第57話 恐喝(因果応報)

 さて、貰うものも貰ったし、一度領地に帰りたいところなんだが。


 …………。

 やっぱり死に戻りしかないのか?


 いや、うん簡単なことなのはわかってる。

 この口に加える奴をアイテム欄に放り込めば、数分もすれば直ぐにでも死に戻れるからな。


 だが、しかし、自分の本拠地に戻るために一々死ぬってのもなぁ。なにか方法はないもんかね?


 移動、移動、いどう。

 …………。

 ああ、あの鍵か!


 えーと、どこやったかな。鍵、鍵、鍵っとあった。


「ほう、救国の英雄殿は珍しい物をお持ちですな」


「珍しい物? この鍵がですか?」


「ええ。その鍵は神々をつなぐ鍵といわれていまして」


「神々をつなぐ鍵ですか」


「ええ、その鍵をもって神の祝福を受けた建造物に祈ることで、いつでもその建造物の場所にまで飛ぶことができるそうです」


 この鍵にそんな便利機能が。ん? ってことは、もしかして領地が登録されてる可能性もあるってことだな。


 えーと、鍵を使ってっと。おお、領地の宝玉が選べる!


「マーリダーレの城下町に、水の女神像が祀られている施設がありますので試してみてはいかがでしょうか?」


 おお。

 また海の中をうろうろしなくて済むってことか。それは助かる。


「わかりました、早速向かってみます。それでは宰相さん、失礼させていただきます」


「救国の英雄殿、ファウスティーナ様や民達をよろしくお願いいたします」


「まだまだ未熟者ですのであまり大きなことは言えませんが、できる範囲の努力はさせていただきます」


「ありかがとうございます」


 さてと、次は女神像だ。


  ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 …………。

 そして暴漢に囲まれる俺。


 そういえば元々は人魚(女性)を見たくてうろうろしてたんだよなぁ。

 でも出会う人魚の9割以上が男。しかもその中の9割が厳つい人達なんだよなぁ。

 そろそろ俺の中での人魚のイメージが人魚(女性)から人魚(マッチョ♂)に覆りつつあるな。


「お前ら、よくやった」


 ん? 珍しくマッチョじゃない奴が紛れ込んでる。


「おい、穢れびぶべ」


 はあ、こんなんばっかりだなこの国。

 なんで常に喧嘩売ってくる人ばかりなのかね?


「貴様、俺様を誰ぶべら」


 一応形だけでも上の人が謝って表面上は解決したのに、わざわざ新たに問題起こさなくても。


「お、おい。べらぶぁ!」


 さすがに宰相さんがかわいそうだしな、問題が問題になる前に潰しとくか。


「や、やめろ、や、べふぁあぁぁぁあ」


 こんだけやれば大丈夫かな?


「お話は済んだようなので、これで失礼させていただきます」


「ま、待て、穢れ人。俺様のファウスティーナを返せ」


 あれ? もう回復した?


「ふん、あの程度の傷など俺様の調合した薬にかかれば!」


 調合した薬か。さすがはゲーム、凄いアイテムがあるもんだ。

 まあ、それはそれとして。


「ちょ、ま、ぶおうふ。くそ、折角、偽の薬で魔獣に変えてやったのに。結局違う奴がファウスティーナをつれていくなんて。これだから穢れ人は嫌いなんだよ」


 …………。


 この人、なんかとんでもないこと言い出したよ。なんでそんなこと話ちゃうの?

 アッキレーオさんしかり、この人しかり、もう少し考えて発言すればいいのに。

 いや、ゲームだし、イベントだからそういうもんだと言われたらそれまでなんだけどさ。


 まあ、聞いてしまったからには対応しないと。

 普通は国につきだすか、討伐ってのが筋なんだろうけど……。


「おい、離せ! くるしぶげらっ」


 あの回復薬とかスゲー使えそうなんだよね。

 しかも、今の話だと色々と便利そうな薬も作れそうだしこの人。


「おい、なぜ俺を見つめる。俺にはそんな趣味ぶぎぉ」


 何とかして説得するしかないよなぁ。

 というかこの人前より打たれ強くなってない?


「何度もやられると思うなよ! 俺の身体強化薬の力をもってすれば貴様の攻撃など!」


 なるほど。となるともう少し強めにいっても問題なしか。


「お、おい、。明らかにいやな感じがするぞ。貴様何をするつもぶぎゃす」


 どうせ普通に説得しても応じないだろうし。

 何よりもガッツォさんの敵討ち(死んでないけど)だしな。


「ふげずぅ」


 少々痛い目にあってもらおうかね!


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 まあ、この辺でいいか。


「ず、ずいばぜんべしだ。だんでもじばすのでゆるじでぐだざい」


 いい具合に折れたかな?


 それにしても取り巻きのゴツい人達、一度も止めに入らなかったな。

 皆、顔が真っ青なのは気のせいだとして。この人、物凄く人望がないのか?


 まあいいや、ここからが本題だ。

 えーと、あれ、そう言えばこの人の名前も聞いてないな。


「えーと、申し訳ありません」


「ばび」


 ………。


「少しお話がしたいので、先程の薬で傷を治していただけますか?」


「よどじいどでずが?」


「ええ」


 濁点だらけの言葉でなに言ってるのかわからないからな。


「お名前をお伺いしても?」


「チプリアーノともうします」


「チプリアーノさん、確認したいのですが。先程おっしゃっていた薬で魔獣に変えたというお話は、あの魔の領海の魔獣で間違いありませんか?」


「…………」


 はあ、この期に及んで黙りとか。

 とりあえず、地面割っとくか。


「はひ! 間違いありません」


 通じるわけがないだろ。


「さてチプリアーノさん。私はこの国の法の番人でもなければ、正義を声高に叫ぶ者でもありません」


「はい」


「そこで相談です。チプリアーノさん、私に先程の回復薬を定期的に提供していただくことは可能でしょうか」


「それは」


「もしこの提案を受け入れていただけるのならば、先程のお話は私の胸の中に収めさせていただきます」


「…………」


「勿論断っていただいても構いません、その時はそれなりの措置をとるだけですし」


 あれだな、これ完全に俺が悪役だな。

 まあ、飴と鞭じゃないが、叩けるところは徹底的にやっといた方が後々のフォローも楽だしな。


「ひぃっ! う、受けます、受けさせていただきます」


「ありがとうございます、良いお返事いただけて私も嬉しい限りです」


「いえ」


「では最初の納品は一月後におねがいします。私が受け取りにうかがいますので貴方の作業場、もしくはお住まいを教えていただけませんか?」


「わ、わかりました。私の研究所にご案内させていただきます」


「ありがとうございます。今後とも長いお付き合いになるかと思いますが、よろしくお願いいたします」


「…………はい」


 よし、協力な回復アイテムと生産者ゲットだぜ!

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