第2章 第46話 街の裏表

 キャラクターチェンジ

  ユグドラ

  ルリ子

 ⇒しずか

  番長

  ディータ

  メイア

 ◆ ユグドラ ⇒ しずか ◆


 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。


 キャラクターが表に出ていない時は時間が止まっています。

 なので傷を治すには表に出ていないといけません。

 瀕死の状態で交代したら時間稼ぎが出来るので便利ではありますが。


 朝食は流動食なのでイマイチですが、それでも美味しい物を作ってくれるので感謝が絶えません。

 ベッドで上半身を起こしてスープを飲んでいますが、どうして病室に全員が来るのでしょうか。

 特にクローチェ王女とお付きの2人。

 

 色々と話しを聞きましたが、どうやらこの街、かなり怪しいようです。

 政治腐敗はもちろん、表面的な治安は良いのですが、裏通りに入るとスラムが広がっているらしく、本来は禁止されている奴隷の売買が行われているとか。


 これには王女が憤怒しており、各方面に通達を出して一斉調査をするそうです。

 なので今この街に入る事は出来ますが、出る事は出来ません。

 半封鎖状態です。


 どこの世界でも、どの国でも腐った政治家というモノはいるのですね。

 なのでしばらくはこの街に滞在し、大掃除をするとか。

 ふむ、正直それは渡りに船です。

 このまま王都へ戻ったらブラスティーとの対決が待っていますが、今のままでは勝算がありません。

 少しでも訓練できるのは嬉しいですね。


 



 私は基本的にマイゾーク元伯爵邸で療養し、誰か1人が護衛に付きます。

 その間は王女の護衛に2人、アニタさんと残った1人はアニタさんを鍛える事になりました。

 アニタさんの底上げが急務ですが、他のメンバーも空き時間は訓練をしています。

 4人は武器・防具が一通りそろい、後はアニタさんの装備をどうするかが悩みどころですね。


 今は数種類の弓を使い分け、長距離の狙撃から近距離の格闘戦までソツなくこなせています。

 後はそれぞれの練度を上げる事です。


 数日が過ぎ、王都から色々な人が屋敷に入ってきます。

 私が応対するわけではありませんが、何故だか貴族と言われる人たちがお見舞いに来てくれました。

 実は私、人の名前を覚えるのが得意ではありません。

 貴族の方々は美辞麗句を言って帰っていきましたが、何をしたかったのでしょうか。


 さらに数日が過ぎ、スラム街に巣くう悪党の排除が始まりました。

 これには人手が必要なので、私もユグドラに交代してスラム街清掃に参加します。

 参加してまず思ったのが、悪党たちは随分と大きな組織で、驚いた事に街の裏社会どころか表にも顔が利く人物が取り仕切っていました。

 

 マイゾーグ元伯爵です。


 なんと貴族でありながら裏社会を形成し、オダールの街を裏表から支配していたのです。

 これには調査していた人たちも開いた口がふさがりません。


 さらには街道のモンスター討伐を行ったという偽装書類が発見されました。

 街道の定期的な治安活動は冒険者ギルドに行く事なく、マイゾーグ元伯爵の兵がおこなった、という事になっていましたが、その事実はなく、その分のお金で私服を肥やしていたようです。


 アゴが落ちるほど口が開いたままになっていました。


 しかし貴族がなぜそこまで街の権力に固執するのでしょうか。

 さらに調査を進めた結果、マイゾーク元伯爵は貴族主義者というよりも権力至上主義者だったようです。

 しかしどうやっても王族や公爵にはなれません。

 なので街の中だけでも思い通りに権力を振るいたかったのではないか、という結果になりました。


 本人に聞けばわかるのでしょうが、残念ながら暗殺されてしまいました。

 間違いなく背後にいる連中の仕業でしょう。


 マイゾーク伯爵が亡くなったことで今回の騒動の真相は闇の中ですが、小規模ながら調査は継続するようです。

 このような事がこの街だけならばいいのですが……。


 そして空いた日はベッドで療養をしているはずなのですが……相変わらず1日1貴族は挨拶に来ています。

 理由は……まぁ考えなくても分かります。

 一番ぎょしやすいと思われているのでしょう。

 ルリ子は恐ろしく、番長は得体が知れない、ユグドラは機嫌を損ねたくない。

 生産系で鍛冶屋での誰にでも優しく接している私は、顔を売るにはうってつけという訳ですね。


 しかし残念ながら顔を覚えるのが苦手なのです。





 手術からしばらく経ち、傷口の様子を見るためにテープをはがしました。

 完全にはふさがっていませんが、キレイですね、痕も残らないかもしれません。


「私はそろそろ歩くくらいなら問題なさそうです。そちらはどうですか?」


「こちらも一通りの事をやったのでな、後は私が居なくても調査は進められるだろう」


 どうやらマイゾーグ元伯爵の件は目途が立ったようです。

 色々ありましたが、まさかここまで大ごとになるとは思いませんでした。

 そうなるとこの街に留まる理由が無くなりましたね。


「明日の朝にはオダールの街を出よう。時間もかかり過ぎてしまったから、急いで王都へ戻るのだ」


 ついにブラスティーとの戦いが始まるのですね。

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