第3章 第17話 ディータちゃん、身も心も穢されたぁ!

 私のビンダでおばさんはほおを押さえて床に倒れてる。

 ふっふっふ、何が起きたか分からない顔してるねぇ。


「そんな……確かに罠を設置したはずなのに」


「罠? ここにあった罠の事?」


 私が立っている場所の床を、足で2回踏みつける。


「そんなの解除したに決まってんじゃん!」


「何を言ってるの!? 魔法の罠よ! 物理的な罠と違って解除なんて出来るはずが無いわ!」


 おーおー取り乱しておりますねぇ。

 ここはひとつ、天才ディータちゃんが教えてしんぜよう。


「魔法の罠でしょ? なら魔法で動かなくすることも出来るに決まってんじゃん?」


 まったくそんな事もわかんないの?

 魔法の罠は天井・壁・床に2つずつ設置出来て、それぞれに再使用時間クールタイムが設定されてて、さらに大雑把に4系統に分類されてた。

 4系統の魔法文は私の知ってるルーン文字と同じだったから、全部は理解できなくても、発動部分さえ干渉して書き換えれば何も起こらない。


 だからこの足元にある跳ね床は発動しない。

 ついでに言うと、解除が出来ない限り、罠を1つ封じた事になるんだよね。


「魔法で動かなくって、意味の分からない事いってんじゃないよ!」


「あったま硬いなぁ、現に動いてないじゃん。だからこうやって石の壁ストーンウォール


 正面の壁から巨大な拳が飛んできたけど、壁で防いだ。

 でも流石に威力があるみたいで、ストーンウォールが破壊されちゃった。

 拳も消えたけど。


「発動直前にルーン文字が現れるから、それを読めばどんな罠かが分かっちゃうんだよ? ついでに言うと、罠の規模によっておばさんの硬直時間があるのも大体分かってる」


 呆然としてる。ん~……ひょっとして自分が使ってる魔法の事を理解してない?

 確かにゲームしてて、魔法の法則とか考える人なんていないか。

 アルティメット・オンラインは法則が説明されてたから知ってるけど。


 それはそうと……。


「さぁ、お仕置きの時間だべぇ~」


「ヒッ、ま、待って」


「ディータちゃんね、もう我慢できないの!!」


 私は正座をして膝の上にオバサンを仰向けで乗せた。

 そしてお尻を力いっぱい引っぱたく。


「きゃん!」


「これはディータちゃんのお尻が痛かった分!」


 チャイナドレスみたいに生地が薄いから、お尻を叩くといぃ~い音がする。

 ちょっと楽しくなってきた!


「次は顔にトイレ掃除の吸盤が当たった分!」


「あんっ!」


「今度はお天道様の分!」


「ちょ、それ関係なくひゃん!」


「次はブラックホールの分!」


「だから関係ないってあああん!」


「これは70億の男子高校生の分、1人目!」


「ちょっと!? まさか70億回あっはぁ~ん!」


 ひたすらお尻をバッチンばっちん叩きまくった。

 



 そして数時間が経過していたっぽい。


「11万8千……569回!」


「も、もっとぉ」


「11万、8せん、570、回……」


「ご主人様ぁ!」


 お、おかしい。

 お仕置きしてるはずなのに、おばさん喜んでない?

 おばさんのたるんだお尻は腫れてパンパンだし、ディータちゃんの右手もパンパンだ。

 も、もういいよね? 懲りたよね?


「きょ、今日はこれ位で勘弁してやるゼ」


「え? ご主人様、出来の悪い私にもっとしつけをお願いします」


 し、躾!? ご主人様!? 私はそっちの趣味はないんゴ!

 こ、コラ! なんでそんな恍惚とした目を私に向ける!!


「は! そうですよね、私ばかりがご褒美を頂いてばかり、次は私がご奉仕いたします!」


 瞳がハートになってる!!

 ディータちゃんの貞操がデンジャラス!


「首に腕を回そうとするなー! ディータ・パーンチ!」


 顔面にこぶしを叩きつけると、ゴム人形みたいに拳が顔にめり込んだ。

 

「最高のご褒美をありがとうございますー!」


 といって吹っ飛んでいった。

 くぅぅ! 勝負には勝ったはずなのに、負けた気がする!

 ディータちゃんの心が……けがされたよぉ!


 ふっ、と空気が変わった。

 どうやらナマステおばさんが気を失ったことで、街の結界が無くなったみたい。

 あの結界、たぶんおばさんのゲームシステムによるモノだと思うけど、罠を設置・発動させるためには結界内じゃないといけないのかな。

 だとしたら外の街道にあった不自然な芝生や木、穴も、結界を張ってから罠として使ったとして、どれだけの範囲をカバーできるんだろ。


 街1つは確定として……グゥ……。


「は! 眠くなってきた! てか体力回復させなきゃ!」


 考えてみれば、少しずつダメージを食らって、少しずつ心を穢されて、美少女たるディータちゃんは色々とボロボロですよ。

 服もボロボロだし!


 ヒールで回復させて、栄養スティックをかじって、あらためて自分を見ると……はぁ。


「しずちゃんに直してもらお。こんなんじゃ人前に出れないよ」


 服はあちこち破れ、焦げ、アクセサリーもいくつか破損してる。

 全部脱いで下着になると、メニューバッグの共用袋に放り込む。

 予備の服は……あ、趣味で作ったセーラー服とか体操服しかない! こっちの袋には……!?


「スク水かよ! そりゃゲーム当時はいろいろ組み合わせて遊んでたけど、何やってんの昔の私!!」


 取りあえず体操服を着た。

 うん、今は無きブルマーだ。ついでに赤いハチマキもしよう。

 体操服はブルマーの中には入れない派です。


 さてっと、店長を助けて帰ろ。屋敷の扉を開けて外に出ると、中での悲惨な戦いなんて全く関係なかったように宴会が行われていた。

 だよねぇ~、ん? なんでおじ様方はディータちゃんに熱い視線を向けるのかな?

 そりゃーディータちゃんは可愛いけど……!!


 慌てて屋敷の中に戻った。


「何やってんの私! 体操服で外を出歩けるわけないジャン!」


 キャラクターチェンジ

  ユグドラ

  ルリ子

  しずか

 ⇒番長

  ディータ

  メイア

 ◆ ディータ ⇒ 番長 ◆


 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。

 

「うむ、相変わらず賢いのかバカなのか分からんな、あ奴は」

 

 それでは店長を助けに行くとしようかの。

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