第50話「VS魔王 その4」
「それじゃ、話もまとまったし、張り切ってぶっ殺しに行くわよ!」
ユキエが元気に叫ぶが、他の3人は冷静に首を横に振った。
「場所。わからない」
「どこに行く気だ?」
「まずは、魔王の居場所を突き止める必要があるね」
ドニー、バーサス、エリザベスから同様の言葉を掛けられ、ユキエはしょぼんと凹む。
「はいはい。どうせアタシは考えなしですよ~」
エリザベスはユキエの入るスマホを持ち上げる。
「なぐさめなんかいらないんだから!」
しかし、ユキエの予想とは裏腹に、エリザベスは地図アプリを起動し、周囲の立地を確かめる。
「わ、わかっていたし! エリザベスがそういうキャラじゃないってことくらい!!」
ユキエはスマホの中、画面端で体育座りをし小さくなった。
「この地図にマークをつけたところが私たちが襲われた場所だ。やつらは異世界から来た存在だと言っていた。ならば、こちらに来るゲートがどこかにあるはずだ。そして魔王とはあまり動き回る存在ではないはずだ」
「魔王はゲートの近くに居を構えている可能性が高いということか」
「ああっ! そして、ゲートの場所だが、襲うとしたら近場から攻めると思わないか? そういう点で見ていくと、奴らを見た時間はバーサスとユキエがほぼ一緒で、その後、ドニー、私の順だと思われる。そうなると、バーサスとユキエ、二人の間の場所が怪しいのだが……」
そこでエリザベスは行き詰まる。
3カ所程度の場所までは絞れるが、もう1つ決定打が欲しいところであった。
「総当たりでいけば、いずれ魔王を捉えられるのではないか?」
バーサスの真っ当な問いに対し、エリザベスは酷く不思議だと言わんばかりの表情を見せ、小首を傾げる。
「何を言っているんだ? 1発で、最速で見つけ出した方が相手が驚くだろ? 少しでも相手を不利にしておきたいじゃないか。それに、時間を掛けたら、またさっきみたいな攻撃が来ないとも限らないぞ」
ドニーはそれはダメだと、鼻息を荒くする。
「我とユキエはもはや関係ないことだが、いや、そんなこともないか」
バーサスはセーフエリアになっている場所に集う動物たちをチラリと見てから意見を変えた。
「何か、見落としがある気がするんだが……」
エリザベスが唇に手を当てて悩んでいると、すすり泣きと共に、怨念のような言葉が聞こえてくる。
「しく、しく、どうせ、アタシなんて……。うぅ、狼のモフモフにもう1度癒されたい……」
「いや、それこそ、確実に、その狼は死ぬぞ――ってそれだっ!!」
エリザベスは「良くやった! 流石ユキエだっ!」と盛大に褒めてから、皆でユキエの呪いの家まで行くことを提案した。
いまいち、訳が分からないが、エリザベスに言われるがまま、付いていく。
「バーサス、ドニー、狼の足跡を追ってくれ。こいつらはユキエの攻撃を受けたダークエルフが帰るよう命じた狼の足跡。つまり、ゲートへと導く足跡のはずだ。もう1回言っておくよ。流石ユキエだ。あの虐殺がなければ、最短ルートは取れなかったはずだ」
褒めたたえるエリザベスの言葉にすっかり気を良くしたユキエは、胸を張った。
「ま、まぁね! アタシくらいになると、どんな殺し方が最高で最良が直感で判っちゃうもんなのよっ!!」
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