


これ以上、ボロが出ないうちに撤退しておこう。


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