第63話 発展(少しだけ)
「お帰りなさいませ、市長」
「おはようございますセリスさん」
って、あれ? たしか小屋はバラバラに吹っ飛んだはず。
「鳳仙様達がすぐに建て直されまして。色々な機材もありますし、作業小屋にされるそうですよ」
なるほど。
しかしそうなるとベッドの場所を変えたいところなんだが……。
「セリスさん、ベッドの場所を変更したいのですが」
「ベッドですか? 既に御屋敷の市長の部屋に手配済みです」
ん?
でも、ここに……やっぱりベッドはあるな。どういうことだ?
「それと鳳仙様がご依頼の部屋が完成したと」
「わかりました」
となると宝玉の移動か。
「セリスさん。早速、宝玉を移動させたいのですが」
「かしこまりました。宝玉と台座をお持ちになって、移動させたい場所に配置してください」
それだけで移動できるのか。
「思っていたよりも簡単な作業ですね。これはもしかして私でなくても可能な作業なのでは?」
「宝玉は誰でも持ち上げることは可能ですが、台座から半径1メートル以内までしか持ち歩けません。そして台座に関しましては市長のみが移動することが可能です」
なるほど。台座のほうに強い制限がかかってるのか、防犯対策に抜かりなしってとこだな。
それじゃ、台座をアイテム欄に移動させてっと。
…………。
は? 宝玉が粉々に!?
「せ、せ、セリスさん、どどうしましょう」
「先に台座を収納したのは失敗でしたね、市長」
「いや失敗でしたねって、セリスさんなんでそんなに冷静なんですか?」
「宝玉はすぐに戻りますから」
「へ?」
「市長、一度台座を戻して下さい」
「わかりました」
アイテム欄から台座を選んで設置っと。
…………。
な!!
「あ、あのセリスさん、ほ、宝玉が」
台座からにゅるっと生えた!
「というように、新しい宝玉ができますのでそこまで心配される必要もないかと」
いや、これはこれで新しい心配事というか疑問が……。
「そんなことより、市長」
そ、そんな事なのか?
俺としてはビジュアルも含めて結構衝撃だったんが。
「宝玉を移動させるのであれば、一度ご自身のお部屋をご確認されては?」
それもそうだな。
ベッドの確認もした方が良さそうだし。
「わかりました。では行ってきます」
………。
あれ? 今日はセリスさんのお見送りは無しか。
「市長、それでは御屋敷に向かいましょう」
うおっ! いつの間に横に!?
というか一緒に移動するとか、これまた珍しいな。
「市長の執務室が移りますので、私もご一緒しようかと」
なるほどね。
「わかりました、一緒に行きましょう」
「はい」
くっ! セリスさん、その笑顔は……。
しかもごく自然に腕を絡めてくる!?
は!? こ、これはもしかしていつもの計算か?
「どうかされましたか市長?」
んー、まあ、なんかセリスさんかかわいいしどっちでもいいか。
「いえ、なんでもありませんよ。それではお屋敷に向かいましょうか」
…………。
ってなんじゃこりゃ!?
「市長、どうかされましたか? 早く御屋敷向かいましょう」
たしかログアウトしたときは桟橋しかなかったはずなんだが……。
「いえ、眠る前と少し、いやだいぶ景色が変わっていたので」
なんで本格的な港とでかい船が……しかも5隻も。
「ああ、あの船はガッツォ様と人魚族の皆様、あとは鳳仙様達の合作ですよの」
「この港は?」
「こちらもガッツォ様のお力でロカ様が設計されまして。なにかご不満がありましたか?」
いや、うん、不満とかはもちろんないんだけどさ。
「いえ、特に不満はありませんが」
多分、俺が聞きたいのはそこじゃないんだ。
「全て私が眠っている間に?」
「ええ。ですが安心してください、人魚族の皆様のご自宅も建築済みです」
…………。
「それとまだ途中ですが、領地内に張り巡らせる水路も随時構築が進んでおります」
よし! 考えるのは辞めだ!
ゲームだからこういうこともあるんだろう。
なんかお屋敷の形も変わってて、お屋敷の下を何本か水路が通ってるし小舟用の船着き場までついてるけど、これもゲームだからな。しょうがない!
港の横に船舶用の大型ドックがあるように見えるけど、ゲームだがらな。しょうがない!
「領地も少しだけ街らしくなってきましたね」
でかい屋敷にでかいドック、でかい船に立派な港、100人以上の住人の住宅。
これでも少しなのか。
「さあ、市長張り切って街を作っていきましょう!」
俺の領地は果たして何になるんだろうか???
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