第2章 第47話 アニタの新装備
街を出る前の晩、会食をしながら相談をしています。
「アニタの仕上がりはどうですか?」
話題の中心はアニタです。
後数日のうちにブラスティーと戦うので、ほぼ仕上がっていないと外れてもらう必要があります。
「問題ないんじゃないか? 少なくとも足手まといになるような事は無いはずだ」
「ええ、イヤと言うほど対人訓練をしたから、上手く立ち回れるはずよ」
前衛のアズベルとベネットはOKの様です。
「火力はないけど命中率は良いし、私達と違ってあちこち動き回ってくれるから助かってる」
「及第点」
魔法使いのリア、エバンスも大丈夫の様です。
良かった、作っておいたアイテムが無駄にならずに済みました。
「それではコレを渡しておきます。今までと同じ感覚で使えるはずですが、出発前に確認だけしておいてください」
アニタに新しい弓と新しい革鎧、アイテムを数点渡します。
「え! いいの私、合格なの!?」
「4人が大丈夫だと言うなら大丈夫でしょう。元々身体能力が高かったので、早い段階で渡せるとは思っていましたし」
格闘技が上手いだけあって接近されても問題なく、王都の外周も最初から1日掛からず走り切っていましたから、武器さえ使えれば直ぐにでも上級冒険者入りは出来ると思っていました。
それでも予想より随分と早く成長してくれました。
「い、今装備してもいい? いいよネ! 着てくる!」
返事も聞かずに部屋を出ていきました。
そして間を置くことなくアニタが戻り、早速着かえた新装備のお披露目を始めます。
「ほらほら! カッコイイ? カッコイイよねこれ! でもなんで弓の両端に滑車が付いてるの? それに
「それはコンパウンドボウと言います。簡単に言うと少々力が要りますが、より強い力で射出できる仕組みになっています。今のアニタなら問題なく使えるでしょう」
「じゃあじゃあ矢が鉄なのに軽いのはなんで?」
「中が空洞になっています。木の矢より少し重いですが、鉄の方が強度・威力・命中率共に上がります」
「じゃあじゃあ……」
他にも沢山聞いてきました。
基本的にメイアの装備がベースで、薄手の革鎧は茶色ですが色が濃く、籠手も弓を使う用になっています。
バンダナの代わりに大きめのベレー帽ですが、アニタの長い髪をしまえるようにしました。
「王都に戻るまでに使いこなしてください。あとテレポートリングには100回分チャージしてありますから、1射ごとに移動する事も可能です」
「お、おお~。私、魔法使えるの?」
「回数限定ですが可能です」
その後も装備の説明をしていましたが、我慢しきれなくなったのか訓練場に飛び出していきました。
夜が明け、眠たそうにしているアニタも一緒に出発の準備をしています。
とはいえほとんどの準備は終えているので、積み荷の最終確認で終わりました。
クローチェ王女が出立前の挨拶を貴族たちにしていますが、この貴族たち、イマイチ身が入っているように思えません。
まぁ実際の指揮は部下たちがやるのでしょうが、まるで他人事のように見えます。
ここに来る前の街、チグリフォーンの街にいたダグラスター公爵はしっかりした人で、とても市民からも慕われていたのですが……上級貴族と下級貴族では違うのでしょうか。
「待たせたな、それでは王都へ戻るとしよう!」
挨拶が終わったようで、王女が馬車に乗り込みました。
公務モードの王女はとても凛々しく、12歳には見えません。
「ねぇねぇ! アニタって新しい武器をもらったんでしょう! 見せて見せて!」
素のモードでは年相応ですが、公務モードの反動でしょうか、少々はしゃいで見えます。
周りもその方が楽なので構いませんが、王城内ではどうしているのでしょうか。
オダールの街を離れてしばらく、やはり何者かが接近してきました。
どうやら腹を空かせた獣のようですね。
見たところ犬型の群れですが、大型ではありません。
「アニタ、今回はアナタ1人でやってみてください。他の人はいつでもフォローに入れるように準備を」
新装備の実戦経験を沢山積む必要があるので、戻りの道中は全てアニタに任せようと思います。
「分かったよ! まーっかせて!」
御者席から飛び降りて、野犬と対峙します。
他の4人も馬車から降りて、周囲の警戒を始めました。
どうやら野犬は10匹ほど、脅威度は低いですが、動きが素早く攻撃が当たり難そうですね。
しかしそこは熟練冒険者に鍛えられただけあり、かなり冷静に弓を構え、1匹ずつ確実に倒し始めます。
この弓を使えば初速は200メートル/秒は出ます。
素早い犬とはいえ、見てかわす事は出来ないようですね。
フッとアニタの姿が消えました。
どうやらテレポートを使ったようです。
どこに移動したのかと見渡すと、群れの横へ1回、その反対側へ1回、背後に1回移動し、取り逃がすことなく全滅出来ました。
「やったー! 1人で全滅成功! 新しい武器いいネ! テレポートも使いやすいよ!」
評価は上々。昨晩は遅くまで練習していた甲斐があったようです。
それから王都へ戻るまで、ほぼアニタ1人で敵を倒す事が出来ました。
流石に大量のモンスターに襲われたときは全員でやりましたが、それ位ですね。
そして遂に、王都へと到着しました。
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