第60話 どこの世界でも、女子は美に貪欲ですね

 出かけると言って慌てて出て行ったイリスだが、すぐに帰ってきた。

 だがエリカとミーファが一緒にいる。しかもミーファの髪はびっしょり濡れていて、制服に雫が滴っている。


「どうしたんだ……そんな恰好で」


 ミーファもエリカもいつもと違い、制服をきっちりと着ていない。シャツの第一ボタンも留めていないし、そこに着けるリボンもしてない。タイツや靴下も履いておらず、短めのスカートに素足のままだ。お風呂を途中で上がって、急いで駆け付けてきたって感がめっちゃしているんですけど。


「ルーク様、言わなくても分かってらっしゃいますよね?」


 ミーファではなくエリカがそう伝えてきた―――


「まぁ、なんとなく……お風呂だよね?」

「はい。イリスさんの髪を触らせて頂きました。あれは良い物です! ぜひ私とミーファ様にも使わせて頂けないでしょうか?」


「ダメって言ったら、なんか機嫌悪くなりそうだし、いいよ。入る気満々で着替えまで持ってきてるようだしね。ひょっとして入浴中だったんじゃない?」


「ごめんなさいルーク様。こんな夜分に押し掛けてしまいました。でも、イリスのあのサラサラの髪を触ったら、わたくしも使ってみたくなりまして……」


「それで入浴の途中で切り上げてこっちに来たの?」


 2人とも多分ノーブラだ。エリカは【亜空間倉庫】内ではなく、わざわざ着替えを手に持ち、それで胸元を隠すように抱いているのだ。ミーファは眠っているスピネルを抱っこしている。


 クラスの女子は、上着のシャツの中に下着が透けないようにタンクトップやキャミソールのようなものを皆着ている。


「ルーク様、勝手に姫様を呼んでしまってごめんなさい。でも、エリカと姫様にも試していただきたかったのです」


「それは別に良いんだけどね。イリス、あの後にまだ続きがあったんだぞ」

「続きですか?」


「うん。顔に潤いを与え、肌の肌理を整える化粧水や乳液もあったんだ。手足に付けるクリームも用意してあった。美しくなるためのものだけどね。肌理を整え、お肌に潤いを与え、美白効果もある、肌を美しくするためのものだよ」


「美しくなるためのもの⁉ それは今からでは、もうダメなのでしょうか⁉」

「今からでも全然問題ないけど、イリスはミーファとエリカと一緒にお風呂に入って、使い方を教えてあげないといけないだろ?」


「あ、そうですね。お風呂を出たら、その美しくなるというものをお願いしますね」


 再度お湯を張って3人はお風呂場に入っていった。


『ホント女の子はこういうものに目がないよな。こういうものは異世界でも変わらないんだね?』


 あれ? ナビーの返事がない?


