第27.5話 別室5

 薄暗い部屋の中で髪の長い男が食事を取っている。窓から入る光が強烈なせいか、部屋の中は良く見えない。

 とても大きなテーブルだが座っているのは1人だけだ。

 食器とフォークが当たる音が部屋に響くが、その音は訪問者によって聞こえなくなった。


「進展があったか?」


 テーブルの前で片膝をつき、こうべれたのは全身黒ずくめの人物だ。


「はっ、計画通りワーウルフとハーピーに襲わせました。しかしワーウルフ・ハーピー共に壊滅、冒険者の1人が死亡しました」


「そうか、予定通りだな。では死んだ奴を呼んでくれ」


 食事を止めてワイングラスを手に取る。


「はっ、ここに」


 もう一人現れた。同じく黒ずくめだが、少々声が高い。


「お前は間違いなく死んだのだな?」


「はい。気を失ったわけではなく、間違いなく1度死にました。死ぬ前に負っていた傷も完治しております」


 ワインを1口飲み、グラスをゆっくり回す。


「では間違いないな」


「あの男は死者蘇生が可能です。我らと共に行動させるべきでしょう」


「くっくっく、お前はあいつにご執心だな。生き返らせてもらって情が移ったか?」


「そのような事は! わたくしの心は常にあの方と共にあります」


「ならば良い。あのピエロもどきが我らとともに来るのならばよし、そうでない場合は殺せ」


「「はっ!」」


 2人の黒ずくめの姿が闇に溶けるように消えた。

 髪の長い男は食事を再開しようとナイフとフォークを持ち上げるが、すぐに両手を置いた。


「死者の蘇生……か。ワーウルフにみ殺されれば肉など残っていまい。それを完治だと? ありえん、あいつがウソの報告をした? 本当に情にほだされたか」


 手を2回たたくと、黒ずくめが現れた。


「あの女を見張れ。任務が成功すればよし、躊躇ちゅうちょしたり失敗であれば殺せ」

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