第17話「VSファンガス その3」
「さて、まずは現状、敵の把握だな。ユキエからの映像を見る限り、口付き植物とキノコのようなやつ。それと緑色の女性か」
エリザベスはとりあえず、見た目でモンスターを述べると、
「口付き、カニバル・フラワー」
ドニーの言葉に、エリザベスは顔をしかめた。
「食人花か、安直なネーミングだね。じゃあ、残りはキノコはファンガスと、緑の女性はドライアドとそれぞれ呼称しよう」
「ドライアドは聞いたことあるし、イメージ通りだけど、ファンガスって何?」
ユキエは小首を傾げながら問う。
「ああ、英語で菌類という意味だよ。そこから転じて菌類のモンスターにもこの呼称が使われることがある」
「ふ~ん。安直なネーミングね」
「うぐっ」
エリザベスは先ほど、敵を非難した言葉を自分に浴びせられ、心に謎のダメージを受けた。
「ま、まぁ、それはさておき、作戦を伝えよう。今回、ファンガスとドニーは決定的に相性が悪い。つまり、そこはバーサス、キミが殺せ。遠距離からなら問題なく屠れるだろ」
そう言いながら、エリザベスは『ベレッタ・ナノ』と弾倉を手渡す。
「残弾は今の弾倉に1発。もう一つに6発の計7発だ。ちゃんと計算して使ってくれ」
バーサスは頷きながら、拳銃の確認を行う。
「それと、簡易ナイフも作った。持っていくといい」
銀色の空き缶が腹から真っ二つに別けられ、先端が鋭利になっており、植物のツタくらいなら切れそうだった。
「これは?」
「アルミ缶をまず踏んで潰すだろ。それを何度か折り曲げて切ると断面が鋭利になるから、あとはその辺の石で研磨すると、立派なナイフの出来上がりだ。それなりに鋭いとはいっても、ちゃんと人間に使うときは首とか柔らかいところを狙ってくれ」
「なるほど。なかなか良いな」
バーサスは存外嬉しそうに、そのナイフと知識を受け取った。
「それからドニーはカニバル・フラワーとドライアドを担当だ。特にドライアドは全然情報がない。なにをしてくるか分からないが、不死身のお前なら大丈夫だろう」
ドニーもエリザベスの言葉に無言で頷く。
バーサスは拳銃と簡易ナイフ。
ドニーは素手。
そして2人共にペットボトル1本の石鹸水を持つ。
「ねぇねぇ、エリザベス、アタシは?」
まだ何も指示されていないユキエは自分を指差しながら訊ねる。
「ああ、ユキエは足手まといだから、ここで私と留守番だ。あとリスも」
「ヒドイッ! いや、別に行きたい訳じゃないけど、言い方!!」
エリザベスは少し考えてから口を開いた。
「ユキエや私がいると、ドニーの力が最大限に発揮できないし、バーサスについていくと、たぶん、途中でスマホを落とされるぞ。こいつら、森での戦いは3次元的に動き回るからな」
「3次元的?」
「樹に登ったり、泥の中に潜んだり、崖から飛び降りたり、障害物関係なく直進したりかな」
ユキエはスマホがどんな目に合うか想像し、ちょこんと正座して宣言した。
「はい! お留守番してます!!」
「それじゃあ、後は任せる。森での戦いは私が色々言うより2人に任せた方がいいだろう」
それぞれが役目を確認し、森へと突入した。
※
「ドニー。まず、我が先行するぞ」
ドニーが頷いたのを確認すると、バーサスは樹の上へと跳んだ。
そこから忍者のように木々を伝っていく。
バーサスは敵の痕跡を探しながら木を移っていると、木陰でまるで休んでいるようなファンガスを発見する。
(この時間はファンガスはあまり活発に動かないのか? 菌類はじめじめとした湿った暗所が好きだと聞くが)
日もすでにしっかりと昇ったこの時間はもしかするとファンガスにとっては良くないのかもしれないとバーサスは考えを巡らしながら、これなら不意打ちで殺せると、近くの枝を折ると先端をナイフで鋭利に加工した。
「フンッ!!」
投げ槍と化した枝はファンガスを貫く。
「ふ、ふしゅ~~」
ビクッと体を震わせた直後、ファンガスはまるで空気が抜けるみたいに萎れ、その場でぺしゃんこになる。
「まずは1匹。この調子なら、そこまで問題はないかもしれないな」
ユキエと見たときにはだいたい10匹もファンガスはいなかった。
弾丸もまだ7発ある。油断さえしなければ大丈夫だろうとバーサスは気を引き締めた。
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