『ナビー?』


 インベントリ内にはいないみたいなので、MAPを見てみる。

 ベッドでハティとスピネルに重なるように表示された。見たらハティの体を枕にしてスヤスヤ眠ってるナビーがいた。あはは、可愛い。


 凄く絵になるのでパシャパシャと写真を撮っておく……癒される。

 エミリアにメールで送ってやろう。


 そういえば、ナビー召喚にはデメリットがあったんだな。実体を得ることで、ナビーは睡眠が必要になるんだった。今日は色々あったから疲れて寝ちゃったんだな。


 お風呂場からは3人のキャッキャという笑い声が聞こえてくる。

 気になって仕方がないのだが、俺はルーク君と違って覗いたりはしない。



 *    *    *



 出てきた姫の髪を乾かしてあげる。

 姫の髪は長いので、時間が掛かって大変そうだ。それにしても綺麗な髪だ……乾くと細くてサラサラしている髪が手に心地良い。


「ミーファの髪は細くて綺麗だね?」

「そうですか? そういって頂けると嬉しいです♪」


「で、イリスの髪までどうして濡れているのかな?」

「え~とですね。実際に使って見せる為です。そう、実演して見せてあげたのです!」


「まぁいいけど。でも言っておくけど、あれは何度も使ったからって良くなるものじゃないからね? 逆に日に何回も使うと髪を傷めるので、適度に使うように」


「分かりました。それで、お肌を綺麗にするやつっていうのは……」


 本当に分かっているのだろうか。

 化粧水と乳液の入った瓶を取り出す。


「じゃあ、顔から。まずは化粧水。これは水分と保湿剤が混ざり合ったもので、主に肌の水分を補う役割がある。この時期だとこれだけで十分なんだけど、冬の乾燥時期には乳液も付けると良い。こっちは水分、油分、保湿剤がバランスよく混ざり合ったもので、肌の水分をキープするとともに、肌を潤し、やわらかな質感に保つ役割がある。あと、どちらにも回復剤を混ぜてあるので、肌荒れを治したり、シミ、ソバカスを消す美白効果もある」


 効能を聞いたエリカとイリスが喜んでいる。


「話を聞く限り、乳液の方が良く思えたのですが、なぜ2種類あるのでしょう?」


 化粧水と乳液の入った2つの瓶を振ってみせる。


「見てのとおり、化粧水はサラッとした液体。乳液は油分の多い液体。もともと脂体質の人は乳液より化粧水だけのほうが良いって人もいる」


「それで2種類作られたのですね?」


「うん。でも化粧水の方が肌に浸透しやすいので、先にこっちを付けてから乳液でコーティングすると効果が高いと思う」


 というわけで実際に付けてあげた。


「うわ~! お肌がぷるんぷるんです!」

「これ凄いです! それに良い匂い♪」


 ミーファもエリカも気に入ってくれたようだ。

 イリスはまた好感度がとか言ってるが、とりあえず無視しておこう。


「次は体に塗るやつね。これは3種類ある。ローションとオイルとクリームだ。同じく保湿のためのものだけど、オイル>クリーム>ローションの順に保湿性が高い。ただ、油分が高い順に、その分ベタツキは多くなる。使い分けがいるかな。乾燥する時期に、オイルは脛や肘に塗ると良い。クリームは手や同じく脛とかかな。普段使いはローションがサラッとしていていいと思う」


「ルーク様が塗ってくださいませんか?」


 ミーファが可愛くお願いしてきた。


「良いけど……素肌に触れるよ?」

「はい。恥ずかしいけど、ぜひお願いします♪」


 ちょっとドキドキしながらミーファの細くて綺麗な足にローションを塗らせてもらった。この世界の人間に無駄毛は一切ない。実にスベスベで肌理が細かい肌をしている。

 イリスとエリカも楽しそうに脛や腕に塗っていた。


 日頃運動不足だったミーファも、ここ最近のランニングや散歩で筋肉痛になっていたので、生足に触れる役得ついでにマッサージ治療してあげた。


「ふぁ~~♪ ルーク様気持ちいいです♡」



 その後イリスが淹れてくれたお茶を飲んで、ミーファたちは門限時間近くまで居座った。ちなみにこの学園の門限は夜の11時だ。結構遅いんだなと思ったのだが、なにせこの世界の成人は16歳。つまり、学園生の大半は成人した大人なのだ。




 皆が帰って眠りについたのだが、翌朝怒気交じりの声でイリスとミーファに叩き起こされる……いったい何事だ⁉


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 お読みくださりありがとうございます。

 沢山のフォロー、☆評価・♡応援ありがとうございます。

 凄く執筆の励みになります。


 実は今回とっくに書き上がっていたのですが、ある事で迷って投降を控えていましたw


 ある事とは、ルーク君の性処理事情ですね。今作は時系列的に日記調に書いているので、リアリティーを出すならここいらで……と思って書いたのですが、この作風とは合っていないかなと思い、結局削除しました。(約1000文字)


 ナビーが眠っているのをチャンスとばかりにミーファたちが入浴中にこっそり自家発電……それを目覚めていたナビーに目撃されるというくだらない話ですw


15歳の体と記憶……美少女達がすぐ側で入浴となると、実際悶々とするだろうなぁ~

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