愛し愛され

異性に恋愛感情を抱くようになって

どれだけの年月が経ったのだろうか。


過去の恋愛を思い出してみれば

思い出したくもないような反吐の出るような

そんな思い出もあった。


「当時の私はまだ幼かった」のだと

分かっていても、思い出すだけで声にならない何かがこみ上げてくるのが分かった。


何故、自分は愛されないのか。

そんな事を毎日自分に問うていた日々さえあった。


最愛の彼に出会うまでは。


彼は、酷く憔悴しきった私に

「愛される喜び」を教えてくれた。


私が「愛せば」彼は「愛してくれた」


自分にとってそれは当たり前ではなかったのだ。当たり前に愛が返ってくることが。


以前、友人に言われたことがある。

何故君はそんなに愛されることを怖がっているの?と。


愛されることは、何よりの喜びではあるが、

それと同時にいつか訪れる終わりへの恐怖が

自分を襲うのだ。


”よく分からない”と友人は呟いた。


嗚呼、この子は当たり前のように、

息をするように愛される事を知っている人間なのだと。


いつか訪れる”終わり”に恐怖を感じることなくいるのだと。


それを理解したとき友人との間に壁が出来たような気がした。


私のこの苦しみは理解されることはないのだ


だけど、我儘を言っていいなら

もう少しだけこの夢のような時間に

身を委ねて良いだろうか。


彼の大きな背中にそっと身を委ねて

この幸せな時間を共に過ごさせて欲しい。


いつか2人を死が分かつまで。

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