１×６パーティーはままならない～異世界転生して無双してるけど、俺は美少女と結婚してイチャイチャしたいだけなんだ！～

第４章 第４話 陸でも水中でも強いってヲイ！

　最悪だ！！　水中はあいつの舞台。

　それ以上に俺のフルプレートアーマーは水に浮かない、泳げない！！

　そして当たり前のように、水中で俺を見据すえるシャコが見えた。

　シャコが俺を目がけて猛スピードで泳いでくる。

　こんな状態じゃ何もできない！　何とか、何とか陸に上がらないと！！

　必死に手足を動かすが、鎧が重くて沈む一方だ。

「ごぼぁ……」

　シャコが俺をとらえた。

　短い腕の沢山のトゲはカマで、カマキリのカマを上に向けたような形をしており、俺をしっかりと固定して動けなくなってしまった。

　何だよコレ！　シャコってこんな腕だったのかよ！

　斧で斬りつけるが、水の中では全くダメージを与えることが出来ない。

　しかしシャコも鎧が邪魔で噛みつくことが出来ない様だ。

　つまりダメージを与えられるのは腕のコブのみ、か。

「魔力雷球（エネルギーボルト）！」

　頭を目がけて魔法を放つが、残念ながら水の中では威力は半減され……いや、予想外にダメージを与えることが出来た。

　それどころか俺は、爆発で水面近くまで浮上していた。

　そうか、水中では水の膨張がそのままダメージになるのか。

　じゃあもう１度！

「魔力雷球（エネルギーボルト）」

　爆発で水面よりも高く吹き飛ばされ、ロープ付きの斧を地面目がけて投げつける。

　地面に深く突きささると同時にロープを引き寄せ、何とか陸地に上がることが出来た。

「ぷはぁ！」

　あ、危なかった。あれ以上は息が続かないし、シャコの攻撃手段もまだまだありそうだった。

　湖を背にしたのは完全に失策だったな。

　……まさか誘われた、って事はないよね？　妙に簡単に水辺から離れるとは思ったけど。

　湖から距離を取り、息を整えて斧を構える。

「出て来るかな。エサは食べられちゃったみたいだし、わざわざ水から上がるなんて事はないか」

　エサを食べたんだから、これ以上戦う必要も無いだろうし。

　あ～あ、また１からやり直し……か？

　シャコが水から上がってきた。

　なんで？？　ひょっとして俺を倒さないと気が済まないとか？

　それは助かるけど、野生動物ってそんなんだったっけ？

　しかしどうしようか。湖を背にしたら何かで吹き飛ばされ、逆だったら湖に逃げられる。

　つまり考えるだけ無駄、って事だ！

　今の距離は俺が吹き飛ばされたよりも遠い距離だ。

　吹き飛ばされた距離まで詰めて、もう１度だけ食らう覚悟で攻撃を仕掛ける！

　もってくれよ、俺の体と鎧！

　掛け声とともに走り、シャコの一挙手（いっきょしゅ）一投足（いっとうそく）を見逃さないように注視する。

　瞬間！　目の前にコブが現れる。

「うげ！？」

　何とか顔を逸らしてかわすと、コブはシャコの元へと戻って行った。

　な……なんてー長さだ！　あの短い腕、一体何回折りたたまれてるんだよ！

　シャコとは目視で５メートル離れてるから、５メートルも伸びたのか。

　しかもあの速度と威力。音速とかそんなレベルじゃねーぞ。

　そして恐らくだけど、もう１個分関節が伸びる。

　１個分はカマキリみたいなカマだ。コブの付いた腕にトゲが並んでた。

　くそぅ、不用意に近づけなくなっちまった。

　効かないと思うけど、一応やってみよう。

　バッグからロープ付き投げ斧を２本取り出して投げつける。

　やはりというか、１個は避けられて１個は殻に弾かれた。

　間髪おかず魔力雷球（エネルギーボルト）を発射、命中・爆発するも、殻にはヒビも入っていない。

　効かないか。

　しかし今ので少し間合いを詰めることが出来た。斧と魔法が飛んでいる時は様子を見ていたようだったから。

　ん？　なんで動かなかったんだ？　動きが速いんだから全部避けて距離を置くなり詰めるなり、好きなようにできたはずだ。

　複数の目標を見られないとか？　試してみよう。

　投げ斧や石、槍でもいいから、とにかく何でも投げつけた。

　すると一瞬ビクッと反応して動きが止まる。

　行けるか！？

　一気に間合いを詰めていくが、その間に投げた物が順番にコブで撃ち落とされている。

　俺が投げたよりも遥に速い速度で撃ち落とされるのかよ！

　しかし、俺はもうお前の背後に回っているぜ！

「魔力雷球（エネルギーボルト）！」

　斧を背中に振り下ろすと同時に魔法を発動。

　斧は背中に命中して殻にヒビを入れ、その斧に魔法が命中してさらに深く食い込んだ。

　脱皮する前にもっともっと深くまで押し込むんだ！！

　更に力を入れて押し入れる！　……近づいて来てる？？

　気が付いた時にはシャコの背中が俺を湖に押し出していた。

　そういえば、エビとかザリガニは後退の方が速かったな……。

　再度湖に落とされた俺はシャコを探す。

　いや探す手間が省けた。湖に落ちると同時にカマで掴（つか）まれていたからだ。

　今度は様子見も無しかい！！

　噛みつく事もせず、掴んだまま湖の底へと引きずり込まれる。

　ああそうか、息をさせなければ、それでいいもんな。

　必死にもがくもカマは外れず、ただひたすらに底へと運ばれていく。

　クッソ！　力比べでは狼の神獣ヴォルフにも勝てたのに、こいつの力はそれ以上だ！

　カマは外れず泳ぐことも出来ず、されるがまま沈んでいく。

　きっとこいつは『人間ざまぁ！』とか思ってるんだろうな。

　ははっ、まったくだ、人間と甲殻類だぜ？　住んでる世界が違いすぎるんだよ。

　水の中で勝てるはずが……ない。

　だから……だから俺はここで……。

　ここでは戦わず、陸地で戦う方法を考えたんだよ！！

　シャコの動きが止まる。

　必死に底へと俺を運ぼうとしているが、がんとして沈まなくなった。

　なぜかって？　投げ斧に付いたロープの長さが限界だからさ！