第47話 新商業ギルド長


僕は目を覚ましたら知らない森にいた。

たしかガルメニアの城にいたはずなのだが・・・・・

なぜか顔が暑い。いや、体中が暑い。

気になって顔を触ると仮面のような物に手が触れた。



暑さが徐々に増してくる。

暑さが熱さに変わった。


熱い、熱い、体が焼けるように熱い。

痛い、痛い、激痛が体を襲う。

魔力量が自分の保持できる量を超えているようだ。

魔法を使わなければ・・・・・

魔法を撃ち続けなければ焼け死んでしまいそうだ。

魔法を生物に撃たなければ死んでしまいそうだ。

生き物を殺すと痛みが和らぐ。

僕はどうしてしまったのだろうか?

生き物を殺す、人間を殺すなんて趣味は無い。

仮面を通して脳に直接声が響く。


「生ある者を滅せよ」と


この仮面だ。

この仮面が諸悪の根源だ。

外さないと、外さないと。


「痛い、痛い、痛い!!」

が、外そうとすると激痛が伴う。

余計に魔力が増大して殺意が増す。

何故だ?何故だ?何故なんだ!


この仮面は呪われているのか!

この苦しみから逃れるには殺すしかないのだ。


こんなことはしたくない。

人殺しなんてしたくない。

赤城や井原などに従わず鈴木や山中たちのようにフェルナンド王に従っていればこんな苦しみを味わうことはなかったのかもしれない。


あぁ、自分が壊れていくのがハッキリ分かる。

生きていくと言うことは死ぬことと同じくらい苦しいことなのかもしれない。






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「国王陛下、ご命令どおり、かの魔法使いに『イフリートのマスク』を付けてナミラーの町近辺くの森に捨てておきました」


「ご苦労、騎士団長。これでルホストの町に軍備が整うまでの時間稼ぎができるだろう。

 して、追放した者たちの所在は掴めたか?」


「申し訳ございません。追っての者から連絡がございません。

 返り討ちにあったと思われます。行き先はオリタリデはないかと思われます」


「そうか」


王はしばらく考え込んだ。


「これに至っては仕方あるまい。あのような雑魚どもは放っておいても構わない。

 これ以上時間を割くわけにもいかぬ。

 今はイズモニア攻略が最優先だ」


「ハハッ!」


と、騎士団長は片膝をつきながら頭をたれた。


フェルナンドの瞳が一段と赤く輝いた。





^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^


今日は討伐に行かない日だったのでカレー屋で小銭を稼いでいると、


「おい、また仮面の魔道師が出たらしいぞ」

「今日もパーティーがやられたらしいな」

「ついに死者が出たらしいぞ」


ナミラーの冒険者ギルドが騒々しい。

いや、商業ギルドや他のギルドも同じような状況らしい。

俺はコショウを売買して以来、商業ギルドに顔を出していないので情報を集めるためにいってみる事にした。


商業ギルドでも多数の被害が出ているようで仮面の魔道師への注意と懸賞金が掛けられていた。

神出鬼没で無差別に襲ってくるらしく北の森の近辺の街道を迂回することを推奨している。

本来ならナミラーにもっと多くの商品が納入される事になっているのだが届いていないようだ。

相当数の商人のキャラバンが被害にあっているらしい。


「みなさん、新ギルド長が到着しました」

いきなり女性職員が声を上げた。


え?新ギルド長? 

コショウ売ってから碌に来なかったからな~

そういう情報も流れていたんだろうな。

まぁ、俺のような新米にギルド長とか言われても関係ないからな。


「こちらが新ギルド支部長のネーナ・アルファンブラです」


え?あの人・・・どこかで見たような・・・・・・・どこだったかな?

紺色に金の縁取りがされている高級そうな服をビッシと着ており、アンダーフレームの赤いメガネを掛けていかにもやり手という雰囲気を醸し出している。

そして、立派な胸をお持ちの・・・・・・・・


「あ~~~~~!! イゼリアの副支部長のお姉さん」


思わず大声を上げてしまった。

新支部長はチラッと声の主である俺を見ると


「あっ、碧さん!・・・・・ あっ、いけない。皆さま、失礼いたしました。


「ううん」と一度咳払いをし


「私が今、紹介に預かった。ネーナ・アルファンブラです。よろしくお願いします。

 私が就任したからといって何も変わることは無いのでご安心を。

 現在、最大の懸念となっている『仮面の魔道師』の件は、各ギルドと相談して早急に対処させていただきますのでしばしお時間をください」


と一礼をするのであった。


「頼もしいね、さすがアルファンブラ家のお嬢様だ」

「アルファンブラ・・・・・・」

「最年少で支部長になるだけのことはあるな」

「アルファンブラ家の者が・・・・・・・」


あのお姉さん、そんなに凄いところのお嬢様だったのか!


「すいません、アルファンブラ家って凄いんですか?」


隣のおじさんに聞いてみた。


「え?君はアルファンブラ家を知らないのかい?」


「え、はい。凄く田舎から来たもので・・・・学校も出てないんですよ」


「どれだけ田舎なんだい? 魔族でさえアルファンブラ家のことは知っているよ」


と、おじさんは信じられないような顔をしていた。


「ハルフェルナには国を超えた5大名家というのがあって、その一つがアルファンブラ家だよ。

5大名家は並みの国より強い発言権と財力を持っているんだよ。

その中の2つ、アルファンブラ家とマイソール家はオリタリア出身なのさ。

お兄ちゃん、知り合いじゃないのか? ネーナ様も知っているようだったけど」


「そうなんですか、勉強になりましたよ。

 いえいえ、ギルドに入会するときに担当してくださっただけですから、知り合いなんてそんな大それたものでは無いですよ」


と、おじさんと話していると。


「捕まえた!」


手を掴まれ振り向くと支部長さんであった。


「碧さん、ちょっと相談がありますので支部長室まで来てください」


「あの~ 帰ったらダメですか?」


「ダメです!!」


と言って支部長室へ連行されていった。



「カレー屋のお兄さんが捕まってるぞ」

「あれが噂のBL兄ちゃんか?」


俺の後からはそんな声が聞こえてきた。

BLだけは勘弁してください。




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