第29話 塩・コショウ転がし


ようやくナミラーの町に着いた。

ここオリタリアの町でも門番は配置されているのだが驚いたことに犬と言うより狼の顔をした獣人が左右に立っていた。

ギルドカードを見せ町の中に入ると人間だけでなく少数ながらエルフ、ドワーフ、犬の獣人、猫の獣人などもいた。

ハルフェルナではガルメニアとイズモアニア皇国だけが亜人排斥主義を取っている。


「着たーーー 異世界!! エルフだよね。エルフ!!」

智弘は一人テンションが上がっていた。

男女のエルフを数名見かけたのだが全員、イケメンに美女だ。

女神様、これは人種差別なのでは無いですか?


「エルフって本当にいたのね」

七海がこっそり耳打ちをする。

いやいや、七海さん、エルフよりリッチの方が希少だと思いますよ。


俺たちは智弘、則之、七海と俺と将太の二組に分かれた。

智弘たちは冒険者ギルドへ行き挨拶とどのような依頼があるかの確認をしに、

俺たちは商業ギルドへ挨拶とスキルで手に入れられる塩、コショウを見てもらおうと足を運ぶことにした。

ナミラーは「オリタリアの南の入り口」と言われるだけあって商業ギルドもイゼリアの町のギルドと比べ遥かに大きく比べ物にならないほど賑わっていた。

いくつかあるカウンターを見ると「買取所」のプレートが天井から釣り下がっており多くの人が並んでいた。


この世界の塩は現代と同じく岩塩が主流のようだ。

日本では周りが海に囲まれているので出回っている塩は海水塩なのだが現代においても世界で多く使われているのは岩塩なのだ。

岩塩は海水塩と比べると塩辛さが強い特徴を持っている。

イゼリアの市場などで岩塩が多く売られており、

値段も俺のスキルで手に入れ転売してもたいした利益は得ることは難しそうなので日本のスーパーのどこにでも売っている精製塩を5kg調達して売ってみることにした。


コショウの方はブラックペッパー、ホワイトペッパー、グリーンペッパー、ピンクペッパーの100gずつの4点セットとテーブルコショウでおなじみのパウダーを買い取ってもらうことにした。


ようやく俺の番になった。

まずは精製塩をカウンターに出してみる。

いかにも商人という恰幅の良いおじさんが丁寧に袋を開けて中身を一つまみ手に取り味見をしてみる。

「これは、精製塩か、珍しいね。塩見も良い塩梅で料理に使いやすそうだ。

 粒の一粒一粒が綺麗に整っているね。

 この塩は作る手間隙が掛かるから・・・・・

 ウン、高く買い取るよ。この袋一つ、5000円でどうだい?」


5000円!!ウマーーーー!!500円が10倍か!!これは美味しいぞ!!

岩塩でなくて正解だな。

が、ここは、少し出し渋ってみよう。


「う~~~ん、もう少し何とかなりませんかね?」


「う~~~ん、そう言われても、これ以上高い値段はね・・・・・・・」


「そうですか・・・・」


ここはどうするべきか?

とりあえず保留にしてコショウを見てもらおう。


「では、こちらのコショウを見てください」

俺はブラックペッパーの粒とテーブルコショウ、ホワイト、グリーン、ピンクを出した。

テーブルコショウ以外、100g入り4パックで2000円もしない商品を用意しておいた。


「この粉もコショウなのかい?」


「そうですよ。ブラックペッパーとホワイトペッパーをブレンドして粉にしたものです」


「珍しいね。粉状にするのは何故なんだい?」


「粉にすることにより少量で風味とスパイシー感が増し、料理の後に一味加えたりするのに便利になります」


そう、ハルフェルナのコショウは粉に挽いた物より粒のままのコショウの方が主流だ。

粒を叩いて潰すか粗挽きを使っていた。

これは調味料の種類が不足しているためなのかコショウで大まかな味を決めているようだ。

多分、そのせいで味付けが大味に成っているのだろう。


「ほほー ホワイト、グリーン、ピンクも見たことないね。ちょっと味見させてもらうよ」


といってホワイトペッパーから味見をした。

「この白いのはピリッとした辛みがあるね。香りはあまりコショウらしくない控えめな香りだね」


「ホワイトは白身魚の料理や牛乳やクリームをベースとした色の淡い料理に合いますよ」


「では、緑を。おっ!これは強烈な辛味があるね」


「これもクリームベースのスープにパンチのあるアクセントに良いですし、サラダに入れても美味しいですよ。

マイルドな料理のアクセントにお勧めですね」


「ではピンクのヤツを」


「実はこのピンクのヤツは正確にはコショウでは無いのですよ。見た目がコショウそっくりだからピンクペッパーと言われています」


「ほほー 確かにコショウ独特の香りやスパイス感は弱めだね」


「このピンクペッパーは加熱すると味や香りが飛んでしまうのでサラダやマリネなど冷たい料理に使うかピンクの色彩を生かして料理のトッピング、デザートのトッピングにもお勧めですよ」


「フムフム・・・・・・・・」


しばらくの沈黙の後、


「黒いのは一般的だが白、緑、特にピンクは希少価値があるから・・・・・・・

全部で2万5千円でどうだい?」


俺はしばらく考えるフリをし、


「分かりました。それでお願いします」

と、クールな顔をしておいた。


「商談成立。良い買い物が出来たよ。どの町でも美食家はいるからね。珍しいものだからすぐに売れると思う。また手に入ったらよろしくお願いします」


「はい、今後ともよろしくお願いします。それから露天を出したいと思うですが許可はどうしたらい良いのですか?」


「露天は市場に受付があるからギルドカードがあれば空いている場所さえあれば簡単に出せるよ。

ただ、だいたい場所は決っているから・・・今、空いてるところは冒険者ギルドか騎士団の詰め所近辺りしか空いてないかもしれないね。

それから、このコショウはあまり大ぴっらに販売しないでくれないか?しばらくは商業ギルドの専売にしたいから」


「分かりました。売らないでおきますから安心してください」


俺の心の中はウハウハ!!万歳三唱していた。

これで今夜の宿代も何とかなりそうだ。



商業ギルドから出ると智弘たちが待っていた。

冒険者ギルドに顔を出し討伐の依頼を確認してきたようだ。

ナミラーの東門から出て街道を少し行ったところにスケルトン、スライム、コボルト、オークなどが多くでる森りがあり駆除の依頼が来ているようで、

今も多くの冒険者達がそこへ行っているので明日行ってみることにした。

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