第17話 食糧事情
近くの宝来亭へ向かい中へ入ると。
いかにも中世時代の大衆食堂と言った趣の店だった。
多くの客がいて賑わっていた。
店の若い女の店員さんにカードを見せると、
「はい、ギルドの方ですね。シルバーですか。お稼ぎになられているのですね」
と言ってニコニコしながら奥の静まった部屋へ通してくれた。
部屋の入り口のプレートには「スペシャル・ルーム」と書いてあった。
「お姉さん、僕たちの身なりを見てください。こんな高級な部屋に相応しくないですよ。
しかも、さっき商業ギルドに加入したばかりのシガナイ旅人にしかすぎないのでしすけど」
「え、ついさっきほどですか?それでシルバーカードなのですか!!!」
お姉さんは目を丸くして驚いた。
スペシャル・ルームの扉を開け
「中へお入りください。椅子におかけください。店長を呼んできますのでお待ちください」
お姉さんが、そう言って部屋を出て行く。
「碧殿、大丈夫でゴザルか?」
「俺に聞かないでくれよ。俺も訳がわからないのだから」
「邪険に扱われることは無いんじゃないか? あの店員さんも好意的な感じだったぞ」
智弘が答えると。
「私も大丈夫だと思うよ」
とお面姿の七海が答える。
そこへ店長がやってきた。
「これはこれは、皆さん、お越しいただきありがとうございます。
店長のマヒルダです。お見知りおきを。
どちら様がシルバー、スタートの新加入者さまでしょうか?」
「お、俺です」
手を挙げ店長に答える。
「左様ですか。ギルド支部長がいきなりシルバーからスタートさせるなんて期待されていますな~
私も期待させていただきますよ」
「店長さん、そんなニコニコされても実績なんてないのですよ」
「いえいえ、シルバー・スタートは期待の証ですから。
少なくともイザリアの町でシルバーからスタートした商人はおりませんから。
支部長がどれほど期待を込めているか私でも分かりますよ」
「俺たち、金が無いので、こういう部屋に通されても部屋に相応しい食べ物なんてオーダーできませんよ」
「そんこと気にせず食べたいものをオーダーしてください。今回はサービスしておきますよ。
これからも色々とご贔屓にしてください。色々と」
と言うと店長は部屋を後にした。
「好きなものと言われても・・・・・・な~」
俺はみんなの顔を見渡した。
「とりあえずメニューを見て興味の引くものをオーダーしよう。この世界の食文化を学ばないといけないからな」
智弘らしい提案だ。
メニューを開いてみると
ミノタウロスのステーキ、オックスブルのステーキ、ブラックロブスターの海鮮焼き、オークソテー、ロック鳥のから揚げ、
ミノタウロス牛丼、オックスブル牛丼、オークカツ丼、カレーライス、パスタ、ラーメン、餃子etc
「ミノタウロスってモンスターだよね?食べても平気なのかな?」
将太が智弘に尋ねる。
「モンスターだよ、オークもロック鳥も。オックスブルというのは聞いたことがないけど・・・・モンスターだろうな」
「と言うことはこの世界に人間はモンスターを食べるってことだよな」
何れ俺もモンスター肉を使って調理することになるのだろうな~
「牛丼、カレーライスって、女神様の言うとおりお米があるのね。
でも、私お腹減らないし食べることできるのかな?」
「試してみなよ。何でもTRYだよ」
「分かった、白田君」
俺たちは合計8品ほどオーダーしてみた。
七海の食事姿に注目が集まった。
お面を口の部分だけずらし肉を口に運んだ。
口の中に入れると食べ物は見えなくなった。
ちゃんと食べることが出来て味も分かるそうだ。
ミノタウロス、オックスブル両方のステーキとも牛肉だった。
ミノタウロスの方が赤身が多く、オックスブルの方が油のサシが多く和牛に近い味がした。
ブラックロブスターはそのまんまオマール海老のようだった。
カレーライスもラーメンも日本と見た目は同じものが提供された。
食文化は現代日本と同じと考えても良いのかもしれない。
「あ~~これは難しいことになったな」
智弘がいきなり言い出した。
「どうしたの?トモ君」
「カレーがあるということは様々なスパイスがこの世界にあるということだ。
俺は碧のキッチンセットのオマケでコショウやハーブなど手に入るのを期待していたんだが、
たとえ手に入っても転売で簡単にお金は稼げないな。
塩やコショウの転売で儲けるというのは異世界転移物のお約束なんだよ。
しかも、カレーの中身を見てみろ。異世界もので食糧難を一変させるジャガイモまであるんだ。
ハルフェルナの食料事情はそうとう良いのだろうな。
こりゃ楽して金は稼げないな」
「働かざるもの食うべからず。でゴザルな」
「美味しいと思うけど、リッチになったせいかもしれないけど味付けがあまり上手くないように感じる」
「うん、そうだね。ステーキは塩コショウだけでもいいかもしれないけど、カレーやラーメンはあまり美味しいとはいえないかもね」
将太君、なかなか手厳しいご意見ですな。
「商業ギルドの支部長さんはおいしいと言っていたけど、そこまで言うほどではないでゴザルな」
「それは、スキルが有るか無いかによるところが大きいかもしれないな。
それとも、この世界はこの味が好まれるのか?
これは、碧のスキルに期待しよう」
「俺? おいおい、俺、料理なんてまともにしたこと無いぞ。スキルを信じていいのかな?」
「スキルで魔法が使える世界だぞ。料理も期待してもいいんじゃないか」
俺たちは今後の予定について話し合った。
食料を調達してモンスターと一戦してみようということになった。
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