第28話 井原 藍


紫音が亡くなって1週間近くが経過しようとしていた。

私の心の中の大事な部分の一つが失われ喪失感にさいなまれていた。

紫音は中学のころからの親友だった。

そのころから男子から人気があった。いや、女子からも人気があった。

けして奢らず人当たりも良く誰にでも優しい。

嫌がらせを受けても笑顔で乗り切っていた。

私は頭が固く融通の聞かない性格だから男子はもとより女子からも疎まれるのだが紫音の親友という免罪符を持っていたからクラスから浮くことは無かった。

もし、紫音がいなかったら学生生活は暗いものになっていただろう。


紫音が殺されたとき、目前で繰り広げられたことが理解できず何一つ動けなかった。

あの状況で紫音を庇おうとした白田には驚かされた。

誰一人動くことが出来ない状況で白田だけが紫音を庇ったのだ。

緑山も水原もとっさに魔法を掛け黒木は身を挺して紫音と白田を庇った。

あの4人以外は何も出来ず見ていただけだ。

情けなかった。親友の一人として何も出来ない自分が情けなかった。


紫音が眠る部屋へ入り骸骨となった亡骸を見たのだが実感がなかった。

多分、紫音なのだろう・・・・・紫音なのだろうと。

いや、違う!!あれほど美しかった紫音の分けない。

これは幻覚なのだ。悪い夢を見ているだけなのだ。

と、もう一人の自分が絶叫している。


・・・・・・・紫音らしき亡骸はしっかり埋葬出来たのだろうか?


・・・・・・・いつの日か花を手向けにいけるのだろうか?




コリレシア軍を召喚出来る山中、ワレトラマンの鈴木、ズガーンダム星野の3人は別格として、

当初は使い物にならないと思われていたアイテム系のチームの方が職業系チームの方より強かった。

人間の方のステータスは低いのだがアイテム、武器の性能が圧倒的だった。

私のロンロンギヌの槍は投げたら必ず当たり、当たった敵はほぼ死ぬ、念じれば手元に戻ってくる。

そして、レオタードのようなスーツは剣で切られようが槍で突かれようが魔法を喰らってもダメージを受けない最強のスーツだった。


凛の持つエクズカリバーも剣の持っている力で城の騎士たちを圧倒する剣技を振るう。

今のところ、勇者や剣聖なども圧倒する攻撃力を有している。

ダメージを負っても一定の割合で回復するようだ。


私たちはモンスターを倒し順調にレベルを上げていった。

スライムや一角ウサギ、大イモムシなど動物形状のモンスターを倒していった。

人型のモンスターを倒すのは忌避感があり最初は躊躇していたのだが殺らなければ殺られてしまう。

しかも、ゴブリン、オークは女を見ると犯して子供を産ませるのだ。

殺らなければ犯られてしまう。

慣れとは恐ろしいもので、今ではオークやオーガなど人型のモンスターも平気で倒せるようになった。


アイテムチームを2軍に職業チームを3軍にするようだ。

職業チームはレベル上げをしなくてはならないので実戦で使えるようになるにはまだ時間が掛かるようだ。

その実戦とは紛れも無く侵略戦争。

どこかの国を攻め落とすということだ。

私たちは魔王を倒すために召喚されたはずなのに・・・・

それまでに逃げ出さなくてはならない。






そして、今、訓練も終わり城に戻りスーツを脱いで就寝。

どうもおかしい。

スーツを着ているときは問題ないのだが脱ぐと・・・・・・・自分の性癖が露になる。

あの時の、あの時の・・・・・・

緑山が白田に抱きついていた、あの瞬間が・・・・・・

もう、色々想像できてしまう。

昔からあの二人は私のネタであった。

ときどき想像していた。

が、今はどうだろうか。毎晩毎晩あらぬ事を想像してしまう。


そう、私は腐っているのだ。世間的に言う腐女子というやつだ。

だからであろうか水原が好きにはなれない。

多分、同族嫌悪というやつだろう。

あいつは変に頭が良く知恵も回り洞察力も勘も鋭い。

赤城君より賢いのでは無いだろうか。

私が腐女子であることも見抜いているのではないだろうか?

だから水原を避けるように毛嫌いしている・・・・・・・

が、今ではその嫌いなはずの水原×緑山、黒木×水原、水原×赤城etc

いくらでもいけるようになってしまった。

そう、私は手の施しようが無いほど腐ってしまったのだ。



ただ、おかしいのは私だけでは無い。

凛の様子もおかしい。

町で可愛い小さい男の子を見つけると、ずっと目で追いかけている。

緑山との別れ際のことは演技ではなかったような気さえする。

凛の性癖は「ショタコン」のようだった。


他のみんなも何かしらおかしくなっている。

アイテム系の者は総じておかしくなっているような気がする。

男子は攻撃的、野蛮、町で女子を襲っている者も少なくない。


この前も由香が襲われそうになった。

運良く赤城君と凛が居合わせたから大事にはならなかったが踊り子の由香のような戦いにはあまり向かない職業の子はクラスメイトたちから襲われることが間々ある。

男子だけではなく女子も隠されていた性格・性癖が表に出るようになった。

大人しかった子が荒っぽくなったり、騎士団の人とあらぬ関係を持ったり・・・・・・



何かを得ようとすれば何かを失う。

努力することなく強大な力を手にしてしまった罰なのだろうか。


私達の間に軋む音が聞こえてきた。

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